18世紀のポルトガルと21世紀の日本を舞台に、3人の俳優がそれぞれ1人2役に挑んだ異色のラブミステリー『ポルトの恋人たち~時の記憶』が11月10日に公開初日を迎え、同日シネマート新宿にて初日舞台挨拶が行われ、主演の柄本佑、中野裕太、舩橋淳監督が登壇した。
柄本佑は、「もともとポルトガル出身のマノエル・デ・オリヴェイラ監督の大ファンで、新婚旅行もポルトガルにいったほど。ポルトガルに行けるらしいときいて、即座に『行きます!!』という感じでお仕事を受けました。脚本を読んだらわりとヘヴィな話だった(笑)」と出演のきっかけを語った。ポルトガルでの撮影は肌があったそうで「現場は監督と撮影監督以外は、ポルトガルの方でした。ランチには1~2時間、コース料理にホールケーキが出て、ワインを飲みながら…それも映画作りの一部だという考え方なんですね。本当にほのぼのしていて。俺、あの時ポルトガル人だったのかもしれない!」と、憧れのオリヴェイラ組との撮影の日々を語った。英語のセリフにも初挑戦しており、「新しいことに挑戦するのは楽しい」と笑顔を見せた。
「だけど本当にすごいのはこの人ですよ!」と柄本が絶賛したのが中野裕太。「話をいただいてから渡航まで1ヶ月半。(ポルトガル語を新たに習得するのは)気が狂うかと思った!知恵熱出ました」と語った中野。現場に入ったときにはすでに日常会話でスタッフとコミュニケーションをとれるレベルに達していたそうで、「イケメンで言葉も喋れる、現地でもモテモテでした」と監督が明かしていた。
スクリーンの中でも舞台上でも見事なコンビネーションを見せていた柄本と中野は「初めて会ったときからチューニングが合うというか息が合った」と互いに語ったが、柄本との初対面は「下駄をはいて現れましたね(笑)。ポルトガル人かも?とか言いながら、大和スピリッツの男なんです(笑)」(中野)、「ポルトガルへのトランジットでフランクフルトで金属探知機のゲートをくぐるときに、“ピンポーン”って鳴ってないのに検査の人に止められて。下駄を指さして“それはなんだ!”と問われて“大和スピリッツだ!”と答えたら“変な奴がいるぞ!”とスタッフがぞろぞろやってきた(笑)」(柄本)と語り、場内が笑いに包まれた。
舩橋淳監督は、ヒロインであるアナ・モレイラとのエピソードを披露。「崖落ちのシーンがあるんですが、あらかじめ写真は見せて、彼女も『フーン』という感じだったんですけど、実際現場を見ると『絶対嫌だ!!』と言い出して(笑)。もちろん崖の向こうにはレスキュー班やスタッフが万全の安全体制を整えてるんですけど『絶対嫌だ!』と。スタッフが二人飛んで見せて、最終的には僕も飛びました(笑)」と監督も体当たりの撮影現場だったことを語った。
本作について柄本は「日本とポルトガルの合作ということで、こんなにポルトガルの風景を見られる映画もないと思います。きっと新鮮で楽しんでいただけたんじゃないかなと思います。ぜひ楽しいと思われた方は家族とか、親友とかそんなに親しくない友達とか…あるいは歩きながら「ポルトの恋人たち…」って言ってみるのもありかな(笑)。すれちがった人がgoogle検索してくれるかもしれませんから(笑)」とSNS時代の画期的な口コミをお願いして締めくくった。
『ポルトの恋人たち~時の記憶』
11月10日(土)よりシネマート新宿・心斎橋ほか全国公開
監督・脚本・編集:舩橋淳
プロデューサー:ロドリゴ・アレイアス エリック・ニヤリ 市山尚三
脚本:村越繁
撮影:古屋幸一
編集:大重裕二
音楽:ヤニック・ドゥズィンスキ
出演:柄本佑 アナ・モレイラ アントニオ・ドゥランエス 中野裕太
配給:パラダイス・カフェ フィルムズ
【ストーリー】 物語の舞台は、リスボン大震災後のポルトガルと東京オリンピック後の日本。乗り越えられない境遇―境界線(ボーダー)によって引き裂かれ、その挙げ句に恋人を殺害された女が、その恨みを晴らすために選んだ手段は、想像もつかないものだった…。18世紀と21世紀。登場人物の立場は時代によって微妙に入れ替わりながらもほとんど同じプロットが反復され、デジャブのように交差し、やがて愛憎の不条理に引き裂かれた人間の業をあぶり出してゆく。
(C)2017『ポルトの恋人たち』製作委員会