ブラジルで活躍した異性装パフォーマー、またはドラァグクイーン達のなかでも第一世代とよばれる、いわばドラァグクイーンカルチャー黎明期を支えた人々を追ったドキュメンタリー『ディヴァイン・ディーバ』が9月1日より公開となる。このほど、8月22日に東京・駐日ブラジル大使館にて試写会とプレミアトークショーが行われ、本作に出演している歌手のディヴィーナ・ヴァレリア、ゲストとして、ヴァレリアと47年ぶりに再会を果たしたカルーセル麻紀が登壇した。
映画上映後に大きな拍手で迎えられたヴァレリアは、満面の笑みで観客に応え、ブラジルの伝説のドラァグクイーンの登場に会場は盛り上がった。「実は47年前に公演で日本に来たこともある」と話すヴァレリアのもとに、スペシャルゲストとしてカルーセル麻紀が登場。お互いに大喜びした様子で熱い抱擁をするが、実はカルーセルは当時のヴァレリアの来日の際に会っていて、実に47年ぶりの再会となった。
カルーセルが「素顔が映されるのが普通は嫌だと思うけれど、映画に映った素顔が素敵だった。そういった素の顔が撮れたのも監督が普通の女でなく、劇場のオーナーの孫だったから。だからこそ撮れた映画だったと思う」と本作の感想を語り褒めると、ヴァレリアは「まさか映画に使われるとは思わなかった。知っていたらもう少ししっかりとしたのに」と笑い、「実際には映像を撮られている時には使われることを知らなかった。監督が編集の時に舞台上を映すより舞台裏の方が重要だと気付いたと言っていた。だから、この映画では舞台裏のシーンが多くなった」と伝説のドラァグクイーン達の素顔に迫ることができた理由を明かした。
カルーセルが最近世間を騒がせた女性議員の「生産性がない」という発言に対して、「先進国である日本の方が、ブラジルよりよっぽど遅れている。ブラジルの方が結婚もちゃんとできるし幸せな国だと思う」と日本の今を嘆くと、ヴァレリアが「“生産性がない”という発言ですが、全世界中で人口爆発が起きていて、食料問題とか色々な問題が起きている。だからゲイのカップルとかもっと認められていいはず」と独自の視点から語り場を和ませていた。
最後に、現役の歌手でもあるヴァレリアが、劇中でも歌われる「マイ・ウェイ」を披露し、その深みのある歌声に、集まった観客も感動した様子だった。さらに、日本で現役で活躍するドラァグクイーンたちも駆けつけるなど、ブラジルと日本を代表するドラァグクイーンの夢の共演に観客は酔いしれ、終始異様な熱気を帯びたトークイベントは幕を閉じた。
『ディヴァイン・ディーバ』
9月1日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:レアンドラ・レアル
出演:ブリジッチ・ディ・ブジオ マルケザ ジャネ・ディ・カストロ カミレK フジカ・ディ・アリディ ホジェリア ディヴィーナ・ヴァレリア エロイナ・ドス・レオパルド
配給:ミモザフィルムズ
【ストーリー】 1960年代のブラジル。軍司独裁政権下の厳しい時代にゲイやレズビアンなど性的少数者達には、今のような自由はなかった。だが、彼らは、女性装をして芸能の才を披露することで、自分らしく生きることを選んだ。かつてレジェンド達が歌い、踊っていた拠点であるリオ・デ・ジャネイロのヒヴァル・シアターの創立70周年を記念し、この劇場から巣立ったレジェンド達が一堂に会した「ディヴァイン・ディーバス・スペクタクル」が開催される。2014年に行われた特別版、レジェンド達のデビュー50周年祝賀イベントのプレミアでは、長い間舞台の仕事からは遠ざかっていた高齢の彼女らが、文句タラタラ四苦八苦しながら演目に挑む姿をとらえつつ、輝かしい60年代のシーンを振り返っていく。
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