「日本におけるイタリア年」をきっかけに2001年の春に始まり、毎年1万人を超える観客が訪れるゴールデンウィーク恒例の映画イベント「イタリア映画祭2018」が、4月28日から5月5日まで東京・有楽町朝日ホールにて開催中。4月28日には総勢10名の来日ゲストが登壇し開会式を開催。そして、4月30日にはトークセッションが行われ、『いつだってやめられる』シリーズのシドニー・シビリア監督、『愛と銃弾』(今秋公開)の監督を務めたマネッティ兄弟(マルコ・マネッティ、アントニオ・マネッティ)が登壇した。
イベントに登場したマネッティ兄弟は、「去年『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』を映画館に観に行って、一人で行ったにも関わらず大笑いしてとても気に入った。僕らと同じように脚本に重きを置いてコメディをつくる姿勢に通じるものがあると思った」(マルコ)、「シドニーによって、従来のいわゆる“イタリアコメディ映画”に大きな変化がもたらされたんだ。伝統的な今までの形式―出演するコメディアンの優秀さに頼るだけではないものを作ること、作品のフォルムを大切にすること。僕らはアメリカ映画が大好きで影響を受けて育ったから自然とこうなったんだけど、結果的にはイタリアの観客にも受け入れられたということだと思う」(アントニオ)と語り、シドニーも「僕はマネッティ兄弟の作品を観たのは『リミット90』(2005/日本未公開)が最初だった。その頃から二人はインディペンデント界ですでに伝説の存在だった。設定はエレベーターの中だけの話で低予算なのに、すごく面白くて刺激を受けたよ」と、お互いの作品や映画製作への取り組みを絶賛した。
▲シドニー・シビリア監督
▲(左)アントニオ・マネッティ 、(右)マルコ・マネッティ
続けて、シドニーは「僕は脚本を書くのがすごく好きだ。それでも毎日机に向かっても全然進まない時もあるし、すごく調子が良くてナポレオンのような気分になる時もある。好きとは言ったけど、『いつだってやめられる』は2作目(『~10人の怒れる教授たち』)、3作目(『~-名誉学位』)を平行して書いたから、想像以上に大変で、書き上げるのに1年半もかかった」と、脚本執筆の楽しさと難しさを明かし、マルコも「僕らも脚本をいちばん大事に思っていて、なによりこのストーリーを伝えたい、という思いが強いんだ」と脚本の重要性を強調した。
観客からの質疑応答では、「コメディ映画ならではのアドリブはあるのか?」と聞かれると、マネッティ兄弟は「役者へ任せる。アドリブは多め」と答えたのに対し、シドニーは「ほとんどアドリブはないよ!役者がそこにないセリフを言うと、監督だけでなく脚本家でもある僕がイラっとする(笑)」と返答し、会場を沸かせる一面も。続いて、「日本文化から影響を受けた人はいるか?」との問いには、マルコは「クロサワ(黒澤明)はイタリアのジャンル映画に影響をすごく与えていると思う。僕については北野武、あと忘れてはならないのは日本のアニメ。日本はアニメを過小評価しているんじゃないかな。イタリアだけじゃなく、アニメで世界を征服していると言ってもいいくらいなのに!」と、日本の作品から大きな影響を受けていることを明かした。シドニーも日本の作品が好きなようで、「去年は『シン・ゴジラ』を観た。(マネッティ兄弟の)二人はまだ観てないらしいからDVDを買ってあげるよ。あとは『キャプテン翼』だね」と返答し、マルコも「『キャプテン翼』の2秒しかないシーンを20分の短編にして作ってみたいよ!」と熱くコメント。また、シドニーは「(『キャプテン翼』の)イタリアのタイトルは『オリーとベンジー』で、主人公が二人になっちゃってるんだよ。クロサワもすごいけど『オリーとベンジー』の方が多くのイタリア人の心に入りこんでいるんじゃないかと思う」と付け加え、アニメの話題でひとしきり盛り上がり、その他の漫画などにも話題を広げながらその影響を熱く語っていた。
イタリアンコメディを牽引する存在になりつつある3人は、“その国ならではのコメディ要素”についても言及しつつ、どこの国の映画であっても映画言語が持つ普遍性があるはずだと述べ、湧き出る次回作の構想も明かしながらトークイベントを締めくくった。
▲開会式