混迷を極めるシリア内戦で秘密裡に行われるインターネットを駆使した情報戦、ニュータイプの戦争と言われる闘いを捉えたドキュメンタリー映画『ラッカは静かに虐殺されている』が4月14日より公開となる。このほど、作家や映画監督、ジャーナリストなど各界著名人から本作を絶賛するコメントが寄せられた。
本作は、アカデミー賞ノミネート『カルテル・ランド』のマシュー・ハイネマンが監督し、第71回英国アカデミー賞ノミネート、第70回全米監督組合賞ドキュメンタリー監督賞を受賞。『マグノリア』のポール・トーマス・アンダーソン監督が「年間ベストの1本」と絶賛するなど世界中で高い評価を得ている。
著名人コメント
■さいとう・たかを(劇画家「ゴルゴ13」)
とんでもない映画です。とにかく凄まじい。観るのが辛い映画です。でも、目を逸らしてはいけない。
■小島秀夫(ゲームクリエイター)
スマホとSNSで最凶の虐殺に立ち向かう市民ジャーナリズム集団RBSSと、彼らに命がけで寄り添い続ける映画のカメラ。監督のマシュー・ハイネマンは、旧来のジャーナリズムを飲み込んだSNSの“生”情報拡散時代における“ドキュメンタリー”の意志を、『カルテル・ランド』に引き続き、あらためて我々に突きつける。
■髙田延彦(元総合格闘家・髙田道場代表)
報道で目にしてきた凄惨なシリア内戦やISの裏側にこの様な人間ドラマがあった事実を初めて知った。あの絶望的な状況下で、もしRBSSが存在しなかったら。家族や仲間、故郷を奪われ破壊が続く中で、もし彼らが立ち上がって行動を起こしていなかったら。ラッカの真実が世界の人々に届く事はなかっただろう。真の平和は見えるのか?この現実はハッピーエンドとは無縁な話だ。
■七尾旅人(シンガーソングライター)
ポスト9.11そしてSNS以降、流動性の極めて高まったオルタナティヴな武力がひしめき合う21世紀の戦場の苛烈な速度に拮抗し、希望の火を灯そうとする、かつてないドキュメンタリー映画。情報はたちどころに人を殺すが、時に、生かしもする。この命がけの作品が、ひとつでも多くの網膜に刻まれることを願う。
■深町秋生(ミステリ作家)
公開処刑、斬首、無差別テロに暗殺……ISの蛮行に改めて言葉を失い、この最悪の武装集団に立ち向かう者たちの悲痛な運命に、何度も息を呑んだ。あるメンバーの「まともな死に方をしたい」という言葉が忘れられない。マシュー・ハイネマンがメキシコ麻薬戦争に続いて、またも現代の暗黒を我々に突きつけてくれた。
■藤原ヒロシ(音楽プロデューサー)
ニュースで報道されている以上に生々しく、物悲しい。解放されたはずのラッカではあるけど、今も大きな問題がある。
■松尾スズキ(作家・演出家・俳優)
自分が気軽に飲み会の動画なんかを撮っているスマホ、ラッカの街中で射殺される捕虜を撮っているスマホ、どちらも同じ機材、同じ画質という事実、それが他人事の垣根をやすやすと乗り越え、とてつもない恐怖として迫ってくる。
■桜木武史(ジャーナリスト)
「イスラム国」からの度重なる脅迫にも屈することなくラッカの状況を伝える市民記者。現場で何が起きているのか。命を犠牲にしてまでも伝えたい彼らの強い意思にシリア内戦の複雑な様相が垣間見える。渾身の記録である。
■原一男(映画監督)
映画を観ている間じゅう鳥肌が立って、観終わってもしばらく引かなかった。たまらなく怖かった。暴力的、理不尽な死がかくも日常的な風景になった。阿鼻叫喚の地獄の様をこの現世に実現させてしまった人間の怖さ。このニッポン国の、明日にもその地獄図絵が迫っているという危機感をニッポン人は理解しているだろうか?
■丸山ゴンザレス(ジャーナリスト・編集者)
RBSSと同じジャーナリストを名乗る自分の取材視線は交わることはない。市民記者たちはスマホを武器にした兵士であって、もっとも危険な現場からISと戦った当事者であるからだ。彼らが再び普通の市民に戻る日が来ることを祈る。
■三上智恵(ジャーナリスト・映画監督)
身近なスマホが、ここまで戦争・テロという人類最大の悲劇に抗う武器になるとは。一市民の発信が世界を動かす可能性に希望を見ると同時に、暗号化や瞬時のデータ削除に失敗すれば、文字通り命取りになる現実に震える。彼らRBSSが示した力は、SOSを受け取る安全圏にいる人々の善意に依拠している。つまりこの映画を見に来たあなたであり、私の持つ正義や行動力が闇に対抗する主役だということだ。私もそれを信じて沖縄から発信する者の一人だ。
『ラッカは静かに虐殺されている』
4月14日(土)、アップリンク渋谷、ポレポレ東中野ほか全国順次公開
監督・製作・撮影・編集:マシュー・ハイネマン
製作総指揮:アレックス・ギブニー
配給:アップリンク
【ストーリー】 戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦。2014年6月、その内戦において過激思想と武力で勢力を拡大する「イスラム国(IS)」がシリア北部の街ラッカを制圧した。かつて「ユーフラテス川の花嫁」と呼ばれるほど美しかった街は、ISの首都とされ一変する。爆撃で廃墟と化した街では残忍な公開処刑が繰り返され、市民は常に死の恐怖と隣り合わせの生活を強いられていた。海外メディアも報じることができない惨状を国際社会に伝えるため、市民ジャーナリスト集団“RBSS”(Raqqa is Being Slaughtered Silently/ラッカは静かに虐殺されている)は秘密に結成された。彼らはスマホを武器に「街の真実」を次々とSNSに投稿、そのショッキングな映像に世界が騒然となるも、RBSSの発信力に脅威を感じたISは直ぐにメンバーの暗殺計画に乗り出す―。
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