世界40言語で翻訳、160万部以上発行されたベストセラーを映画化した『ある一生』が、7月12日より公開される。このほど、予告編が披露された。
1900年頃のオーストリア・アルプス。孤児の少年アンドレアス・エッガーは渓谷に住む、遠い親戚クランツシュトッカーの農場にやってきた。しかし、農場主にとって、孤児は安価な働き手に過ぎず、虐げられた彼にとっての心の支えは老婆のアーンルだけだった。彼女が亡くなると、成長したエッガーを引き留めるものは何もなく、農場を出て、日雇い労働者として生計を立てる。その後、渓谷に電気と観光客をもたらすロープウェーの建設作業員になると、最愛の人マリーと出会い、山奥の木造小屋で充実した結婚生活を送り始める。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった…。第二次世界大戦が勃発し、エッガーも戦地に召集されたもののソ連軍の捕虜となり、何年も経ってから、ようやく谷に戻ることができた。そして、時代は過ぎ、観光客で溢れた渓谷で、人生の終焉を迎えたエッガーは過去の出来事がフラッシュバックし、生涯を共にしたアルプスの光景を眼前に立ち尽くす。
原作であるローベルト・ゼーターラーの同名小説は、世界40ヵ国以上で翻訳され160万部以上発行、ブッカー賞最終候補にもなった作品である。“世紀の小説”“小さな文学の奇跡”などと評された原作を忠実に、かつ美しい情景と共に視覚的に見事に映画化した本作は、激動の20世紀の中、80年にわたって暴力、戦争、貧困に耐えなければならなかったアンドレアス・エッガーの孤独な苦難の人生を描いている。しかし、そんな名もなき男の人生の中にも幸福な瞬間と大きな愛があり、エッガーは自分の人生を受け入れ、無骨に生き抜いていく。
予告編は、冒頭、主人公の少年が農場にやってくると農場主から酷い仕打ちを受け、足を折ってしまうが、老婆が「すぐよくなるわ」とやさしく慰める。そんな主人公がたくましい青年になると、農場主に反発して、農場を出て一人で生きることを選択し、黙々と働き、凛々しい姿が描かれる。さらに、ロープウェー作業員となって安定した収入を得ると、マリーという女性とも出会い、結婚し、子供も授かる。しかし、後半、戦争招集の場面から彼にさまざまな苦難を予期させる映像が畳み掛ける。激動の20世紀の中で生きた名もなき男が戦争、結婚、近代化といったものを体験し、「マリー!」と叫ぶ主人公には大きな悲劇が起きることが予想される。そして、終盤、主人公3世代の後ろ姿をカメラが追うことで、辛いことがあっても振り返らず常に前を向いて生きてきた男の生き様を感じさせる。最後、山を目の前にして立つ主人公と共に、“「愛」と「充実感」についての寓話であり、成果重視の現代社会を映す鏡である”と、本作が過去を描きながら、現代に生きる私たちの物語であると監督のメッセージが示している。
場面写真では、予告編と同じく、主人公が80年の人生の中で体験してきた戦争、結婚、近代化といったシーンが使用されている。
『ある一生』
2024年7月12日(金) 新宿武蔵野館ほか全国順次公公開
監督:ハンス・シュタインビッヒラー
原作:ローベルト・ゼーターラー「ある一生」
脚本:ウルリッヒ・リマー
出演:シュテファン・ゴルスキー アウグスト・ツィルナー アンドレアス・ルスト ユリア・フランツ・リヒター
配給:アット エンタテインメント
【ストーリー】 1900年頃のオーストリア・アルプス。孤児の少年アンドレアス・エッガーは渓谷に住む、遠い親戚クランツシュトッカーの農場にやってきた。しかし、農場主にとって、孤児は安価な働き手に過ぎず、虐げられた彼にとっての心の支えは老婆のアーンルだけだった。彼女が亡くなると、成長したエッガーを引き留めるものは何もなく、農場を出て、日雇い労働者として生計を立てる。その後、渓谷に電気と観光客をもたらすロープウェーの建設作業員になると、最愛の人マリーと出会い、山奥の木造小屋で充実した結婚生活を送り始める。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった…。第二次世界大戦が勃発し、エッガーも戦地に召集されたもののソ連軍の捕虜となり、何年も経ってから、ようやく谷に戻ることができた。そして、時代は過ぎ、観光客で溢れた渓谷で、人生の終焉を迎えたエッガーは過去の出来事がフラッシュバックし、生涯を共にしたアルプスの光景を眼前に立ち尽くす。
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