横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄ら4人の監督が紡ぐ物語『almost people(オールモスト ピープ ル)』9月公開

横浜聡子、石井岳龍、加藤拓人、守屋文雄。4人の監督が紡ぐ“感情の欠けた4人きょうだい”の物語『almost people(オールモスト ピープル)』が、9月30日より公開されることが決定した。

神尾家の4人兄弟姉妹には、普通の人とは違うある特徴があった。それぞれに感情の一部が欠けているということだった。 たとえば、喜び。たとえば、怒り。たとえば、楽しみ。たとえば、寂しさ。彼らは、兄弟姉妹。どこか見覚えのある私たちの隣人、いや、もしかしたら私たち自身?仮に、完全無欠の感情が備わっているのが人間の条件なのだとしたら、彼らは、“もうすぐ人間”になるでしょう。いや、それとも、いつまでも“もうすぐ人間”でいいのかもしれない。

国内配給にとどまらず、海外での公開を目指した本作は、セールスカンパニーを介さず、コギトワークスが海外のミニシアターと直接交渉を行なっている。その資金の一部はクラウドファンデイングで募り12,299,109円、467人から支援された。

現時点で世界各国17都市(ロンドン、スコットランド、ダブリン、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、ソルトレイクシティ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、トロント、モントリオール、バンクーバー、シドニー、メルボルン、オークランド、シンガポール)の合計111館にアプローチ中。

本作は日本の映画制作において新しい取り組みとして、監督・メインスタッフ・メインキャストに対し成功報酬制を取り入れている。上映で得られる利益の一部を分配することで、作り手が制作に純粋に向き合える環境を構築し、世界に届く映画を完成させた。

⻑男の神尾光(嶺豪一)には、「喜び」がない。新作映画のシナリオを執筆中の彼は、監督からラストシーンの「再会の喜び」を表すセリフがしっくりこないとリライトを求められる。困った光は、主演俳優で友人の時男(宇野祥平)と共に、言葉を探すため街に出る。人々が交わす様々な言葉の中から喜びの感情を捕まえようともがく光。彼らは「喜びの言葉」を見つけられるのだろうか。

⻑女の神尾火水子(柳英里紗)は、「怒り」がないことに葛藤し、自ら「怒り」を抱けそうな場所を探していた。社会革命を目指す二人の⻘年、星(諫早幸作)・量(木村文哉)の率いる「レボル」の元で革命の象徴となり、虹(塩塚モエカ)と華(伊澤彩織)の元で多様性の討論会に参加する。しかし、それらの活動が過激化していく中で、やはり火水子は彼らと同じ“怒り”を共有することができない。渦巻く怒りの中心で戶惑い続ける火水子はじっと世界を見つめている。

「楽しさ」がわからない次男の神尾太陽(井之脇海)は、恋人のエミ(木⻯麻生)と同棲している。メリーゴーランドに乗っても、記念写真を撮っても無表情の太陽に、エミは釈然としない思いを抱えていた。そんなエミは、太陽からプロポーズされた際、「わたしといて本当に楽しい?」と聞いてしまう。動揺した太陽は埋められない溝をどうにか埋めようともがく。ささいなすれ違いを重ねながらも、二人の日常は続いていく。

「寂しさ」という感情がない次女の神尾花子(白田迪巴耶)は突然高校を中退し、小さな漁港の旅館で働き始める。その旅館には、不思議と似た空気を纏った人が集まってくる。退学の手続きのため花子を訪ねた担任教師の藤巻(岩谷健司)もその一人だ。その旅館に父(邦城龍明)が現れ、「寂しい思いをさせてごめんな」と何度も謝る。花子の感情を理解していない父親に苛立つ花子と、花子に共感する藤巻。そんな藤巻を見て花子はある提案を持ちかける。

“喜び”という感情が欠けた⻑男を、『溺れるナイフ』、『菊とギロチン』、『あのこは貴族』などの話題作に出演が続く嶺豪一が、哀愁を帯びたコミカルな表情で演じている。⻑女は『ローリング』など、数多くの映画作品で活躍する柳英里紗が、”怒り”の感情が持てずに戶惑う姿で存在する。次男は映画、ドラマ、舞台など広いフィールドで活躍する井之脇海が“楽しさ”がわからない男を繊細に表現。末っ子の次女は新人俳優の白田迪巴耶が、“寂しさ“がわからないもどかしさを明るく溌剌と演じた。

本作の音楽を担当するのは、音楽家・文筆家の菊地成孔と、菊地氏が結成した「新音楽制作工房」。コギトワークスが本作で行なっている「日本映画を世界のミニシアターへ届ける」という取り組みに共鳴し、参加を決意。これまでの映画音楽とは一線を画す映画音楽表現を展開している。

また、宇野祥平、渋川清彦、木⻯麻生、岩谷健司をはじめとした個性豊かな俳優たちが、感情の一部が欠如している主人公たちの挙動に時に戶惑いながらも、その葛藤に対峙する姿を演じている。モデルとしても注目される平井亜門、映画の吹き替えに多数出演している瑚海みどり、劇団「⻘年団」を中心に活躍する木引優子、舞台・TVドラマでの実績を積む諫早幸作と木村文哉、オルタナティブ・ロックバンド「羊文学」のギターボーカル塩塚モエカ、『ベイビーわるきゅーれ』『ベイビーわるきゅーれ 2 ベイビー』主演の伊澤彩織、『岬の兄弟』『夜明けまでバス停で』などの作品で存在感を示す松浦祐也、話題作への出演が続く後藤ユウミ、水澤紳吾、演出家でもある邦城龍明など、業界を横断したキャスティングも見所の一つ。

『almost people(オールモストピープル)』
2023年9月30日(土)より、ユーロスペースほか、国内外のミニシアターで世界同時公開
監督:横浜聡子 石井岳龍 加藤拓人 守屋文雄
音楽:菊地成孔 新音楽制作工房
脚本:いながききよたか 加藤拓人 守屋文雄
主演:嶺 豪一 柳 英里紗 井之脇海 白田迪巴耶
配給:株式会社コギトワークス