2021年のカンヌ国際映画祭・監督週間でワールドプレミアを迎え、同年の東京フィルメックス・コンペティション部門では仮題『砂利道』として上映されたパナー・パナヒ監督の初長編映画が、邦題を『君は行く先を知らない』として8月25日より公開される。このほど、予告編、日本版ポスタービジュアル、場面写真がお披露目となった。
イランの国境近く。車で旅をしている4人家族と1匹の犬。大はしゃぎする幼い弟を尻目に、兄、父と母は口には出せない何かを心に抱えている。この旅の行く先を知った時、我々は深い感動に包まれる。
『白い風船』(1995)『チャドルと生きる』(2000)『人生タクシー』(2015)他でカンヌ、ヴェネチア、ベルリンの三大映画祭を制覇した世界的巨匠であり、長年にわたるイラン政府との自由をめぐる闘争でも知られるジャファル・パナヒ。その制作現場で経験を積んだ長男パナー・パナヒが2021年、満を持して長編デビュー作を発表し、カンヌを皮切りに世界96カ国の映画祭を喝采の渦に巻き込んだ。
父ジャファルがプロデューサーを務める本作は、イランの荒野を車で移動する家族のロードムービー。監督の家族や友人に起きた出来事から触発された物語は、驚くほどシンプルでありながらユーモアとペーソス、そしてサスペンスに富み、観客は一瞬たりとも目を離せない。
イランの国境近くを車で旅している4人家族と1匹の犬。幼い次男が大はしゃぎする中、怪我人の父は悪態をつき、母は昔の流行歌を口ずさみ、成人したばかりの長男は無言でハンドルを握っている。車はどこへ向かうのか? 何が一家を待ち受けているのか?大人たちが口に出さないこの旅の目的が明らかになる時、私たちは深い感動に包まれる。
日本版ポスタービジュアルは、撮影当時6歳の次男役、ヤラン・サルラクが放つ天真爛漫なエネルギーを凝縮した1枚をセレクト。子どもの演技が魅力的なイラン映画は数多いが、イラン映画史に連なる新たな1作となることを予感させる。
予告編では他にも広大な砂漠や高原と狭い車内のコントラストが印象的な映像や、物語をノスタルジックに彩るイスラム革命以前の歌謡曲の数々が登場。各国の観客や批評家から絶賛を浴びた両親役のベテラン、パンテア・パナヒハとモハマド・ハッサン・マージュニによる人間味あふれる演技、長男役の新人アミン・シミアルの憂いを帯びた佇まいも垣間見える。
『君は行く先を知らない』
2023年8月25日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開
製作:ジャファル・パナヒ パナー・パナヒ
脚本・監督:パナー・パナヒ
出演:モハマド・ハッサン・マージュニ パンテア・パナヒハ ヤラン・サルラク アミン・シミアル
配給:フラッグ
©JP Film Production, 2021