2021年のカンヌ国際映画祭・監督週間でワールドプレミアを迎え、同年の東京フィルメックス・コンペティション部門では仮題『砂利道』として上映されたパナー・パナヒ監督が、邦題を『君は行く先を知らない』として8月25日より公開されることが決定。併せて、ティザービジュアルがお披露目となった。
『白い風船』で監督デビューし、カンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞。『鏡』(97)でロカルノ国際映画祭金豹賞、『チャドルと生きる』(00)でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、『オフサイド・ガールズ』(06)でベルリン国際映画祭審査員グランプリ、『人生タクシー』(15)で金熊賞を受賞するなど、いわずとしれたイラン映画界の巨匠、ジャファル・パナヒ。彼が次にプロデュースを決めた作品が本作『君は行く先を知らない』である。
監督は、本作が初長編作となるパナー・パナヒ。ジャファルの才能を受け継いだ長男である。子供のころから父親やアッバス・キアロスタミ監督の作品のセットに行っていたパナー監督。だが父とは映画の話をすることはほとんどなく、18〜19歳で初めて「映画を勉強したい」と思ったという。そして助監督と撮影監督の両方を経験し、父親の最新作『NO BEARS(原題)』(日本公開予定)では脚本からポストプロダクションまで携わった。
そんな彼が満を持して監督デビューとして選んだ題材は、ユーモアあふれる作風の中にイランの社会問題を漂わせたある家族の人生の旅。すでに96の映画祭に選出され、世界各国で絶賛を浴びている本作は、もはや2世とはいわせない監督としての力量を見せつけた。
イランは未だ自由な表現活動や人権が認められている国とは言い難い。父・ジャファルもその映画人生は非常に困難を極めた。時の政権と対立し、2010年カンヌ国際映画祭の審査員に選ばれていたにもかかわらず自宅で拘束され、欠席。ジュリエット・ビノシュら各国の映画人がイラン政府へ抗議活動を行った。ジャファルはその後20年に渡り表現活動の禁止を言い渡されたが、映像を“密航”させ、カンヌ映画祭でドキュメンタリー映画「これは映画ではない」を上映するなど、闘争の人でもある。家族であるパナー監督は、そんな父と国との自由をめぐる戦いをどのように見ていたのだろうか?旅立とうとする息子と国に残る家族の最後の旅を描いた本作では、“次世代”としての人生観が随所に見られ、胸を締め付ける。
オバマ前大統領が選ぶ2022年お気に入り映画の1本にも選出され、「まるでイラン版の『リトル・ミス・サンシャイン』を見ているよう」Hollywood Reporter、「今年の傑作。笑いあり、悲劇あり、感動ありのほぼ完璧なデビュー作」Rolling Stone、「あっという間に過ぎ去る93分間。一緒に旅をした家族をどれだけ好きになったか、クレジットが流れるまで気づかずに、すぐに寂しくなってしまう」Varietyなど、海外映画評でも絶賛の嵐だ。
ティザービジュアルは、本国でアートワークとして使用されたイラストを利用し、本編中の印象的なワンシーンを描いたものだ。家族4人の旅路の中に出てくるこのシーンは一体何を表すのか…?
『君は行く先を知らない』
2023年8月25日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開
製作:ジャファル・パナヒ パナー・パナヒ
脚本・監督:パナー・パナヒ
出演:モハマド・ハッサン・マージュニ パンテア・パナヒハ ヤラン・サルラク アミン・シミアル
配給:フラッグ
【ストーリー】 イランの国境近く。車で旅をしている4人家族と1匹の犬。大はしゃぎする幼い弟を尻目に、兄、父と母は口には出せない何かを心に抱えている。この旅の行く先を知った時、我々は深い感動に包まれる。
©JP Film Production, 2021