「コロナ禍の中で、大国同士がいがみあう先にどんな未来が待っているのか?」小野寺隆一初長編監督作『演者』3月公開

小野寺隆一初長編監督作品『演者』が、3月25日より公開されることが決定した。併せて予告編、ビジュアル、場面写真がお披露目となり、併せて小野監督よりコメントが寄せられた。

昭和20年春、終戦前夜。疎開先に選ばれるような地方のある一軒の家族の中で起きる劇的な夕暮れ時。大きな戦争の被害は届かなくとも、次第に物がなくなり、徐々に人が減っていく状況の中、戦地に男たちを奪われた嶋田家に嫁いだ三人の義理の姉妹の物語。本来、家父長制の中の家長である長男の嫁、智恵は幼い子供のように振る舞う。次男の嫁、陽子はそれを演じているのではないかと疑っている。三男の嫁は少しでも明るく振る舞おうとしている。「演じているのか」と問い詰めたその時、世界が反転するような報せが届く。フィクションの中で役を演じる俳優たちが「演じている」「演じていない」に迫っていくメタ構造の作品でもある。

監督、出演者は2020年のコロナ禍の中、惜しまれながらも22周年公演で解散した「劇団前方公演墳」の主要メンバー。2018年に劇団の最高傑作「セブンガールズ」を映画化、公開。自主制作映画としては異例の動員を記録、現在もアンコール上映やアマゾンプライム他、オンラインメディアでの配信が続いている。その製作経験を生かして劇団の企画公演で人気だった小野寺が作・演出した短編を1から書き直し、登場人物も増やし物語の重層化をした上で映像化。またタイトルロゴとなる題字は映画監督の豊田利晃(『ポルノスター』、『破壊の日』他)が担当した。

映画音楽には、『セブンガールズ』に引き続き、吉田トオル(DISCOVOLANTE)が参加、新曲を4曲書き下ろした。

■小野寺隆一(監督)コメント
『演者』は2020年のコロナ禍の中、企画されました。多くの舞台公演が中止される中、22年間という長い時間を共にした劇団の仲間たちとの別れがありました。そして疫病禍のもと世界中が分断していく中の企画でした。死生観を問われるコロナ禍の中で、大国同士がいがみあう先にどんな未来が待っているのか自問自答を重ねてこの作品の企画をたてました。まるで何かを予見したかのように完成後にウクライナでの戦争がはじまったことは大きな衝撃でした。「本当に戦争なんてやっているのかしら?」劇中で登場人物がつぶやきます。戦地や爆撃地から遠く離れた疎開地で徐々に生活が変化していく中での何気ない一言は、情報だけが届く今の僕たちに直接伝えているかのようでした。あのひとけのなくなった街も、当たり前になった距離感も、テレビに映るミサイルも。まるで現実世界とフィクションの世界が逆転してしまったような錯覚を覚えました。フェイクが溢れた現実世界を生きる登場人物の僕はこの世界で何を演じているのだろう?自分でも気づかないうちにまとわりつくように演じられた何かを自分としているのではないだろうか。そんなあやふやで所在がなくなった自分に「ほんとう」を問いたいと思います。「演じる」こととはなんなのか考え続けた仲間たちと共に「演じている」かどうかを作品にしました。この世界に生きる全ての「ほんとう」を探している皆様に届きますように願っています。

『演者』
2023年3月25日より、新宿 K’s cinema にて限定公開
企画・監督・脚本:小野寺隆一
音楽:吉田トオル
題字:豊田利晃
出演:藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ 中野圭 織田稚成 金子透 安藤聖 樋口真衣 大多和麦 西本早輝 小野寺隆一 
企画・製作・配給:うずめき

【ストーリー】 昭和20年春、終戦直前のとある村。島田家に嫁いだ3人の女たち。血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時で不在の家を守り続けている。家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。やがて魔物が再び女たちの前に現れる。世界は反転して、演技は見抜かれる。