村上淳「センスは良いとか悪いじゃない、あるかないか」古物店を舞台とした人間ドラマ『ゆめのまにまに』11月公開

村上淳、渋川清彦、村上虹郎らが所属するディケイド設立30周年記念映画として制作され、実在する古物店を舞台にした人間ドラマ『ゆめのまにまに』が11月12日より公開されることが決定した。併せて、予告編、キービジュアル、場面写真がお披露目となり、張元香織監督、主演のこだまたいち、千國めぐみ、中村優子、村上淳ら主要キャストよりコメントが寄せられた。

本作は、東京・浅草六区に実在する古物店「東京蛍堂」を舞台に、人と時間が交差していく日々を描いた人間ドラマ。

監督を務めるのは、多摩美術大学造形表現学部卒業後、映画助監督として横浜聡子監督、菊地健雄監督、瀬々敬久監督、越川道夫監督、岨手由貴子監督など多数の作品に参加してきた、張元香織。2018年には、映画『船長さんのかわいい奥さん』で長編での初監督デビュー、その後も『あのこは貴族』(2020)などで助監督の経験を経て、本作は長編2作目となる。

主演を務めるこだまたいちは、「メンズノンノ」専属モデルとしてデビュー、俳優・フォークシンガーとして活躍しており、映画では『犬ヶ島』(18・声の出演)、『左様なら』(19)、『PRINCE OF LEGEND』(19)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)などに出演する他、主演をつとめた関西電気保安協会のCM「ある日突然関西人になってしまった男の物語」が話題に。2022年、新たなフォーク・バンド「酔蕩天使」(読み:ヨイドレテンシ)のリードボーカルを担当。本作のエンディング曲「サンローゼ」(11月9日配信)を含む酔蕩天使のファーストアルバム『ヨイテン』(11月23日発売)もHILLS RECORDよりリリースされる。

キービジュアルは本作の舞台である東京蛍堂で撮影。熊本から上京した真悠子(千國めぐみ)が、謎を抱えつつ足繁く店に通う切ない様子と、それぞれが自分の時間軸で生きている登場人物達の微妙な関係性を表現している。

予告編では、入った瞬間に異次元にタイムスリップする骨董店に魅了される人々、浅草の空気が肌に染み込むような映像で構成され、真悠子が慕う、幻のような店主・和郎(村上淳)への淡い思いが演出されている。

▼スタッフ&キャスト コメント

■張元香織(監督)
理由もなく惹かれる、直感的にいいと思う、好きで欲しくてそばに置きたい、頭から離れず夜も眠れない!そんな強い感情について、私はよく考えます。それは時には行き過ぎたり偏ったり、まさに人を盲目にする感情のことです。そんな感情はどこから来てどこへ行くのか。その思考のテーマは、古物店を舞台にすることで、映画の世界観にぴったりとはまりました。あとは、そこから受け取ったものを、流れの隨(まにま)に、脚本に描いていきました。東京蛍堂のような古物店は、モノだけでなく様々な色濃い感情エネルギーが集まり、留まり、放出される場所なのです。皆さんにこの映画を観てもらえること、とても楽しみにしています。

■こだまたいち
今回のお話を頂いた当初、張り切るあまり撮影地である浅草六区・東京蛍堂を中心としたありとあらゆる道をゆき、何時間も何十周も台詞を唱え…初主演のプレッシャーと興奮をマーキングしながら歩き回っていました。張元監督が作品の根底にあるテーマ性や人物像を丁寧に紐解きながら、穏やかに熱心に肩をほぐすような話し合いを重ねて下さったお陰で、緊張していた自分も徐々に静かな集中力をもって臨めるようになりました。同世代や下の世代の新人俳優の皆さんと切磋琢磨しながら撮影に向かっていけたこと、現場で先輩方の胸を借りながらお芝居の楽しさに改めて気づけた事、その経験は宝物です。1991年3月、ディケイド設立と時を同じくして生を受けた自分も、同様に節目の年を迎えました。十分な過去も、十分な未来もあります。その中で続けていく事、大事に育んでいく事、何を手に入れ何を手放すか、その選択は執着ではなく愛着によるものなのだという浪漫が、今作の最大のテーマの一つとしてスクリーンに映っていると僕は信じています。

■千國めぐみ
浅草で蒸籠を転がしたことがあります。買ったのを包んだ風呂敷の結び目が解けてしまって、落ちてゴロゴロ転がってしまったのです。大慌てでしたが、地元の人たちが蒸籠は珍しいな、と笑いながら拾い集めてくれました。そうか、浅草の人たちはここを訪れた人間の色んな瞬間を見てきているのだ。そう思いました。それこそ、解けたり転がったり、人間のいろいろな様を。初めて蛍堂を訪れた帰り道でのことです。7月5日、私の誕生日でした。この映画の、人間の、時たま可笑しくもある営み、その人間と共に過ごした古物たちが吐く濃密な空気、それらを包む浅草という街をつくる人々の様は、皆さんの目にはどう映るのでしょう。ビールを飲み飲み、お喋りしたい気持ちです。

■中村優子
蛍堂は、混沌とした浅草の一角にひっそりと在る。異世界への、入り口のように。足を踏み入れる登場人物たちを待つのは、圧倒的なモノ、モノ、モノ。時間や物語を経て、ただ、そこに存在するモノとの邂逅。 大切にされたモノには、大切にした誰かの人生がある。モノに見つめられる時、私たちは、心許ない自分自身の人生を、やはり、大切にしたいのかもしれない。

■村上淳
よく若いころに絶大な信頼をしている人生の大先輩にこう言われた。“才能は常に意識しなければすぐに斬れ味が落ちる。センスは良いとか悪いじゃない、あるかないかだ。”僕がこの作品の完成を見たときに強く思い返した言葉です。張元監督とは初対面ですし、作品に出演するのも演出を受けたのももちろん初です。現場単位での体感で“いい現場”だな=で必ずしも“素晴らしい作品”にはならないことも多くあるのですが、非常に素晴らしい現場でしたし、なりよりこの初号試写を観た後、数ヶ月は“この作品の素晴らしさの記憶”を書き換えたくなくて新しい映画を観ませんでした。我が社DECADEは押し売りするような大きな体制もなく、つつましく謙虚に業界の隅のほうでやらせていただいている事務所ですが、こうして胸をはれる作品を素晴らしい監督・座組・キャストでやれたことのありがたさを肝に命じて、またさらに映画にまい進したいと思います。

『ゆめのまにまに』
監督・脚本:張元香織
エンディング曲:酔蕩天使「サンローゼ」(HILLS RECORDS)
出演:こだまたいち 千國めぐみ 遊屋慎太郎 野口千優 澁谷麻美 北澤浩志郎 岩谷健司 内藤正記 松浦祐也 和田光沙 玉りんど 藤井千帆 岡部ひろき 浦山佳樹 泉拓磨 高橋綾沙 藤入鹿 原風音 三浦誠己 山本浩司
中村優子 村上淳
配給:スールキートス

【ストーリー】東京・浅草六区に佇む、とある古物店「東京蛍堂」。不在がちな店主・和郎(村上淳)に代わり、毎日店番をするアルバイトのマコト(こだまたいち)。客足が遠のいて久しい店には、それでも毎日のように誰かしら人が出入りする。馴染みの仲見世の店主、町内会の人びと、古着物蒐集家たち、骨董マニア、女子高生など…。夏の終わりのある日、訳ありそうな一人の女性・真悠子(千國めぐみ)が店にやってくる。どうやら、店主に逢いに来たようだが、店主をさけているようにも見える。店に入って、何を物色するでもなく、ふらりと現れては、ふらりと店を去る彼女。マコトは次第に、毎日足繁く店に通うその彼女のことが気になり始めるが…。

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