香川照之「変態性に満ちていた。狂っている。褒め言葉だ。こんな映画が欲しかった」14年ぶりの単独主演作『宮松と山下』11月公開!

“新しい手法が生む新しい映像体験”を標榜し、過去に2本の短編映画がカンヌ国際映画祭から正式招待を受けた監督集団「5月(ごがつ)」。数多くの名作CMや教育番組「ピタゴラスイッチ」を手掛けてきた東京藝術大学名誉教授・佐藤雅彦、NHKでドラマ演出を行ってきた関友太郎、多岐にわたりメディアデザインを手掛ける平瀬謙太朗の3人からなる「5月」が、日本が誇る名優・香川照之を主演に迎えて制作した初の長編映画『宮松と山下』が、11月18日に公開されることが決定した。

映画・ドラマ・舞台に限らず、ニュース番組・教育番組など、八面六腑の活躍を続ける香川が、ポン・ジュノ監督作品『TOKYO!<シェイキング東京>』、黒沢清監督作品『トウキョウソナタ』に主演した2008年以来の単独主演作品として選んだ『宮松と山下』。常に圧倒的な存在感を見せてきた香川が本作で挑んだのは、なぜかエキストラ役者として生きる男・宮松。ある日はあっけなく斬られて画面の端に消え、ある日はチンピラとして凶弾に倒れ…そんな殺されてばかりの端役を一生懸命に取り組む目立たない男の生活を描き出す。香川を支える共演者たちも実力派が揃った。津田寛治、尾美としのり、中越典子らが、口数の少ない宮松の謎に包まれた現在と過去を展開していく。

■香川照之(宮松役) コメント
『宮松と山下』は、具体名を出して申し訳ないが、2006年に撮影した西川美和監督の『ゆれる』という映画の脚本を初見で読んで以来の異様な衝撃が走った台本だったが、聞くとその映画のメガホンをとる監督が何と3人いると言う。2人は30代の若者。残る1人は年齢不詳の男。若者の1人はどこまでも芸術的な感覚で世界を捉えていて、中世ヨーロッパの抽象画家のようだ。もう1人は、辛うじて演技の方向性を演者に伝えてくるが、目の奥では全く違う思考がカチカチと常に動いていて油断がならない。年齢不詳の男は思慮深い教授そのもので、豊かな知識の会話術に満ちながら、その実なにを考えているのか皆目分からない。そんな彼ら3人の巧みな言葉に乗せられて、私のアイディアや感性も暴発していく。ああ、久しぶりに芯のある演技をしているな…完成した作品は、やはり久しぶりの変態性に満ちていた。狂っている。褒め言葉だ。こんな映画が欲しかった。

■監督:関友太郎/平瀬謙太朗/佐藤雅彦 コメント
この映画は、当初、「とうてい実現できそうにない構想」として、私たち3人の監督の間では宙に浮いていた。それが、ある日、「香川照之」という名前がひとりの口から漏れた瞬間。現実に完璧に定着することができると3人の監督は直感した。エキストラ役者として己の個を消してどんな場所にでも潜む役を演じつつも、画面に写ったら最後、観客を物語の世界へとグイグイと連れて行く存在感。そんな矛盾する両面性。もう香川照之しかいなかった。そして、それがいかに素晴らしい閃きであったかを、私たちはその後、嫌というほど思い知ることになる。撮影の最中、宮松という人物を求めて、香川さんはずっと私たちと一緒に悩み、試し、答えを出した。編集中、香川さんが我々に与えてくれた表情や演技には、とんでもない量と質の情報が含まれていることが分かった。香川照之の演技力、人間性を我々は充分知っている。と思っている。しかし、まだ世の中は香川照之の緻密さを知らない。まだ世の中は香川照之の恐ろしさを知らない。まだ世の中は香川照之の本性を知らない。私たち3人の監督は、それを今、確信している。香川照之の真髄、この映画にあり。


▲メイキングカット(左から、関友太郎監督、平瀬謙太朗監督、佐藤雅彦監督、香川照之)

『宮松と山下』
2022年11月18日(金) 新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集:関友太郎 平瀬謙太朗 佐藤雅彦
出演:香川照之 津田寛治 尾美としのり 中越典子
配給:ビターズ・エンド

【ストーリー】 宮松(香川照之)は端役専門のエキストラ役者。ある日は時代劇で弓矢に打たれ、ある日は大勢のヤクザのひとりとして路上で撃たれ、またある日はヒットマンの凶弾に倒れ…来る日も来る日も殺され続けている。真面目に殺され続ける宮松の生活は、派手さはないけれども慎ましく静かな日々。そんな宮松だが、実は彼には過去の記憶がなかった。なにが好きだったのか、どこで何をしていたのか、自分が何者だったのか。なにも思い出せない中、彼は毎日数ページだけ渡される「主人公ではない人生」を演じ続けるのだった…。

©2022『宮松と山下』製作委員会