角田光代「愛も自由も、こんなにおそろしいしっぺ返しとなって戻ってくる」『靴ひものロンド』本予告編

77回ヴェネチア国際映画祭のオープニング作品で、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞3部門にノミネートされた、イタリアの名匠ダニエーレ・ルケッティ監督最新作『靴ひものロンド』が9月9日に公開される。このほど、本予告編がお披露目となり、併せて、作家・角田光代より本作へのコメントが寄せられた。

「ニューヨーク・タイムズ」2017年注目の本に選出、全米で絶賛された原作小説をイタリアの名匠ダニエーレ・ルケッティが映画化。1980年代初頭のナポリ。4人家族の平穏な暮らしは、夫の浮気で終わりを告げた。夫婦の絆を解こうとする父親と繋ぎ止めようとする母親。対立する夫婦の激しい口論や突然現れた魅力的な愛人、徐々に壊れていく母の姿を静かに見つめながらローマとナポリを行き来する子供たち。いびつな数年間を経て、ばらばらになった家族はささやかなきっかけで再び一緒に暮らし始める。月日は流れ夫婦は夏のバカンスへ。戻ってみると、家はひどく荒らされ、飼い猫は失踪しているのだった。一度壊れた「家族」は「絆」を再び繋ぐことができるのか?

予告編には4人家族の平穏な暮らしが、夫のひと言で終わりを告げるシーンを映し出す。「女性と関係をもった」と浮気を告白するアルド。予想だにしなかった愛する人の言葉、態度にヴァンダは強烈な一撃をくらわし、夫を家から追い出した。その日を境に、家族の生活は一変する。1980年代と現代、2つの時代を織り交ぜて物語は進んでゆく。そして30年後、夫婦は夏のバカンスへ。留守中に荒らされた家、飼い猫の失踪。突如起きた不穏な出来事をきっかけに夫婦、親子、それぞれが胸にしまっていた秘密と嘘がいま、溢れ出す。

さらに、予告編のナレーションを務めたのは、フリーアナウンサーの堀井美香。妻であり母でもあるヴァンダの胸中、子供たちが静かに見つめる中でもつれなだれ込む修羅場の数々が映し出される中、柔らかで芯の強い声色が辛辣なだけでは終わらない軽やかさとポジティブな印象を与えている。ほどいて、結んで、を繰り返す、めちゃくちゃな家族の不気味な崩壊と衝撃。切っても切れない夫婦であり親子の本当の姿に、突き抜けた爽快感と余韻が巡る、愚かしくも愛おしい人間ドラマに期待してほしい。

■角田光代(作家)コメント
愛も自由も、こんなにおそろしいしっぺ返しとなって戻ってくる。 夫婦の、家族の、いや、人間というものの底知れなさを思い知る。

『靴ひものロンド』
2022年9月9日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
監督・脚本・編集:ダニエーレ・ルケッティ
原作:ドメニコ・スタルノーネ「靴ひも」(関口英子訳、新潮クレスト・ブックス)
脚本:ドメニコ・スタルノーネ フランチェスコ・ピッコロ
出演:アルバ・ロルヴァケル ルイジ・ロ・カーショ ラウラ・モランテ シルヴィオ・オルランド
配給:樂舎

【作品概要】1980年代初頭のナポリ。4人家族の平穏な暮らしは、夫の浮気で終わりを告げた。夫婦の絆を解こうとする父親と繋ぎ止めようとする母親。対立する夫婦の激しい口論や突然現れた魅力的な愛人、徐々に壊れていく母の姿を静かに見つめながらローマとナポリを行き来する子供たち。いびつな数年間を経て、ばらばらになった家族はささやかなきっかけで再び一緒に暮らし始める。月日は流れ夫婦は夏のバカンスへ。戻ってみると、家はひどく荒らされ、飼い猫は失踪しているのだった。

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