「これが僕の過去」ひとりの青年が“難民”としての過酷な経験&未来への覚悟を語る『FLEE フリー』予告編

本年度アカデミー賞で史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞3部門同時ノミネートの快挙を成し遂げた、デンマークほか合作によるドキュメンタリー映画『FLEE フリー』が、6月10日より公開される。このほど、本作の予告編がお披露目となった。

アフガニスタンで生まれ育ったアミンは幼いある日、父がタリバンに連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める…。本作はドキュメンタリー映画だが、主人公アミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作された。

予告編では、主人公アミンが誰にも明かしたことのなかった自身の過去を、長年の親友である映画監督(本作の監督ヨナス・ポヘール・ラスムセン)に対して初めて語る姿や、その言葉により回想される幼少期からの余りに過酷な経験、結婚を控えた恋人の男性にさえ過去を話すことができていないという現在の苦悩が映し出される。一方で、アミンによる「変わるべき時だ」「これが僕の物語の始まりだ」という自身のトラウマと向き合った上で一歩踏み出そうとする彼の強い覚悟の言葉も切り取られ、本作が持つ未来への希望が感じられる映像になっている。

本映像には、本作を絶賛する歴代のアカデミー賞監督達によるコメントも収録。『ROMA ローマ』のアルフォンソ・キュアロン監督は、「人を立ち止まらせ、考えさせる。この映画は愛で出来ているのだ」とコメントを寄せており、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督は、「今年見た映画の中で、最も感動した作品。涙が出た」と絶賛し、2021年のベスト映画の1本にも選出した。

アミンがデンマークに亡命を果たした直後の16歳の頃からの旧友だったラスムセン監督は、若い頃、好奇心からアミンに過去について尋ねたが、アミンは何も語ろうとしなかったという。それから約20年の時を経て、アミンの心境の変化もあり、本作の製作に同意。監督は、アミン本人の声と記憶を通してこれまで誰にも語られなかった彼の物語を聞きたいと考え、その心のペースに寄り添いながら約4年もの長い時間をかけて断続的にインタビューを敢行した。監督は、「ラジオ・ドキュメンタリー制作で長年培ってきたインタビューの手法を用いました。取材対象に、横たわって目を閉じ、かつて目にした光景や匂い、感触を思い出してもらいます。そうすることで、記憶がより強く直接的なものになり、まるで今まさに展開していることのように感じられるのです」と説明する。その上で、“初めて話す”という行為が持つエネルギーを重視し、事前に聞いた内容を改めて語ってもらう“再現”は一切行っていないのだという。

『FLEE フリー』
2022年6月10日(金) 全国公開
監督・脚本:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
脚本:アミン・ナワビ
製作総指揮:リズ・アーメッド ニコライ・コスター=ワルドー
配給:トランスフォーマー

【作品概要】 アフガニスタンで生まれ育ったアミンは、幼い頃、父が連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離れ離れになり、数年後たった一人でデンマークへと亡命した彼は、30代半ばとなり研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。だが、彼には恋人にも話していない、20年以上も抱え続けていた秘密があった。あまりに壮絶で心を揺さぶられずにはいられない過酷な半生を、親友である映画監督の前で、彼は静かに語り始める…。

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