柊役に佐藤緋美、麗役に臼田あさ美!小松菜奈 × 宮沢氷魚『ムーンライト・シャドウ』予告編&メインビジュアル

1989年に刊行された吉本ばななによる名作「キッチン」に収録される同名短編小説を、エドモンド・ヨウ監督が小松菜奈主演で映画化する『ムーンライト・シャドウ』が、9月に公開される。このほど、予告編とメインビジュアルがお披露目となり、追加キャストとして佐藤緋美や臼田あさ美らが出演することが発表された。

本作は、ある日突然、愛する人を亡くした主人公のさつき(小松菜奈)が、死者ともう一度会えるかもしれない、という不思議な現象〈月影現象〉を通して、哀しみをどう乗り越えるのかを描いた「さよなら」と「はじまり」のラブストーリー。

先日、主人公さつきの恋人で、突如帰らぬ人になってしまう等役を宮沢氷魚が演じることが発表されたのに続き、等の弟・柊(ひいらぎ)役に佐藤緋美(さとうひみ)、柊の恋人・ゆみこ役に中原ナナ、そして、等を亡くしたさつきの前に現れる不思議な女性・麗(うらら)役に臼田あさ美、ほか吉倉あおい、中野誠也などの追加キャストが発表となった。

映画化を知った原作ファンの間で、「柊役はいったい誰がやるのか?」と真っ先に大きな注目が集まっていた柊のキャスティング。柊は兄の等と自身の恋人・ゆみこを同時に亡くし、兄の恋人であったさつきと共に深い哀しみに打ちひしがれながらも、少しずつ“生きていく”という日常を取りもどしていく難しい役どころである。そんな柊役を今回見事オーディションで勝ち取ったのが、注目の若手俳優・アーティストの佐藤緋美だった。2018年に寺山修司原作の舞台「書を捨てよ町へ出よう」で主演デビューし、その後『#ハンド全力』などの映画に出演、【HIMI】としてのアーティスト活動でも、才能あふれる独自の存在感を発揮している。柊は亡くなった恋人・ゆみこのセーラー服を着て日々を過ごし何かを感じようとする、原作でも非常にインパクトのあるキャラクター。佐藤は演じることが決まった際、「まさかこの役をいただけるとは思っていなかったのでびっくりした。柊は僕自身と合致する部分が全くないので、正直すごく難しかったけれど、だからこそ挑戦してみたいと思った」と語っている。印象的なもみあげ・おかっぱの髪型も「素の自分とは違う姿で演じたい」と自ら監督に提案。監督は佐藤を起用した理由として「オーディションで、独自のリズムとテンポによって出来た別世界に住んでいるような印象で、原作で描かれる柊にとても近いと感じた」と語り、現場では「自由奔放で、刺激的なエネルギーを発していた」と振り返る。

そしてもう一人、原作ファンが注目していたキャラクターで、さつきの前に現れる不思議な女性・麗(うらら)役には、映画『南瓜とマヨネーズ』、『愚行録』、『美人が婚活してみたら』、『架空OL日記』など、幅広いジャンルの作品でどんな役でも演じきる、臼田あさ美が挑んだ。麗は、どこかミステリアスな存在感を放ちながら、「満月の夜の終わりに死者ともう一度会えるかもしれない」という不思議な現象〈月影現象〉へ、さつきと柊を次第に導いていく。臼田自身も「とても不思議なキャラクターで、答えがないと感じた。『監督はこの作品をどんな風に撮るんだろう?』と、予測できない部分に興味が湧いた」とオファーを受けたときを振り返る。麗がどんな風に作品にスパイスを加えているのか、期待が高まるばかりである。

柊の恋人・ゆみこを演じた中原ナナは、「カネボウ」や「コカ・コーラ」、「Adidas」などの海外広告のイメージモデルとして活躍するが、本作でゆみこ役のオーディションを見事に勝ち抜き、鮮烈な女優デビューを果たした。そしてさつきの親友・蛍役を吉倉あおい、さつきや柊と麗を巡り合わせる充役に中野誠也など、原作にはないオリジナルのキャラクターも登場する。

公開された予告編は、「等はいつも、小さな鈴を肌身離さず持ち歩いていた。それは彼のそばを最後まで離れない運命となった──。」という、さつき(小松菜奈)の含みのあるナレーションとともに始まる。映像には、失くした鈴をきっかけに出会い、恋に落ち、付き合い出すさつきと等(宮沢氷魚)の幸せいっぱいの姿が。そして、等から紹介され、初めて会ったときから意気投合した等の弟・柊(佐藤緋美)とその恋人のゆみこ(中原ナナ)との、何気ないけれど穏やかで幸せな4人の日々が、安らかでどこか神秘的な音楽とともに美しく収められている。だが、突然の着信音により状況は一変。「事故があって、二人とも、死んだ──。」柊から電話越しに受けた突然の訃報に、深い哀しみに打ちひしがれ、生きる気力さえも失ってしまったような、痛々しいさつきの姿が映し出される。そしてコラボレーションソングの小袋成彬による「Parallax」がかかるとともに、不思議な女性・麗(臼田あさ美)に出会い、「満月の夜の終わり」に「死者と再会できる」〈月影現象〉という不思議な現象に導かれていくさつきと柊の姿が描かれる。さつきの中に湧き上がる等と過ごした愛しい記憶、「もう、その音は、私の頭の中にしかなくて……」涙を流しながらあふれる想いを“声”に出すさつき。彼らは愛する人との別れをどう乗り越えるのか。「どこかとどこかの歯車が、偶然噛み合ったら、何かが起こるのかも。」最後の等からのメッセージに込められた意味とは?

メインビジュアルには、さつきとその愛する人、等の姿がある。二人は同じ空間にいて、お互いを見つめ合っているかのようだが、さつきと等、それぞれの目には一体何が写っているのか、それぞれは何を思い、どこへ向かおうとしているのか、見る者によってさまざまな捉え方ができるビジュアルとなっている。「ひとつのキャラバンが終わり、また次が始まる。」と綴られたコピーは、原作の小説でも非常に印象深く刻まれている、主人公・さつきの台詞である。「キャラバン」という、一見聞きなれないが心の奥深くに残るその言葉からは、原作者・吉本ばななの作品が内包する、現実と妄想の狭間のような独特の世界観が浮かび上がり、それは映像となった本作でも、まぎれもなく描かれている一つの“メッセージ”であると言える。そのメッセージに込められたものとは一体何なのか、さつきの視線の先には一体何が映し出されているのか。

『ムーンライト・シャドウ』
9月10日(金)全国ロードショー
監督:エドモンド・ヨウ
原作:吉本ばなな「ムーンライト・シャドウ」
脚本:高橋知由
出演:小松菜奈 宮沢氷魚 佐藤緋美 中原ナナ 吉倉あおい 中野誠也 臼田あさ美
配給:SDP エレファントハウス

【ストーリー】 さつき(小松菜奈)と等(宮沢氷魚)は、鈴の音に導かれるように、長い橋の下に広がる河原で出会った。恋に落ち、付き合うまでに時間はかからなかった。等には3つ下の弟・柊(佐藤緋美)がいて、柊にはゆみこ(中原ナナ)という恋人がいた。初めて4人で会ったときから意気投合し、自然と一緒に過ごす時間が増えていく。食事をしたり、ゲームをしたり、ゆみこが気になっているという〈月影現象〉について「もしも現実に月影現象が起きたら、誰に一番会いたいか?」を語りあったり。何気ないけれど穏やかで幸せな日々が過ぎていくなかで、別れは前触れもなくやってきた。等とゆみこが死んだ…。深い哀しみに打ちひしがれるさつきと柊。愛する人を亡くした現実を受け止めきれず、ショックで食べることも忘れ、ひたすら走るさつき。そんなさつきを心配しながら、ゆみこの制服を着て何かを感じようとする柊。それぞれの方法で哀しみと向きあおうとしていた。ある日、2人は不思議な女性・麗(臼田あさ美)と出会い、少しずつ“生きていく”という日常を取りもどしていく。そして、以前みんなで語り合った〈月影現象〉に導かれていく。もう一度、会いたい、会いに来てほしい…。その現象とは、満月の夜の終わりに死者ともう一度会えるかもしれない、という不思議な現象だった…。

©2021 映画『ムーンライト・シャドウ』製作委員会