渡邉高章監督がインディーズ映画ならではの自由な視点で“夫婦”の姿にスポットを当てたドラマ『土手と夫婦と幽霊』予告編

第10回日本芸術センター主催映像グランプリでグランプリ、湖畔の映画祭2019で主演俳優賞(星能豊)を受賞した渡邉高章監督作『土手と夫婦と幽霊』が、8月6日より公開される。このほど、予告編がお披露目となり、併せて、各界著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。

子どもの目線で日常を追ったモキュメンタリー『サヨナラ、いっさい』、『ボクのワンダー』、「保活」という社会問題を通して核家族を見つめた『ElephantSong -A Tokyo Couple Story-』、令和元年の記憶である『川を見に来た』や、都会に暮らす人々の“別れ”を正面から見つめた『そんな別れ。』、『別れるということ』で、監督・渡邉高章はインディーズ映画ならでは自由な視点で普遍的なテーマを描き続けてきた。本作では、男女の一つの最終形として、“夫婦”の姿にスポットを当てている。夫婦とは?その単純な問いかけは、映画をラブストーリーにも、ホラーにも、サスペンスにもする。

小説家の私は、葬式の帰りに「高橋」に誘われて、土手沿いに住む「女」の元に行く。「私」は目覚めると、帰る場所もわからず、「女」の家に居座ることになる。思い出せない記憶、不味い食事、ぬるい風呂…輝きを失ったこの世界にはルールがあった。

主演は、インディーズ映画に愛されてきた星能豊とカイマミ。そして、これまでも渡邉高章監督作品において重要な役割を果たしてきた舟見和利、小林美萌、狗丸トモヒロ、佐藤勇真、由利尚子、松井美帆が脇を固める。音楽は、映像や舞台のみならず「ドラゴンボール改」などTVアニメにも楽曲提供をする音楽家の押谷沙樹が手掛ける。

本作は、国内では第10回日本芸術センター主催映像グランプリでグランプリ、湖畔の映画祭2019で主演俳優賞(星能豊)を受賞。その後、アメリカ、ロシア、イギリス、ルーマニア、フィリピンなど海外映画祭を巡業するように上映され、受賞を重ねて劇場公開が決定した。

■佐藤勇真(髙橋役) コメント
原作、そして脚本を読んだ時、私が演じた「高橋」は、登場人物の中でも最も孤立した存在だと思いました。よって、他のキャラクターと絡む時は、客観的な違和感が強めに出ればと思って演じたのを覚えています。「こいつ何者なの?」と思わすことで、他人と居る時と一人で居る時の違いが出せたらと思いました。本作では、普通であることが「普通」ではないような気がします。そもそも「普通」とはなんなのか。本作に描かれた世界は、どこか逆転した世界のようにも見えてきます。登場人物たちのある種不気味な、噛み合わない関係性、そしてモノローグ。そこにある『私』の感情は、一つの見どころになっています。ぜひ劇場で御覧ください。

■小林美萌(髪の短い女役) コメント
私の頂いた役は、「髪の短い女」という役名で、私の中ではとても強いインパクトがあり、襟足を刈り上げて、どのキャストよりも短くありますようにと祈りつつ撮影に臨みました。監督は全くそこは重要事項ではなかったと思いますが。私の一番のお気に入りは食卓シーンです。いろんな映画に食卓シーンは数多く出てきますが、一風変わっており、何度出てきても新鮮で、毎回楽しめます。モノクロの世界が、当たり前から一歩踏み出してこそ見える景色となり、音、温度、匂い、感触、味、映画館に座っていながら、頭の先から爪先まであらゆる感覚が研ぎ澄まされる。まるで別世界に連れて行かれるようなそんな感覚にとらわれます。自然の美しさが格別なのです。世界中の様々な文化の違う方々が、渡邉監督の頭の中を覗き見て、心をひゅっとすくわれる、くるっとひっくり返される、そんな不思議が詰まっています。今動物として生を受けたからこそ抱ける感情、感覚、そんな特別を存分に味わってください。今ある愛を、そしてこれからもずっと続く愛を、皆さんが大切に守ってゆけますように。

▼著名人 絶賛コメント

■村井敬(公益財団法人 日本芸術協会 代表理事)
『土手と夫婦と幽霊』の魅力、よく練られた筋書きである。鑑賞して直ぐに浮かんだのが三大倒叙推理小説のひとつ「伯母殺人事件」。多くの手がかりを観衆の目に残しながら、最後のシーンで種明かしをする知的ゲームのような流れ。日常と非日常との境目はどこにあるのか、いや、魂が不滅なら生と死の境は朧げとなるはず。平凡に見えるシーンが繋がると非凡な効果を発揮する。観終わると多くの人が「やられた」と実感する凝った映画である。

■今関あきよし(映画監督)
『土手と夫婦と幽霊』この映画は「映画」そのものなのだ。渡邉高章監督の作品は2016年に開催された第3回日本セルビア映画祭で、『サヨナラ、いっさい』という個性的な8分ほどの作品を観させていただいた。その個性溢れるアイディアが短い時間に濃縮されていて今も印象に残っている。今回の作品は長編でモノクロで、生と死を行き来する世界を何故かとても「日常的」に描いている。そこがこの映画の魅力だ。『サヨナラ、いっさい』にも共通した《日常を不思議な世界にしてしまう渡邉監督の力技》が、この『土手と夫婦と幽霊』でも最大限発揮されている。映画という世界も日常と非日常の狭間に存在する不思議な世界。そう、多分、この映画は「映画」そのものなのだ。

■小中和哉(映画監督)
ミステリアスでどこか懐かしい映画的迷宮に身をゆだね、心ざわつかせて観ました。生者と死者の境界を乗り越える世界観が素敵です。

■本庄亮(演出家 劇団アンゲルス)
土手とは不思議な場所である。ある時気付くと土手に佇んでいたという記憶がある。その時の気持ちをはっきりと思い出すことはできない。水の流れ、風に揺れる草木、人声の断片が耳をかすめる…影を背負って何処へ歩いていくのか。流れ込んできたものに身をまかせるような、自分の人生がこの瞬間止まってしまったような感覚。いつだったか?どこだったか?佇む影はわたしなのか?もしかしたら映画や小説のワンシーンであったかもしれない。私の時間と記憶の繋がりを飛び越え、浮かび上がってきた感覚は、しばらくの間わたしから離れてまるで幽霊のように辺りを漂い、何事もなかったように戻ってくる。河は流れて、日常という人生は今日も当たり前にやって来るのだ。コロナ渦で当たり前の日常が劇的に変化し、図らずも止まってしまった人生。『土手と夫婦と幽霊』は不意に止まってしまった時間と記憶から人生の再生を予感させる不思議な魅力が詰まっている。

『土手と夫婦と幽霊』
8月6日(金)より、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
監督・脚本・撮影・録音・編集:渡邉高章
原作:日下部征雄「土手と夫婦と幽霊」
出演:星能豊 カイマミ 佐藤勇真 小林美萌 由利尚子 舟見和利 狗丸トモヒロ 中嶋定治 松井美帆 渡邉帆貴
配給:アルミード

【ストーリー】 小説家の私(星能豊)は、葬式の帰りに「高橋(佐藤勇真)」に誘われて、土手沿いに住む「女(カイマミ)」の元に行く。「私」は目覚めると、帰る場所もわからず、「女」の家に居座ることになる。思い出せない記憶、不味い食事、ぬるい風呂…輝きを失ったこの世界にはルールがあった。

©2021 zampanotheater