オラフ・ステープルドンによる伝説のSF小説を、『博士と彼女のセオリー』『メッセージ』などの天才作曲家ヨハン・ヨハンソンが映画化し、彼の初長編監督作にして遺作となった『Last and First Men(原題)』が、邦題『最後にして最初の人類』として7月23日より公開されることが決定した。併せて、予告編とティザービジュアルがお披露目となった。
アイスランド出身のヨハン・ヨハンソン(1969〜2018)は、クラシックと電子音を融合させた音楽スタイルで知られ、映画をはじめ舞台・コンテンポラリーダンスなど幅広いジャンルで活躍した作曲家。中でも映画音楽での活躍はめざましく、アカデミー賞主演男優賞に輝いたジェームズ・マーシュ監督作『博士と彼女のセオリー』でゴールデングローブ賞作曲賞を受賞すると、大ヒットしたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『メッセージ』でも同賞にノミネート。一夜にして世界的な注目を集めるようになった。しかし、キャリア絶頂期にあった2018年2月9日にわずか48歳で急死。早すぎる逝去に、シガー・ロス、マックス・リヒターなど世界中のアーティストたちが数多くの追悼コメントを寄せた。生前に親交のあった音楽家の坂本龍一も「これから何度も共に音楽を作ることになるだろうと思っていました。そんな彼が何も言わずに突然去ってしまい、ぼくを含めて残された者はただ呆然としています」と追悼文を寄せた。
『最後にして最初の人類』は、もともとシネマ・コンサートの形式で生上演されていたものがベースとなっている。ヨハンソンが監督した16mmフィルムの映像をスクリーンに投影し、女優のティルダ・スウィントンが朗読を加え、ヨハンソンによるスコアをオーケストラが生演奏するというスタイルだ。これをヨハンソンが亡くなった後、16mmフィルムの撮影監督を務めたシュトゥルラ・ブラント・グロヴレンを中心とした参加スタッフが、1本の⻑編映画として構成。ヨハンソンが目指したアーティスティックなビジョンを損なうことのないよう、2017年7月に行われた英国・マンチェスターでの初演を再現するべく努めた。そして、ついにヨハンソンの死後2年を経て、ヨハンソンの“最後にして最初の⻑編監督作品”は映画として蘇り、2020年2月のベルリン国際映画祭でワールドプレミア上映された。
原作は、英国の哲学者で作家オラフ・ステープルドンの「最後にして最初の人類」。20世紀を代表するSF作家の一人、「2001年宇宙の旅」のアーサー・C・クラークにも大きな影響を与えたといわれるSF小説の金字塔である。20億年先の未来に生きる人類第18世代のひとりが、20世紀に生きる第1世代の私たちにテレパシーで語りかけてくる内容は、期せずしてヨハンソンの出世作である『メッセージ』の世界観とも響き合うものとなっている。
ティザービジュアルで真っ先に目を惹かれる、巨大で奇怪なデザインの石碑は、旧ユーゴスラビアに点在する「スポメニック」と呼ばれる巨大な戦争記念碑。第二次世界大戦の対ドイツ戦で犠牲となった人々を追悼し、社会主義の勝利をアピールすべく建設された数々のモニュメントは現在、まるで放棄された未来の夢のような姿を晒し続けており、美しくも謎めいた想像力をかきたて、スウィントンのナレーションとともに、観客を時空を超えた時間旅行へと誘う。
『最後にして最初の人類』
7月23日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテにて全国順次公開
監督・プロデューサー・音楽:ヨハン・ヨハンソン
原作:オラフ・ステープルドン「最後にして最初の人類」
ナレーション:ティルダ・スウィントン
配給:シンカ
©2020ZikZak Filmworks / Johann Johannsson