松任谷由実「『春よ、来い』を超える歌…。大変難しいお題でした」『みをつくし料理帖』の主題歌制作を振り返る!

累計400万部を超える髙田郁による時代小説を、数々の名作を世に送り出してきた角川春樹が生涯最後の監督作として、松本穂香主演で映画化する『みをつくし料理帖』が、10月16日より公開される。このほど、10月12日に有楽町朝日ホールにて公開記念スペシャルイベントが行われ、主題歌の作詞・作曲を担当した松任谷由実と角川春樹監督が登壇、主題歌を歌う手嶌葵がリモートで登場した。

映画『ねらわれた学園』、『時をかける少女』の主題曲を歌い、『Wの悲劇』では薬師丸ひろ子に呉田軽穂名義で主題歌「Woman“Wの悲劇”」を提供するなど角川映画とはゆかりの深い松任谷。今回は手嶌葵に主題曲「散りてなお」を提供している。

松任谷は角川監督との初タッグとなった『ねらわれた学園』での主題歌オファーを「大仕事が舞い込んだなと思った」と振り返り、「薬師丸ひろ子さんは目力もあってパワーがある印象で、すぐに曲ができそうな気がした」と明かした。松任谷の歌う主題曲「守ってあげたい」は大ヒットとなったが、「1976年に松任谷由実になって商業的に低迷していた時期。それが『守ってあげたい』で再ブレイク。再ブレイクは本当にエネルギーのいることですが、角川さんが声をかけてくれたからこそ。今があるのもその時のおかげです」と感謝していた。

今回の楽曲制作オファーについて、松任谷は「角川さんから『春よ、来い』を超える歌を作ってくれと…。大変難しいお題でした。作品全体の世界観を5分間にギュッと凝縮して、聴いたことがあるけれどまだどこにもないメロディを意識。それができたと思うし、必ずや沢山の人に聴いてもらってカバーをしてもらいたい。私自身も早々とセルフカバーをしています」と会心の作になったことを明かした。そして角川監督には「この曲で泣かせます!」と宣言をしたといい、角川監督は「泣きました!これまでのユーミンの曲とは違う、異質な楽曲。歌詞も古典的。それに驚いた」と名曲誕生を確信していた。

イベント後半には、楽曲を歌う手嶌葵が福岡からリモート参加。楽曲の感想を聞かれた手嶌は「懐かしい感じがして、小さい時の思い出が蘇った」と回答。すると松任谷は「それを届けたくて作りました。手嶌さんの優しい歌声が名もなき川の景色を連れてきてくれた。草が音をたてるような懐かしい感じを手嶌さんの歌声から感じました」と嬉しそうだった。

手嶌葵の歌声が夢の中に現れたことから手嶌を抜擢したという角川監督。松任谷が「手嶌葵さんのお名前が挙がったときは、モチベーションが上がりました。歌ってほしいと思っていましたから」と思いを伝えると、あまりの言葉に手嶌は顔を覆って「嬉しい」と感激していた。

最後に、松任谷は「角川さんは歴史上の人物だと、今になって改めてひしひしと感じました」と対談を喜ぶと、角川監督も「初めて会った20代中盤頃のユーミンの姿が思い出されました」と懐かしそうに目を細めていた。

『みをつくし料理帖』
10月16日(金) 全国公開
監督・製作・脚本:角川春樹
原作:髙田郁「みをつくし料理帖」
脚本:江良至 松井香奈
料理監修:服部幸應
音楽:松任谷正隆
主題歌:手嶌葵「散りてなお」(作詞・作曲/松任谷由実 編曲/松任谷正隆)
出演:松本穂香 奈緒 若村麻由美 浅野温子 窪塚洋介 小関裕太 藤井隆 野村宏伸 衛藤美彩 渡辺典子 村上淳 永島敏行 松山ケンイチ 反町隆史 榎木孝明 鹿賀丈史 薬師丸ひろ子 石坂浩二 中村獅童
配給:東映

【ストーリー】 時は、享和二年。大坂。8歳の澪(松本穂香)と野江(奈緒)は、暮らし向きが違えども仲の良い幼馴染だった。「何があってもずっと一緒や」と約束を交わす二人だったが、その約束の夜から大坂に大洪水が襲う。それから時は流れ、江戸の神田にある蕎麦処「つる家」に、女料理人として働く澪の姿があった。あの大洪水で両親を亡くし、野江とも離れ離れになってしまった澪は、「つる家」の店主・種市に助けられたのだった。種市に天性の料理の才を見出され、女でありながら料理人として働いていた。しかし江戸の味に馴染めず試行錯誤の日々を過ごしたのだが、やがて「つる屋」の看板料理を見出していく。たちまち江戸でも評判になっていく店にある日、吉原の扇屋で料理番をしている又次(中村獅童)という強面の男がやってきた。吉原で頂点を極めるあさひ太夫のために澪の看板料理を作ってくれと頼むのだった。そして、この日を境に運命の歯車が動き出す。果たして、澪と野江は再会を果たせるのか?幾度となく訪れる艱難辛苦を乗り越えながら、料理に真摯に向き合い、運命を切り開いていく女料理人の成長と、不変の友情を描いた爽快な物語。

© 2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会