井浦新「河瀨直美監督のもとでは、しっかり役積みの時間をいただける」、永作博美「どのシーンにも役積みがあった」

第13回本屋大賞にて第5位に選出され、17万部を超えるベストセラーとなった辻村深月による長編小説を、『あん』、『光』の河瀨直美監督が映画化する『朝が来る』が、10月23日より公開される。このほど、10月6日にザ・プリンス パークタワー東京にて完成報告会見が行われ、キャストの永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、佐藤令旺、そして河瀨直美監督が登壇した。

暗転した会場に、予告編が上映された後、拍手に包まれる中、永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、河瀨直美監督が登壇。最初に、『あん』に続いての原作小説の映画化ということで、原作の惹かれた点について河瀨監督は「感動しない小説は映画化しません。とても感動しました。その行間から溢れる新しい命の讃歌。その光に到達できるような映画にしたいと思って、辻村深月さんのもとに向かいました」と回顧。また、本作の手応えについては「最近よく耳にするのは、“河瀨映画の中で、一番のエンターテイメント作品”という感想です。最後の最後まで、決して見飽きることがない映画だと思います」と自信を覗かせた。さらに、自身も養女でありながら、原作を読むまでは特別養子縁組という制度を知らなかったという河瀨監督は、「戸籍上、実子として迎えられること。真実告知をすることを明らかにしているので、素晴らしい制度だと思うし、その制度によって、救われる命があるとも思った」と語った。

本作で大切にした事について、永作は「佐都子が初めての人生の岐路に出くわして、どう乗り越えていこうと考えるか?というのをよく考えた。そういった、小さなことを逃さないようにすることを大切にしていました」と口にし、井浦も「河瀨監督のもとでは、クランクインの数ヶ月前から、特別養子縁組や無精子症についてなどを、しっかりと学んでいく“役積み”の時間をいただける。そして、河瀬組は完全なる順取りで、1シーンを積み重ねながら、目の前で起きていることに素直に心を動かしていくという事を大切にしていった」と永作同様に河瀨組の“役積み”の経緯を大切にしたと明かした。役積みについて、蒔田は「劇中の家族と3週間ぐらい、実際に一緒に住んだ。一緒に洗濯したり、先にお風呂に入って怒られたり、そんな生活が映画の中で生きた」と振り返った。さらに、永作は「二人で温泉に行くシーンがあって、前のシーンが押して温泉につくのが遅くなった。ご飯やお風呂に入っている間、スタッフはどこにもいないし、撮影もしていない。これは泊まらせるための罠か?と疑心暗鬼になるぐらい、どのシーンにも役積みがあった」と振り返った。

浅田の起用を“樹木希林さんからの啓示“と河瀨監督が話したことに対し、浅田は「希林さんが枕元で『美代ちゅわ〜ん(モノマネしながら)』って河瀨さんに言ってくれたのかなというタイミングだった。だからこそ裏切っちゃいけないな、ちゃんとしないといけないなという思いが強かった」と回答した。

そして、特別養子縁組によって迎え入れられる男の子・朝斗役を演じた佐藤が花かごを持って登壇。『朝が来る』の英語タイトル『True Mothers』にちなみ、母の日にプレゼントするカーネーションを登壇者それぞれに渡した。白いカーネーションの花言葉は「純粋な愛」。まさに朝斗に向けられる、佐都子(永作博美)や清和(井浦新)、ひかり(蒔田彩珠)に浅見(浅田美代子)の心情を語っている。さらに、佐藤から「朝が来る、世界25ヶ国公開決定!」とフランス、スペイン、北欧、ブラジル、中国、韓国など、すでに25の国と地域での公開が決定していることが発表された。

最後に、河瀨監督は「(長引くコロナ禍の今)映画によってネガティブな感情をポジティブに変えていけたら、本当に素晴らしいことだと思っています。最後に結んでくれるのは、観客の皆様です。早く劇場で、みなさんに会いたいです」とメッセージを送り、本イベントは幕を閉じた。

『朝が来る』
10月23日(金) 全国公開
監督・脚本:河瀨直美
原作:辻村深月「朝が来る」
共同脚本:髙橋泉
主題歌:C&K「アサトヒカリ」
出演:永作博美 井浦新 蒔田彩珠 浅田美代子 佐藤令旺 田中偉登 中島ひろ子 平原テツ 駒井蓮 山下リオ 森田想 堀内正美 山本浩司 三浦誠己 池津祥子 若葉竜也 青木崇高 利重剛
配給:キノフィルムズ 木下グループ

【ストーリー】 一度は子どもを持つことを諦めた栗原清和(井浦新)と佐都子(永作博美)の夫婦は「特別養子縁組」というシステムを知り、男の子を迎え入れる。それから6年、夫婦は朝斗と名付けた息子の成長を見守る幸せな日々を送っていた。ところが突然、朝斗の産みの母親“片倉ひかり”を名乗る女性から、「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」という電話がかかってくる。当時14歳だったひかり(蒔田彩珠)とは一度だけ会ったが、生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心優しい少女だった。渦巻く疑問の中、訪ねて来た若い女には、あの日のひかりの面影は微塵もなかった。いったい、彼女は何者なのか、何が目的なのか…?

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