中村倫也「公園をいっぱい作って…フォークギター片手にジョン・レノンを歌いたい!」町長になって好きな町を作るとしたら?

河瀨直美監督が審査員長を務めた第1回木下グループ新人監督賞で、241本の中から準グランプリに選出された、中村倫也主演のミステリー『人数の町』が、9月4日に公開初日を迎えた。このほど、9月5日にキノフィルムズ試写室にて公開記念リモート舞台挨拶が行われ、キャストの中村倫也、石橋静河、吉田萌果、そして荒木伸二監督が登壇した。

冒頭、中村は「これは、上映前?上映後の挨拶?上映後なんですって」と舞台挨拶が本編鑑賞後の観客に向けてなのかどうかを確認してから、「だからといって(内容について)そんなに喋らないと思いますけれど、楽しんでいっていただければと思います」とニッコリし、石橋は「こんにちは。観てくださってありがとうございました。楽しんでいただけたら、嬉しいです」と笑顔で挨拶。荒木監督は「こんにちは。映画、いかがだったでしょうか?」と呼びかけ、「新人の映画監督、荒木と申します。よろしくお願いいたします」とお辞儀した。

初めに、印象に残っている撮影シーンについて尋ねられた中村は、「印象に残っているシーン…」と少し考え込み、「いろんなことがあったからな。プールのシーンかな。みんな同じ水着を着ているけれど、個性が出るシーン。町での撮影から、プールでの撮影になったので、そういう場所ってなんか気持ちがほぐれますよね。不思議な感覚というか。心地いい(空間だ)けど、芝居で会話をするとギョッとするという、不思議なバランスの空間でした。(芝居を)やっていて楽しいって感じました。そのへんの構成というのは、荒木監督の巧みなところなんですよね。ニクいね、ってなります」と回答。これに対し荒木監督が「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げてお礼を言うと、中村が「そのへん、ニクいねってなりますね」と再び賞賛した。するとさらに荒木監督が「ありがとうございます」とお礼を述べ、この日の舞台挨拶で「ありがとうございます」というフレーズがキーワードになりそうなことを予感させるやりとりを見せた…。

石橋は「どのシーンもすごい不気味で面白かったです。個人的には私が演じた紅子が妹を探す旅を始めるときに、病院に行くシーンが印象に残っています。病院に行くシーンというとても日常の世界なのに、すごく不穏な空気が流れている。そこから、誰を信じていいのか、誰が嘘をついているのかと考えて悩んで行く。おもしろいシーンだったなと思います」とコメント。そして荒木監督はすかさず「ありがとうございます」とこの日の舞台挨拶のキーワードで対応し、笑いを誘った。そんな荒木監督は「12日間、ずっと撮影をしていました。まるで戦争みたいな日々だったので、どのシーンという印象よりも、“ここを撮影したら、次!次!”という感じで、ドンパチやって次行くぞ、その連続でした。なので、“なんか楽しいぞ”という瞬間(を感じる)よりも、戦いのような日々でした。充実していましたが、本当に濃かったですよね〜という印象です」と解説。すると、中村が「ありがとうございます」と笑顔で本舞台挨拶の決め台詞を言った。

次に、『人数の町』のタイトルにちなんで「もし、町長になって好きな町を作るとしたら、どんな町を作りたいか」という質問に、中村は「公園をいっぱい作って、ラベンダーをたくさん植えて…。そこで夜な夜なみんなで踊り明かして。フォークギター片手にジョン・レノンを歌いたいです」と回答。MCからの「ピースな感じですね」というコメントを受けて、「お前らが“イマジン”しろという世界を作りたいです」とジョン・レノンの名曲にちなみ、中村らしい独特の表現で説明した。

石橋は「宇宙飛行士が訓練しているときのような、(人が)浮遊する町を作りたい」と回答。中村が「町全部が無重力空間ってこと?やりたいの?」と尋ねると、石橋は「はい!一日くらいならって思います」と恥ずかしそうに笑った。これに対し中村が「町長だって言ってるのに、一日なの?」とツッコミを入れると、石橋は「一日限定で」と嬉しそうに口にし、「(浮遊空間は)顔がすごい浮腫みそう」と女優らしい心配をしていた。そして、中村は石橋構想の浮遊空間の町には「行かないです」と宣言。その理由として「楽しそうだけど、維持するのにすごいお金がかかりそうだから」と語り、「全面NASAを味方につけるしかないね、そうNASAれ!」とジョークを飛ばして取材陣の笑いを誘った。盛り上がるコメントをした中村に対し、荒木監督から「ありがとうございます」とまたまた決め台詞が飛ぶと、中村もすかさず「ありがとうございます」と口にした。

荒木監督は、「実際にあるかもしれないけど、島ぐらいの小さな町を舞台にしたいです。なんか、絶望的な状況になったりすると(それだけで)町自体が変わっておもしろいと思います」と町作りについて回答し、「例えば、明日一日東京に車はありません。となったら、おもしろいと思いました、ありがとうございます」と本作で“不思議な町”を描いた監督らしい笑顔を浮かべた。続けて「たしか、中国でそんな町があったと思います。突然町の車がなくなる。そんな状態に途中からなったら、おもしろいですよね。人が急にいなくなったりしたら…。(町に)何かを足していくより、引いていくほうがおもしろいと思いました」と解説したあとに、「ヌーディストビーチみたいな町かな」と構想のイメージを明かし、「引くことで人間変わるぞ。というところを見たいです」と解説した。そしてMCからの「いろいろな町ができそうですね」というコメントに荒木監督は「ありがとうございます」とコメント。すると中村が「(ありがとうございますばかりが飛び交う舞台挨拶の)あいつらやべーんじゃないかっていう感じになってませんかね」と心配していた。

ここで、Twitterで募ったファンからの質問に答えるコーナーに。「ルールがわからないものに挑戦するとき、バイブル(説明書)は熟読するタイプなのか、実戦で試していくタイプなのか」という質問に、中村、石橋、荒木監督は声を揃えて「実戦派!」と回答。中村が「こういう仕事をしていると、そういう場面に出くわすことが多いですよね」と説明すると、荒木監督は「それ、ルールだったんだ、って後からわかることも多い」とコメント。中村は「やってみてから考えるみたいなところがありますね」と撮影現場では臨機応変な対応力が求められることを明かした。そして中村が「電化製品とかは説明書読んでますか?」と質問すると、荒木監督は「読まないですね。押して使えなかったらダメなんだって思います」とまさかの告白。これに対し、中村は「見よう!ネットでも見れるから(笑)」とアドバイスする場面もあり、電化製品とかはなんとなく使い方がわかるとしながら、「よりよい機能は読んで試す、深掘りするときは読みます」とコメント。石橋は「やってみればなんとなくわかるなって思っています。もし、使えない機能があっても、自分がほしいって思ってないなら、それは必要ない機能だし」と解説し、これに対し中村と荒木監督は大笑いしていた。

Twitterに寄せられた質問の数について、中村は「7万通来たみたいですよ。その中で選ばれた質問のひとつです」と説明。7万通という数字に報道陣から「お〜」という驚きの声が上がると、中村は「って石橋さんが言ってました」とおどけた表情を見せていた。

ここでMCから「監督に内緒でサプライズゲストがいらっしゃっています」というアナウンスが。中村が「初恋の人かな?」といたずらっぽくコメントすると、子役の吉田萌果が花束を持って登場し、「お花です」と監督に手渡した。中村は「萌果、ちゃんとマスクしてきたんだね」とニッコリ。石橋も「大きくなったね」とかわいいサプライズに優しい笑顔を浮かべていた。挨拶のためにマスクを外し、マスクケースに入れる吉田。中村はしゃがんでその目線を合わせその様子を見つめた。そして、吉田が「こんにちは。末永モモ役の吉田萌果です。5歳です。好きな色は桃色です。よろしくお願いいたします」と挨拶すると、中村が声真似をして「将来はお金持ちになります」とコメント。これに対して監督は「映画に出資してね」と口にした。

花束の理由について、吉田は「モスクワ、バンクーバー、おめでとうございます」と監督へ伝えると、ここで、モスクワ国際映画祭、バンクーバー国際映画祭への正式招待作品として選出されたことが発表され、会場は拍手に包まれた。荒木監督は、「カナダとロシア、行きたいです。バンクーバーとモスクワ行きたいです。パスポート取りに行かないと」とソワソワ。中村は「(気になるところ)そこですか?」と笑顔でツッコミを入れていた。目で会話をする中村と吉田の様子を見たMCは、吉田に「ほんとは(花束を)どっちに渡したかったの?」と質問すると、吉田はしばらく考え、「石橋静河さんです」と回答。これには石橋も「胸を射抜かれました。ありがとう!」とこの日一番の笑顔を見せつつ、「でも、中村さんがすごく好きなんだよね」と吉田に語りかけた。すると中村が「春に、萌果のお兄ちゃんと仕事したんです。家族ぐるみの付き合いになるので、多分、来年の今頃は庭でバーベキューするくらいに(仲良く)なっていると思います。バーベキューのときには家からトング持っていくね」とコメント。花束がもらえなかったことに対しては「僕の初恋は今、やぶれました。やさぐれようと思います」と残念そうな様子を見せつつも、豚のモノマネをして吉田を笑わせていた。

最後に、石橋は「今日は本当にありがとうございました。監督が今まで生きてきて、考えて来たことがそのまま作品になっているのだと思います。そんな嘘がない作品に出れることがうれしいです。映画はそうあるべきだと思うので、そういう作品に参加できてうれしいし、観た人にも、これから観る人もそんなところを楽しんでほしいと思います」、中村は「本日はありがとうございます。いろいろな作品に関わらせてもらって、(自分が感じたことなどを)考えてコメントする場面もたくさんあります。でも、この作品は、それぞれの反応、感じること、記憶に残るポイント、家に帰って思い出すポイントが違ってくる作品です。この映画を観ることは、お金と時間を払っていただいて、ゲットした自由だと思うので、何度か思い返しながら、楽しんでいただければと思います。ん?萌果が僕を見て笑っています。バカにされているのかな?うふふふふ。萌果もなんか言う?え?無視ですね。ありがとうございます」と吉田との可愛いやりとりを見せながら挨拶し、本イベントは幕を閉じた。

『人数の町』
9月4日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー中
監督・脚本:荒木伸二
音楽:渡邊琢磨
出演:中村倫也 石橋静河 立花恵理 橋野純平 植村宏司 菅野莉央 松浦祐也 草野イニ 川村紗也 柳英里紗 山中聡
配給:キノフィルムズ

【ストーリー】 借金取りに追われ暴行を受けていた蒼山(中村倫也)は、黄色いツナギを着たヒゲ面の男に助けられる。その男は蒼山に「居場所」を用意してやるという。蒼山のことを“デュード”と呼ぶその男に誘われ辿り着いた先は、ある奇妙な「町」だった。

©︎2020「人数の町」製作委員会