松田龍平、綾野剛に「屍の上に立ってんだよ俺たち」『影裏』江口洋介、瀬々敬久監督ら著名人絶賛コメント&ロング予告編

2017年文學界新人賞に輝き、同年第157回芥川賞を受賞した沼田真佑の傑作小説を、綾野剛主演、松田龍平共演で、大友啓史監督が映画化する『影裏』が、2月14日より公開される。このほど、3分10秒のロング予告編がお披露目となり、併せて、各界著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。

本作は、失踪した親友の足跡を追いその真実に迫り、自身の心に思いを巡らすヒューマンミステリー。

ロング予告編では、主人公の今野(綾野剛)が会社の転勤をきっかけに全てを捨てるように移り住んだ岩手・盛岡で同じ年の同僚・日浅(松田龍平)と出会い、慣れない地でただ一人、日浅に心を許していく様子、そして突然の日浅の失踪とともに見えてくる日浅の裏の顔が描かれる。二人は酒を酌み交わしたり、釣りに出かけたりと遅れてやってきた青春のような幸せな日々を送るが、その日々の中には後に見えてくる日浅の裏の顔を思わせるシーンも。ある日、夜釣りに出かけた今野と日浅は些細な事で雰囲気が悪くなり、流木の焚火に照らされた日浅は「知った気になるな。お前が見ているのはほんの一瞬光が当たった所だってこと。人を見るときはその裏っかわ。影の一番濃い所を見るんだよ」と意味深な言葉を投げかける。そして、その日が彼を見た最後の日に。さらに、あることで父親に縁を切られていたこと、同僚にお金を借りていたことなど、消えた日浅の行方を追うほどに、これまで見てきた彼とは全く違う顔を知る今野。失ってから初めて知る、分かりあえていたと思っていた親友の“本当”。彼の真実は何を照らすのか…?

▼著名人 絶賛コメント

 
■石川慶(映画監督)
役者たちは、この映画の中にただ静かに在る。思い起こしてみても、僕はずっと彼ら自身というよりも、彼らの影をじっと見ていたように感じる。真っ黒な影のその奥を、そうやっていつまでも覗き込んでいると、ふいに生々しい“真実”が顔を出す。映画がなすべき仕事だ、と強く思った。

■宇野常寛(コラムニスト)
それが愛おしいのは美しいからだけではない。人が人に、人が土地に魅せられるときに蠢くものについて、この映画は残酷なくらい克明に写し出してしまっている。

■江口洋介(俳優)
『るろうに剣心』の撮影中、『影裏』の撮影を終えた大友監督が、地方は孤立する。という言葉を何度も口にしていたのを覚えている。盛岡は監督が生まれ、育った場所だ。光の当たらない人間の影に強く踏み込んだ、見応えのある作品だ。

■今日マチ子(漫画家)
水流に飲み込まれて、顔を出し、また大きなうねりの中に入っていく。外から見ている人間にはそれがたまらなくもどかしい。観た後に頭の中に浮かんできたのは、昔の友人。「あの人、どうなった?」

■小橋賢児(クリエイター)
淡々と進んでいく物語の中で、まるで蝋燭の火であぶり出した絵のようにじわじわと物語の形が見えてくる。言葉、時間、性、光、影。一見シンプルに見えるストーリーが逆に観る側を能動的にし、自分の日常にもおきえる小さな一つ一つの出来事をヒントと思えるような感覚に誘う、観れば観るほど深くなる作品だと思った。

■瀬々敬久(映画監督)
人間が立ち向かえない自然という怪物。人はずっと昔からそこを経験してきたし、これからも抗い続ける。実は3.11以降も以前もない。そして人も謎であるということ。この映画が指し示してくれたことは途轍もなく大きい。破壊の跡からは、小さな芽が生まれ、育つ。この映画には生きていくことが充満している。

■髙森玲子(作家)
人の弱さや狡さに溢れたこの世界を見つめる、大友監督のまなざしはやさしい。そのやさしさに触れたくて、作品が封切られるたび足を運ぶ。今作『影裏』では、心の底に細い釣り糸をたらして下りてゆくような、これまでにない不思議な感覚を味わった。盛岡という土地に宿る強烈な引力と、独特の陰影の描き方は秀逸。ラストシーンでは、ふいに向こう側の世界に出たようなカタルシスが訪れる。やさしさが、静かに満ちてくる。

■鳥越俊太郎(ジャーナリスト)
先ずは告白しなければならないが、カメラで切り取られた映画の舞台、盛岡の自然の美しさだ。緑したたる森の木々、清らかな川の流れ。そこをバックに二人の男性の不思議な関係が描かれていく。失踪して初めて親友の影と裏に向き合う事になる主人公の心の揺らめき。深い感動を残す実に繊細な映画だ。

■福田萌(タレント)
「私は生きている!」そう強く思わせてくれる作品。長くて寒い冬を、夏の鮮やかだけど儚げなさんさ踊りを、光がキラキラと当たる緑や川の美しさや吹いてくる風を、肌で感じに、また岩手に帰りたくなりました。

■真山仁(小説家)
深く心を寄せる人を、自分の思い込みと期待で塗り固めてしまう…。それは、誰しもが陥る罠であり、孤独の証だ。美しい岩手の風景の中で、誰もが隠したい“醜い素顔”が現れた時、絆の真理が見えてくる。

■三田紀房(漫画家)
すべてが儚く、切なく、哀しい。虚構と現実の間で生きる二人の男の悲しい出会いと別れを岩手の自然を背景に、精細な色彩で見事に表現されている。静かだが心の奥底に染みて広がる最高のミステリー作品である。

『影裏』
2月14日(金) 全国ロードショー
監督:大友啓史
原作:沼田真佑「影裏」
脚本:澤井香織
音楽:大友良英
出演:綾野剛 筒井真理子 中村倫也 平埜生成 國村隼 永島暎子 安田顕 松田龍平
配給:ソニー・ミュージックエンタテインメント

【ストーリー】 今野(綾野剛)は、転勤で移り住んだ岩手で日浅(松田龍平)に出会う。慣れない地でただ一人心を許せる存在の日浅だったが、ある日、突然姿を消してしまう。日浅を探し始めた今野は、彼の父に捜索願を出すことを頼むが、何故か断られてしまう。そして見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う別の顔。ともに時を過ごしたあの男の“本当”とは?

Ⓒ2020「影裏」製作委員会