諏訪敦彦監督が岩手県大槌町にある天国につながるといわれる“風の電話”をモチーフに描いた『風の電話』が1月24日より公開中、そして今関あきよし監督が台湾を舞台に描いたヒューマンドラマ『恋恋豆花』が2月22日より公開される。それに先立ち、1月23日にSpace&Cafeポレポレ坐にて、諏訪監督と今関監督による、両作品の主演を務めるモトーラ世理奈の魅力を中心に映画作りの世界を語り合うトークイベント~なぜクリエーターはモトーラ世理奈を欲しがるのか~が行われ、イベント後半には現在公開中の『猫、かえる Cat’s Home』の今尾偲監督、そしてモトーラも登場した。
諏訪敦彦監督と今関あきよし監督によるモトーラ世理奈の魅力を中心に映画作りの世界を語り合うトークイベントには幅広い年代の観客が来場し、両者の映像制作の話題に真剣に耳を傾けていた。
両作品で主演を務めるモトーラ世理奈へ話題が移ると、その魅力を各々の視点から語り合い、彼女の類い稀な存在が強調された。諏訪監督とは同世代でありながら、深い接点はなかったと語る今関監督だったが、『風の電話』に関して「本当に衝撃を受けた。彼女の初期の代表作になりうるだろう」と大絶賛。諏訪監督はオーディションの際には「モトーラさんでほぼ決まっていた」と語る。トークショー後半では現場に駆けつけたモトーラも参加し、撮影時の心境を語った。
『風の電話』でのモトーラを諏訪監督は「相手を感じてちゃんと芝居をすることができる人は、なかなかいない。すごく余裕があるというか、自分自身をオープンにできる。観てる人がいろいろ考え、感じてしまう、自由を観る人に与えてくれるところが素晴らしい」と評価。一方『恋恋豆花』に関しては、モトーラ自身が「(自分が)こんなにいろんな表情をしているんだって思った」と感想をこぼすほど、素の自分に近い状態だったことが明かされた。『風の電話』とは正反対のキャラクターを演じていることに今関監督は「多才だし恵まれている。場所を吸収する役者。撮影の場に置くことで既に何かが始まってる」と個性を熱弁した。
トークの途中では、現在公開中の映画『猫、かえる Cat’s Home』の今尾偲監督も飛び入りで参加、主演3作品の監督とモトーラが肩を並べる場面もあった。モトーラは、映画『風の電話』で、実際の“風の電話”に行った時のエピソードとして、「撮影で行ったのですが、その時は自分が自分でないように感じた」と撮影時を振り返った。そして、今関監督は「3人の監督のうち誰が一番好き?」と聞き、「なんでそんなこと聞くんですか?」と赤面して戸惑うモトーラに諏訪監督が「自分の映画に出た俳優には、自分の映画が一番だと思って欲しいんですよ」と合いの手を入れ、会場は笑いに包まれた。異なる印象の作品でも存在感を失わないモトーラ世理奈の魅力が存分に語られるイベントとなった。
『風の電話』
1月24日(金)より全国公開中
監督・脚本:諏訪敦彦
脚本:狗飼恭子
音楽:世武裕子
出演:モトーラ世理奈 西島秀俊 西田敏行 三浦友和 渡辺真起子 山本未來 占部房子 池津祥子 石橋けい 篠原篤 別府康子
配給:ブロードメディア・スタジオ
【ストーリー】 17歳の高校生ハル(モトーラ世理奈)は、東日本大震災で家族を失い、広島に住む伯母、広子(渡辺真起子)の家に身を寄せている。心に深い傷を抱えながらも、常に寄り添ってくれる広子のおかげで、日常を過ごすことができたハルだったが、ある日、学校から帰ると広子が部屋で倒れていた。自分の周りの人が全ていなくなる不安に駆られたハルは、あの日以来、一度も帰っていない故郷の大槌町へ向かう。広島から岩手までの長い旅の途中、彼女の目にはどんな景色が映っていくのだろうか。憔悴して道端に倒れていたところを助けてくれた公平(三浦友和)、今も福島に暮らし被災した時の話を聞かせてくれた今田(西田敏行)。様々な人と出会い、食事をふるまわれ、抱きしめられ、「生きろ」と励まされるハル。道中で出会った福島の元原発作業員の森尾(西島秀俊)と共に旅は続いていき…。そして、ハルは導かれるように、故郷にある“風の電話”へと歩みを進める。家族と「もう一度、話したい」その想いを胸に…。
『恋恋豆花』
2月22日(金)より、新宿ケイズシネマほか全国順次公開
監督:今関あきよし
出演:モトーラ世理奈
©2020 映画「風の電話」製作委員会