芥川賞と文藝賞をダブル受賞した若竹千佐子のベストセラー小説を、田中裕子が15年ぶりとなる主演をし、蒼井優が共演する、沖田修一監督作『おらおらでひとりいぐも』が、2020年に公開されることが決定した。
本作は、晩年の“普通”の女性が描かれることで“普通”の人が勇気づけられる、今までありそうでなかった物語。主人公は75歳の“桃子さん”。1964年、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出し、身ひとつで上京してから55年。夫・周造と出会い結婚し主婦となり、二人の子どもを育て、これから夫婦水入らずの平穏な日々を過ごそうと思った矢先、突然夫に先立たれ途方に暮れていた。しかし図書館で借りた本を読みあさるうちに、46億年の歴史に関するノートを作り、万事に問いを立ててその意味を探求するようになる。すると、桃子さんの“心の声”が、ジャズセッションに乗せて内から外に湧き上がってくる。桃子さんの孤独な生活は、現在と過去を行き来し、いつのまにか賑やかな毎日に変わっていく。
原作は、55歳で夫を亡くした後、息子のすすめで小説講座に通い始め、主婦業の傍ら本作を執筆。63歳の新人としてスポットを浴び、史上最年長で第54回文藝賞を受賞、そして第158回芥川賞もダブル受賞した若竹千佐子による50万超えのベストセラー。日本のみならず、韓国、中国といったアジア圏をはじめヨーロッパでも翻訳版の刊行が進む本作は、“賑やかな孤独と圧倒的な自由”という視点から世界的にも大きな共感と注目を集める。桃子さんの人生を「娘の時代」「妻の時代」「祖母の時代」と3つに分けて描いており、シニア世代のみならず、すべての世代の人からも共感とさわやかな感動を呼んでいる。
監督を務めるのは、『南極料理人』をはじめ、『キツツキと雨』、『横道世之介』、『モリのいる場所』など数々の話題作を手掛け、ブルーリボン賞最優秀作品賞(『横道世之介』)をはじめ数々の国内外の映画賞を受賞するなど、名実ともに日本を代表する監督の一人である沖田修一。本作は、原作に惚れ込んだ沖田監督が自身で脚本も執筆した。
「現在」の桃子さん(75歳)を演じるのは、世代を超えて熱烈なファンを持つ田中裕子。NHK連続テレビ小説「おしん」をはじめとして、映画『天城越え』、『男はつらいよ』シリーズ、近年ではドラマ「Mother」、「Woman」、「anone」、『ひとよ』など数々の名作に出演する田中が、令和の時代に『いつか読書する日』以来の15年ぶりとなる主演を務める。また、映画『フラガール』に始まり、『東京家族』、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『宮本から君へ』などの作品で多数の受賞歴をもち、その実力は折り紙付きの蒼井優が、田中と二人一役となり、「娘の時代」「妻の時代」(20~34歳)の桃子さんに扮する。現在の桃子さんが懐かしく、そして愛おしく思っている時代の桃子さんを、田中と心をひとつに演じる。田中と蒼井は今回が初共演となる。
世界的に高齢化が進む中、82歳のアプリ開発者や81歳のDJといった表現者たちが活躍し、年齢に関係なくパワフルに生きる女性たちが増え続ける昨今。世界有数の長寿国である日本では、2020年に日本人女性の二人に一人が50歳以上となり、充実したシニアライフを送る女性も増え続けている。そんな日本のすべての女性たちに、本作は勇気とパワーを届ける。
■沖田修一(監督) コメント
この原作をどうやって映画にするのか、企画をいただいた時、映像化が難しいと思う反面、他にないような不思議な映画になりそうだとも思いました。田中裕子さんとのお仕事は、毎日が刺激的で、緊張もありましたが、桃子さんの、生活の機微のようなものを撮っている時の、あの楽しさを思い返すと、とても素晴らしい時間だったと思います。また、蒼井優さんが、若い桃子さんに丁寧に向かってくださり、監督としては、もう二人の桃子さんを撮りながら、ひたすら感動していたのでした。
■田中裕子(現在の桃子さん役<75歳>) コメント
スタッフの皆さま キャストの皆さま、お疲れ様でした。今回の撮影では、最初図書館に恐竜の図鑑を借りに行って、小学生のコーナーでしたが、その時からなんだかもう小学生のような気分になりました。撮影の中で、図画工作の時間がありました。音楽の時間もありました。体育の創作ダンスの時間もあったし、遠足も行ったし。保健かな?湿布の貼り方っていうのもあったような気がします。遠足ではとてもお天気に恵まれてきれいに澄んだ空気の中、雑木林でどんぐりや松ぼっくり拾ったりしました。あのどんぐりや松ぼっくりも寒い冬をくぐって朽ちていくんだと思いますが、雑木林にはまた春がやってくるんですよね。私も日々朽ちていくのでありますが、この歳になってこの作品に会えて、沖田監督にお会いできて、嬉しいです。監督の撮影中の一喜一憂される姿が目に焼き付いています。私のこれからの日々に監督のあの姿を思い出してニヤニヤできる事が、私にとっての小さな春になりそうです。皆さま、ありがとうございました。
■蒼井優(昭和の桃子役<20歳~34歳>) コメント
「田中裕子さん主演、沖田修一監督作品」という、何があっても映画館で観たい作品に、自分も携わらせていただけたこと、心から嬉しく思います。私は、田中裕子さんが演じられる「現代の桃子さん」の、20代と30代パートで出演し、現代パートでは桃子さんの脳内の声をやらせていただきました。この作品は桃子さんという一人の女性のお話ですが、映画をご覧になられる方、皆さんのお話でもあると思います。桃子さんの今に想いを馳せたり、娘・直美の言動に自分を重ね反省したりしながら撮影を進めていました。一人の人生にスポットをあてた作品でありながら、壮大で奥行きのある、ユーモア溢れた作品になっていると思います。オファーをいただいた時から、早くこの作品を観たくてたまりません。田中裕子さんとご一緒させていただくことも夢でしたので、世界中に自慢したいくらい幸せです。
■若竹千佐子(原作) コメント
「おらおらでひとりいぐも」が映画になるなんて夢のようです。ましてあの田中裕子さんが主役だなんて!!同世代、大好きな女優さんです。桃子さんが大勢の人を介してもう私の手の届かないところに大きく羽ばたこうとしています。作者として何より嬉しいことです。
『おらおらでひとりいぐも』
2020年 公開予定
監督・脚本:沖田修一
原作:若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」
出演:田中裕子 蒼井優
配給:アスミック・エース
【ストーリー】 主人公は、75歳でひとり暮らしをしている“桃子さん”(田中裕子)。1964年、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように故郷を飛び出し、身ひとつで上京してから55年。夫・周造と出会い結婚し主婦となり、二人の子どもを育て、これから夫婦水入らずの平穏な日々を過ごそうと思った矢先、突然夫に先立たれ途方に暮れていた。しかし、ひとり家でお茶をすすり、図書館で借りた本を読みあさるうちに、46億年の歴史に関するノートを作り、万事に問いを立ててその意味を探求するようになる。すると、桃子さんの“心の声”が、ジャズセッションに乗せて内から外に湧き上がってきた。桃子さんの孤独な生活は、現在と過去を行き来し、いつのまにか賑やかな毎日に変わっていく。
© 2020 「おらおらでひとりいぐも」製作委員会