森山未來「カザフ語を一から勉強。ほぼ書かれているセリフを丸覚えするしかなかった」

森山未來と、『アイカ』(原題)で第71回カンヌ国際映画祭最優秀主演女優賞に輝いたサマル・イェスリャーモワがダブル主演を務める、日本とカザフスタンの合作映画『オルジャスの白い馬』が、2020年1月18日より公開される。このほど、本作が10月3日に開幕した第24回釜山国際映画祭のオープニング作品として上映され、レッドカーペットと記者会見に森山未來、サマル・イェスリャーモワ、竹葉リサ監督、エルラン・ヌルムハンベトフ監督らが登壇した。

記者会見には、韓国プレスのみならず海外からのプレスも多く駆け付け、およそ1時間にわたり活発な質疑応答が繰り広げられた。森山は、冒頭に「森山未来と申します。今回釜山映画祭に、この作品で来させてもらえたことは本当に光栄で感謝しています。カザフスタンで過ごした2~3週間、僕にとって本当に宝物のような時間でした。それがこういう形で評価をしていただいて、釜山の皆さまにまず見てもらえるということを嬉しく思います。楽しんでもらえたら光栄です」と挨拶した。

続いて、韓国人記者から、『怒り』で演じた“悪”とは打って変わって反対の役割を演じた今回の役柄について、キャラクター分析や作品への解釈についての質問が投げかけられた森山は、「『怒り』の時は李監督と言葉を交わして役柄の解釈を深めていきました。今回も同様に、エルラン監督とリサ監督とどんどんどんどん会話を交わしながら、カイラートという人がどういう人間なのかを掘り下げていきました。映画の中では時代設定やそれぞれの人物がどういう背景を持っているのか、ほぼ説明はされていません。それによって登場人物それぞれの表情やミニマルな動き、ぽろっとこぼす言葉といったひとつひとつの小さな所作、言葉がすごく鮮明に聞こえるようになっていき、カザフスタンの背景に横たわる力強く温かい大地が、前面に押し出されてくるような映像作品になったと思います」と回答。全編にわたりカザフ語で会話をしていることについては、「本当に全く知らないカザフ語を一から勉強し、ほぼ書かれているセリフを丸覚えするしかありませんでした。だからアドリブも何もできないし、ほぼ身動きの取れない状態でした。でもそのシンプルさとかミニマルな感じが、逆に作品全体を見通しての感覚として、叙事詩というのか何か神話みたいなものを見ていたような感覚になれたんです。それがすごく心地がよかったことを覚えています。だから、僕がカイラートをどう解釈していたかということは、そんなに大した問題ではないんです」と振り返った。

そのほか、エルラン監督は、日本とカザフスタン合作である本作がどちらの国でより良い結果を出せると思うかという質問に対して、「ある特定の観客層を対象にすることは考えていません。全体的な音、動き、全体的な現象が、誰ということに関係なく誰かにとって響くものと信じています」と期待を寄せ、竹葉監督は、森山演じる、愛する人に真実を語ることができない不器用な男カイラートについて、「カザフ語で“カイラット”は“強い男”という意味です。撮影現場では、エルラン達カザフのスタッフが撮影中にいろんなことを思いつきどんどん盛り込んでいく中で、台本は跡形がなくなるほどに変わっていきました。でも、森山さんはそれに対しても、大地と一体になりたいのかしらというくらい、自分の出役が終わった後もずっと自然と対話していたように感じられました。私は、森山さんは日本一の俳優だと思っています」と答えた。

『アイカ』(原題)や本作を通じて国際的な女優へと成長したサマルは、自身の好む演技スタイルについて「演技のスタイルについては、監督の嗜好によって少しずつ変わってきます。自分のスタイルを投影することもありますが、大切なのは、監督が持っているアイデアをどのように表現して実現するかだと思っています」と語った。

▲左からサマル・イェスリャーモワ、エルラン・ヌルムハンベトフ監督、竹葉リサ監督、森山未來

▲左2人目からエルラン・ヌルムハンベトフ監督、キム・ユリア、サマル・イェスリャーモワ、森山未來、竹葉リサ監督

▲左かららエルラン・ヌルムハンベトフ監督、キム・ユリア、サマル・イェスリャーモワ、森山未來

『オルジャスの白い馬』
2020年1月18日(土)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー
監督・脚本:竹葉リサ エルラン・ヌルムハンベトフ
撮影監督:アジズ・ジャンバキエフ
出演:森山未來 サマル・イェスリャーモワ マディ・メナイダロフ ドゥリガ・アクモルダ
配給:エイベックス・ピクチャーズ

【ストーリー】夏の牧草地、草の匂いが混じった乾いた風、馬のいななく声。広大な空に抱かれた草原の小さな家に、少年オルジャスは家族とともに住んでいる。ある日、馬飼いの父親が、市場に行ったきり戻らない。雷鳴が轟く夕刻に警察が母を呼び出す。不穏な空気とともに一家の日常は急展開を迎える。時を同じくして、一人の男が家を訪ねてくる…。

©『オルジャスの白い馬』製作委員会