小説「えん」が第40回すばる文学賞受賞、映像産業振興機構(VIPO)による若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)2015選出など、文学・映像両才能を持ち合わせた新鋭作家ふくだももこの長編初監督作品で、松本穂香主演、板尾創路、浜野謙太共演で贈る映画『おいしい家族』が、9月20日より公開される。このほど、本作が「島ぜんぶでおーきな祭 第11回沖縄国際映画祭」に特別招待作品として上映され、4月19日に舞台挨拶が行われ、キャストの松本穂香、板尾創路、そして、ふくだももこ監督が登壇した。
本作が長編映画初主演となる松本は、完成後初の舞台挨拶に夏らしいオレンジのドレスを着て登場。最初こそ緊張感をにじませていたが、いざトークが始まるとだんだんと笑顔に。本作の出演に対して「脚本を一気に読んでしまって。読んでいてすごくわくわくしました。(脚本を書いた)監督の前で言うの、少し恥ずかしいですが…(笑)、『この役を私が演じられるんだ!』と嬉しくなりました。私が演じた橙花は、本人自身は自分はすごく強いし、頑張ってると思ってるんです。でもはたから見るとその様がちょっと間抜け。それが橙花のかわいいところだなと思っています」とはにかみながらコメント。板尾との共演に関しては「私は大阪出身ということもあり、板尾さんをちいさいころからずっと見てたので緊張してたんですが、いざ撮影が始まると、現場で板尾さんが楽しくふざけている姿を見て、緊張をほぐしてもらったなと思います(笑)」と語った。
続いて、原作となった短編映画『父の結婚』(ふくだももこ監督)でも同じ役どころを演じた板尾は「短編版『父の結婚』に続いて同じキャラクターを演じさせてもらいましたが、短編から長編になるなんてほとんどありえないことなんです。出演者としてすごくうれしく感じるし、続けて出演させてもらって、ぶっちゃけシメシメという感じです(笑)」と笑いを誘った。また、共演者について「松本さんは主演なので緊張もあると思いますよ、背負ってるものも大きいですし。現場は若い俳優さんたちが多くて僕たちは楽しくやらせていただきましたね。この作品にとってはそんな楽し気な雰囲気のなかで撮影するのが良いと思ってたし、ナチュラルにしょうもないことをやってましたね(笑)」と口にした。
次に、ふくだ監督は長編化について「短編は30分しかなかったので主人公のまわりにいる人を掘り下げられなかったので、そこに厚みを持たせて脚本を作りました。当時、朝ドラ『ひよっこ』を見ていて、世界観はかなり影響をされましたね。悪い人がひとりも出てこず、みんなすごく優しくて、こういう物語もあっていいんだと知って、この脚本を書きました」と明かし、「板尾さんに関しては、演出がすごくスムーズでした。全部理解してくれていて。あと実は短編版の舞台挨拶のときに長編にしてほしいって板尾さんが言ってくださったんです。それも今回の長編化に影響したのかもしれません。ありがたいです」と語った。
本作はタイトルにもなっている通り、食事シーンが非常に重要に描かれている。板尾が「この映画見るとね、本当に食べたくなるんですよ」と語る通り、思わずおなかが鳴ってしまいそうになる飯テロ映画だ。撮影中の食事シーンに関して松本は「実は…すねてるシーンが多くて、私だけそんなに食べられなかったんですよ。お酒ばっかり飲んでいて。家族の食卓で出たすき焼きがすごくおいしそうで、みなさんたくさん食べていてすごくうらやましかったです…」と悔しさをにじませた。一方板尾は「僕たちはガツガツ食べて良いシーンが多くて、確かにひとりだけ食べれなくてかわいそうでしたね(笑)。あのすき焼きは本当においしかったから!なんテイクもいきたいぐらいでしたが、スタッフさんに肉は限りがありますからと言われました(笑)」と釘を刺されたエピソードを語った。しかし、松本も撮影が行われた新島ではおいしいものを食べたそうで「板尾さんと浜野(謙太)さんが差し入れてくれた伊勢海老がすごくおいしかったです」と泊まり込みで行われた撮影を思い出していた。また、ふくだ監督は「お芝居しながら食べるってすごく大変なんだすよ。セリフも食べる動きもあるので。でも今回は細かい指示ださなかったのにみなさんすごくうまい具合にやって頂いて助かりました」とキャストの演技を称賛した。
重ねて、沖縄で食べたいものについて、松本は「サーターアンダギーが食べたいです」、ふくだ監督は「うみぶどうが好きですね!」とコメント。そして板尾は「毎年来ているんですが、紅いもが好きなんですよ。沖縄ではスーパーで売ってるんです。でも本土に持ち込めないんですよね。これまで二回ほど買ったんですけど空港で没収されました(笑)。なんで持って出ちゃいけないんでしょうか?ただ蒸して食べようとしているだけなのに…なぜ頑なに本土に持ち込んではいけないのか、空港の人にも聞いたんですけど、教えてくれませんでした(笑)」というエピソードを明かした。
最後に、ふくだ監督から「この映画は私の思うユートピアを映画にしようと思って作った作品です。この映画を見た人が、自分自身のこと、そしてすぐ隣にいる人を大事にして、優しくしていけばこの世界はもっと良くなるのではないか。そしてそのきっかけになってほしいと思っています。素晴らしいキャストとスタッフに恵まれて本当に素敵な映画になったと思っています。ぜひ楽しんでください」と締めのコメントが語られ、舞台挨拶は終了となった。
『おいしい家族』
9月20日(金)全国公開
監督・脚本:ふくだももこ
出演:松本穂香 板尾創路 浜野謙太 笠松将 モトーラ世理奈 三河悠冴 栁俊太郎
配給:日活
【ストーリー】 橙花(松本穂香)は東京で働くキャリアウーマン。母の三回忌に実家の離島に帰ると、なぜか父・青治(板尾創路)が母の服を着て生活していることを知る。びっくりする橙花を気にせず父は続けて「この人と家族になる」とお調子者の居候・和生(浜野謙太)を紹介。橙花は父を始め、様々な価値観や個性をもった人たちに出会うことで、自分が考える常識から解き放たれ、次第にそれぞれの個性を受け入れると共に、自分らしく生きることの大切さに気付いていく。
©2019「おいしい家族」製作委員会