第156回直木賞と2017年本屋大賞をダブル受賞するという史上初の快挙を成し遂げた恩田陸による傑作小説の実写化となる、松岡茉優主演の映画『蜜蜂と遠雷』の公開日が10月4日に決定した。このほど、ピアニストの河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央が、“実写化不可能”と言われた劇中で奏でられるピアノの音を担当、作曲家・藤倉大が劇中でコンクール曲となっているオリジナル楽曲「春と修羅」の作曲を担当することが発表された。
本作は、国際ピアノコンクールを舞台に、世界を目指す若き4人のピアニストたちの挑戦、才能、運命、そして成長を描く。かつて国内外のジュニアコンクールを制覇するも、13歳のときに母を亡くし、「ピアニスト」になることから長らく逃げてきた元天才少女・亜夜、社会人となり妻子を持ちながらも夢を諦めきれず、最後のチャンスと決意してコンクールにエントリーした明石、音楽エリートとして超名門音楽院に在籍し、優勝候補最有力の重圧に挑むマサル、そして今は亡き世界最高のピアニストが遺した謎の少年・塵(じん)。まったく異なる境遇にある4人の天才ピアニストたちが、国際コンクールでの熾烈な戦いを通して、互いに刺激し合い葛藤し、そして成長を遂げ“覚醒”していく。
主人公・亜夜を演じるのは、2017年に公開された『勝手にふるえてろ』で日本映画プロフェッショナル大賞主演女優賞を受賞するなど、今最も輝く女優の一人となった松岡茉優。明石役には、映画やドラマ、舞台で幅広い役に挑戦し、目覚ましい活躍を続ける松坂桃李。マサル役には、スティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』に出演した期待の若手・森崎ウィン。そして謎の少年・塵には、新人ながら100人を超えるオーディションで「塵そのものだ」と監督を唸らせた新星・鈴鹿央士が抜擢された。監督・脚本を務めるのは、昨年『愚行録』で長編監督デビューを果たし、新藤兼人賞銀賞を受賞した新鋭・石川慶。
松岡演じる栄伝亜夜のピアノ演奏は、感性豊かな音楽性と独創性で世界の数々の桧舞台で聴衆を魅了している実力派ソリストであり、昨今は後進の指導でもその多才ぶりを発揮する河村尚子。松坂演じる高島明石には、国内外のコンクールで活躍をみせ、2015年に行われたアイスショー「Fantasy on Ice」で羽生結弦と共演した実績を持つ福間洸太朗。森崎演じるマサル・カルロス・レヴィ・アナトールには、自身もマサル同様に海外で育ち、その才能を幼いころから発揮させ、2018年には国際NGO「難民を助ける会」の創立40周年チャリティーコンサートにて、皇后さまの前で演奏もした金子三勇士。そして、鈴鹿演じる風間塵には、弱冠18歳にして国際コンクールで優勝した天才・藤田真央が参加し、収録を行った。
さらに、宮沢賢治の同名の詩をモチーフにし、作中でコンクール曲となっているオリジナル楽曲「春と修羅」の作曲を、国際的に評価の高い作曲家・藤倉大が務めた。藤倉は15歳で英国留学をし、現代音楽の作曲家としてロンドンを拠点に国際舞台で活躍している。本物を追求したからこそ成し得た 至極の“音”が響き渡る。
併せて、今年のゴールデン・ウィークに行われるクラシックの祭典「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭では、本作とコラボした「映画『蜜蜂と遠雷』ノベルティ付きセット券」の発売が決定した。本作のピアノ演奏を担当する福間洸太朗、金子三勇士の出演公演、そして、「春と修羅」の作曲をした藤倉大プロデュース・出演公演の3公演をまとめて購入できる内容となっており、公開を前に本作の世界観を一足早く堪能するチャンスとなっている。
ピアニスト、作曲家&スタッフ コメント
■河村尚子(ピアニスト)
恩田陸さんは、演奏家がピアノに向かうまでの心の機微、不可思議で魔法のようなピアノ音楽の姿を、リアルかつ細やかに描かれています。映像と音を伴うことで、音楽を志す若者たちの熱い精神がより鮮やかに伝わりますように!
■福間洸太朗(ピアニスト)
このプロジェクトに参加させていただき、大変光栄です。録音前に小説を読み返し、家庭を持つ社会人としてコンクールに挑戦する高島明石の音を追求してみました。聴く人へ勇気と癒しを与えることが、明石と私の願いです。
■金子三勇士(ピアニスト)
国際コンクールの本選には、まず選ばない難曲をあえてぶつけてきたマサル。彼に同化して弾いたプロコフィエフの協奏曲がどのような映像作品に昇華したのか、一番楽しみにしている一人です。
■藤田真央(ピアニスト)
「蜜蜂と遠雷」は、発売されてすぐに読みました。音楽を文章でここまで表現できるものなのかと、とても感動しました。今回担当させていただいた風間塵くんのように、私も“音楽の神様”に愛されるピアニストであり続けたいです。
■藤倉大(作曲家)
この度は『蜜蜂と遠雷』に出てくる架空の作曲家の作品の作曲をすることができ、その上に4人の全く違う今をときめくピアニストに演奏していただき大変嬉しいです。原作の著者恩田陸さんはこの架空の作品の描写を長く詳しく書いており、その表現全てを実際に反映し、なおかつ僕の音楽になっていて、一人一人のピアニストの個性がバッチリ出る曲、と言うものを目指しました。映画を観るのが待ち遠しいです。
■石黒裕亮(プロデューサー)
これほどまでにピアノを正面から描いた作品はほかにありません。しかも中身はとてもリアル。原作を読まれたクラシック業界の方たちは、「コンクールそのもの」「ものすごく取材がしっかりされている」と口を揃えて仰います。だからこそ映画化にあたり、「一番大事な音楽で絶対に妥協はしない」と決めました。ピアノ演奏の方々を決めた条件は、一線級のピアニストであること、そして亜夜、明石、マサル、塵のキャラクターを演奏で表現してくれること。結果的に、日本最高峰の4人が揃いました。河村尚子さんは、原作の恩田先生が個人的にコンサートに行かれるほどの実力派であり、優しさと強さの両面をもった演奏は、まさに亜夜そのものです。明石をご担当された福間洸太朗さんは、さすがに楽器店では働いていないですが、包容力のあるキャラクターと繊細な演奏は、明石にぴったりでした。金子三勇士さんは、その生い立ちも含めマサルのようだなと思ってました。そんなバックボーンから来ているのか、そのパワフルな演奏によって、見事にマサルの演奏を表現して頂きました。そして風間塵をご担当された藤田真央さんは弱冠20歳。その年齢もさることながら、お話すると物凄くピアノが好きなことが伝わってきて、本当に塵と話しているようでした。もともと恩田先生がモデルにしたのではないかと思えるほどぴったりな4人が集まったと思います。そしてコンクールのオリジナル曲「春と修羅」には、藤倉大さんが参加。世界から絶賛される、現代の作曲家の最高峰です。原作にある「春と修羅」にまつわる全てのワードを家の壁に貼り付けて作曲されたという力の入りようで、必聴です!
『蜜蜂と遠雷』
10月4日(金)全国公開
監督・脚本:石川慶
原作:恩田陸「蜜蜂と遠雷」(幻冬舎)
出演:松岡茉優 松坂桃李 森崎ウィン 鈴鹿央士
配給:東宝
【ストーリー】 「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」というジンクスをもち、近年高い注目を浴びる芳ヶ江(よしがえ)国際ピアノコンクール。ピアノの天才達が集うこのコンクールの予選会に、若き4人のピアニストが現れる。かつて国内外のジュニアコンクールを制覇し、天才少女として名を馳せていた栄伝(えいでん)亜夜。しかし13歳の時、最大の理解者であった母が突然死去する。以来、長らくピアノが弾けなかった彼女が20歳となった今、ふたたびコンクールへの出場を決心した。音大出身だが楽器店に勤務しながら、今はサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石は、自身の才能に限界を感じながらも、妻や息子をはじめ家族の応援を背に最後の挑戦としてエントリーすることに。彼は、ある深い怒りと疑念を心の奥底に抱いている。完璧な演奏技術と感性を持ち、名門ジュリアード音楽院在籍中のマサル・C・レヴィ=アナトールは、優勝候補と目されている。幼少期を過ごしていた日本で、ある少女の誘いでピアノ教室を訪れたのが、彼の音楽との出会いだった。フランスのパリで行われたオーディションに突如現れた謎の16歳の少年・風間塵(じん)。彼は先頃亡くなった世界最高峰のピアニストからの「推薦状」を持っていた。その演奏を聴いた瞬間、名だたる審査員一同は圧倒され、<凄まじく、悍ましい…悪魔のような>完璧な技術に、かつて経験したことのない衝撃的な感情を抱く。推薦状には、「君たちに「カザマ ジン」という『ギフト』をお贈りする。」と書かれていた。
©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会