MC:では、きっと交流されていたであろう岡田さんはいかがでしたか?
岡田:お芝居もそうなんですけど、一緒にお仕事をしていて本当に気持ち良い方ばかりで、皆さん同じようにこの作品の役に、「どうしよう」って言って迷いながら、みんなで答えを見つけていっている感じがして、言語としては英語で皆さんとコミュニケーションを取らなきゃいけなかったので、ちょっとずつ英語を教えてもらいながら、「お前の英語は赤ちゃん英語だ」って言われながら(笑)。だから撮影が終わった後も皆さんとちょっとコミュニケーションをとって。高槻という役をやるにあたってもすごくいい作業で、とても楽しかったですね。
MC:出会いが刺激になったということですよね?
岡田:そうですね。本当にお芝居は日本に限らずどこでもできるんだなっていうのは、すごく感じられた現場でしたね。
MC:西島さん、映画の中で演出家を演じる。しかも濱口監督の前でっていうのもあるじゃないですか。どうやって役を組み立てたんでしょうか。
西島:実際にいくつかの劇団にお邪魔をして、演出家の方にお話を聞いたりとかもしたんですけど、それを参考にしながら濱口監督には「本気で演出をしてくれ」と言われて、僕自身も何が良い演技なのかということを考えながら、本当にすごく楽しく演技している姿を見続けるっていう事やってたんですけど。でもやっぱり僕を通して濱口監督の目で見るというか、やっぱりどうしても僕の役っていうのはどこか濱口監督にすごく影響を受けているし、濱口監督の一部分でもあると思っていたので、そういう僕が見ているんですけど、それはどこか濱口監督が僕を通して見ている演技をっていう風に感じながら演技をしてました。
MC:岡田さんはどうでしたか?
岡田:たくさん監督とはお話しさせていただいて、中でも最初に3月に撮影していて、そこで1回中断したことによって、そこで空いた時間がすごくプラスに働いたんですよね。高槻という役をやるにあたって、それがすごく良かったんだっていう話を、まだ「もう一回撮影します」っていう前に、監督に多分話をした時間があったんですけど、撮影に入ってもいないのに、なんで俺がそんなことを言ってるんだろうって思いながらも(笑)。でも、自分の中で確信的なことがあって、あの空いた時間でより高槻という役を理解する時間があったので、すごく良かったなあというのがありますね。
MC:濱口監督は2人の姿をご覧になっていて、どう感じられたんですか?
濱口:良い人に頼めて良かったと、本当に思ったというか(笑)。今こうしてお話をしていただいているだけでも感じていただいていると思うんですけど、本当は2人とも思慮深くて、やっぱりまっすぐな方達なんですよね。そういう人たちと物語を一緒にやれるということは本当に幸せな時間だったと思います。本読みの時間も大変だったと思うんですけど、僕は結構ずっと皆さんの声を聞いていて、その声がやっぱり変わってきたりするんですけど、どんどん分厚くなっていくというか芯みたいなものが出てくる感じがするんですけど、そういう時間は本当に幸せでした。
MC:岡田さんと西島さんは初共演になるわけですよね。前回、西島さんがすごく岡田さんの演技も絶賛されていました。岡田さんは西島さんとの共鳴で、どんなところに刺激を受けましたでしょうか。
岡田:西島さんは演出家役じゃないですか。今回はものすごく緊張感ある中で撮影をさせていただいてて、カットがかかった後、ちょっと監督をチラッと見て、どういう顔をしているのかなと思っていたんですけど、次に必ず西島さんの顔をチラッと見ていたんですね(笑)。どこか演出家として見てる部分があって、僕の芝居は今は大丈夫だったのかっていうのを、2人に確認してしまっている自分がいたりして(笑)。それぐらい現場では家福として居てくださっている西島さんがすごく刺激的で、なるべく僕も現場では高槻として居ようという気持ちでいましたね。
MC:だそうですが、西島さん。役者としてご一緒して、こういう方なんだと思われたことはありますか?
西島:本当に純粋な人で、本人を前にしてね、ごめんね(笑)。大丈夫なのかなっていう、こんな世界に。色々な大人がいっぱいいる世界で、こんな純粋な人が大丈夫なんだろうかって思うぐらい。
岡田:僕でも、32です(笑)。10代とか20代じゃないんで(笑)。
西島:30代だもんね(笑)。でも心配になるよ、本当に。すごく本当に純粋なんで、もちろん経験を積んで大人でタフな男性ですけど、どこか繊細でもろい部分っていうのが常に感じるので。そこはずっと持ちながら、外側が強くなっていって両方持っていてもらえると1ファンとしてはすごく幸せかなというふうに思います。
MC:濱口監督の前で聞くのもなんでございますけれども、実際作品ご覧になって、どんな感想を改めてお持ちになったんでしょうか。
西島:監督の『寝ても覚めても』ですごく衝撃を受けて、その前からすごいのは分かってましたけど、本当に改めてすごい監督が日本に現れたと思って。それは一映画ファンとして言っていて、で今回呼んでいただいて、『寝ても覚めても』から一歩進んだ作品に参加させていただいて、不思議な気分です。だから自分が出てますけど、自分っていうよりは作品の中に自分が映っていて、それは自分とは違うというか、ほかの作品とまた何か感じるものが違って、『ドライブ・マイ・カー』というすごい作品に参加させていただいているっていうのを観るっていう感じですね。だから皆さんと感覚が近いというか、そう感じています。
MC:岡田さんはいかがですか。
岡田:本当にただただ凄い映画に関わらせてもらったなぁというか。西島さんが今おっしゃっていた、自分じゃない感じがすごくして。だからこそ普通にお客さんとして観ている自分がいるのが初めてだったので。その不思議な感覚は、あんまり今後ないんだろうなぁと。あと少し縁があって、この台本を初めて読ませてもらった時に、ちょうど違う作品で地方ロケに向かう車の中で。車の中でお芝居をすることの、体がなかなか動かせない中、言葉と表情だけでどれだけ見せられるんだろっていうのを考えながら読んでいた自分がいたので、そこから今日この日を迎えるにあたって、なんかすごい体験をしてきた日々だったなぁという感じがしていて、本当にこの作品に出られてよかったなあというのは思っております。