『2001年宇宙の旅』、『スター・トレック』誕生前に、共産主義下の1963年にチェコで製作された初のSF映画『イカリエ－XB1』が、デジタル・リマスター版となって5月19日より公開されることが決定した。併せて、本作のメインビジュアルと場面写真がお披露目となった。

本作は、密室の中で徐々に狂気に汚染されていく乗組員たちのサスペンスフルな人間ドラマと、近未来のユートピア的世界を、独創的なスタイルで描き出した。22世紀後半、生命探査の旅に出た宇宙船「イカリエ－XB1」は、アルファ・ケンタウリ系へと向かう途上で、漂流中の朽ちた宇宙船を発見する。それはかつて地球から旅立った宇宙船だったが、船内にあるのは謎の死を遂げた乗組員たちの死体だった。この難破船に積まれた核兵器の爆発により調査員たち数名を失うという悲劇の後、変わらず旅を続ける「イカリエ－XB1」。だが謎のダークスターによって乗組員たちはみな眠りについてしまい…。

そのオリジナリティ溢れる世界観は、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968)にもインスピレーションを与えたという逸話を持つほど。今回の上映は、2016年に4K修復され、同年カンヌ国際映画祭カンヌ・クラシック部門で脚光を浴びたデジタル・リマスター版で、日本では劇場初公開となる。

本作が製作された1963年は、『火事だよ！カワイ子ちゃん』のミロシュ・フォルマン、『厳重に監視された列車』のイジー・メンツルらに代表される“チェコ・ヌーヴェルヴァーグ”が本格的に幕を開けた年で、その中心人物たちが本作にも多数参加している。スタニスワフ・レムの小説『マゼラン星雲』にインスピレーションを受けて脚本を執筆したのは、『ひなぎく』(1966)の脚本に協力したパヴェル・ユラーチェク。衣裳デザインのエステル・クルンバホヴァーも、『ひなぎく』や『パーティーと招待客』(1966)などを手がけ“チェコ・ヌーヴェルヴァーグのミューズ”と呼ばれた重要人物。音楽は、ヤン・シュヴァンクマイエルやカレル・ゼマンのアニメーション作品で知られるズデニェク・リシュカ。そして監督は、子ども向けの人気シリーズ映画を始め、特撮映像作品を多く手がけたインドゥジヒ・ポラークが務めた。

『イカリエ－XB1 デジタル・リマスター版』
5月19日（土）より新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督：インドゥジヒ・ポラーク
脚本：インドゥジヒ・ポラーク　パヴェル・ユラーチェク
衣装：エステル・クルンバホヴァー
音楽：ズデニェク・リシュカ
出演：ズデニェク・シュチェパーネク　フランチシェク・スモリーク　ダナ・メドジツカー　イレナ・カチールコヴァー　ラドヴァン・ルカフスキー　オットー・ラツコヴィチ
配給：コピアポア・フィルム

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