『≒草間彌生 わたし大好き』『氷の花火 山口小夜子』などで知られる松本貴子監督の最新ドキュメンタリー映画『バレンと小刀 時代をつなぐ浮世絵物語』が、2025年10月10日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国で順次公開されることが決定した。
本作は、江戸の伝統技術を継承し続ける「アダチ版画研究所」に密着し、現代アートと伝統工芸が交差する瞬間を描いたドキュメンタリー。伝統的な“彫師”と“摺師”が、現代を代表する“絵師”たちのアートを浮世絵というかたちに昇華させる――時代を超えたセッションの記録である。
絵師として参加するのは、草間彌生、ロッカクアヤコ、ニック・ウォーカー、アントニー・ゴームリー、李禹煥など、世界を舞台に活躍するアーティストたち。彼らの革新的な原画に挑むのは、100年近い歴史を持つアダチ版画研究所の彫師と摺師たち。彼らは江戸時代から受け継がれる木版画の技術を駆使し、原画の持つ世界観と美意識を浮世絵として形にしていく。
撮影は5年に及び、完成した作品は全86点。これらは2025年春に東京国立博物館で開催される展覧会「浮世絵現代」で発表される予定だ。
監督を務めた松本貴子氏は、次のように語っている。
「AIの時代に、この地道な作業は必要なの?と何度も思ったけれど、完成した作品を見ればその疑問も吹き飛ぶ。現代アーティスト達と伝統職人の異種格闘技ともいえるこの取り組みを、映画というかたちでまとめられたことは大きな喜びです。“現代の浮世絵”が生まれる瞬間に、ぜひ立ち会ってください。」
また、カメラはロッカクの指先から生まれる色の重なりや、草間の迷いのない筆使いを超クローズアップで捉え、アーティストと職人たちの真剣なやり取り、そして創作の苦悩と喜びを余すことなく映し出している。
■映画情報
タイトル:バレンと小刀 時代をつなぐ浮世絵物語
公開日:2025年10月10日(金)より、角川シネマ有楽町ほか全国順次公開
監督:松本貴子
プロデューサー:松本智恵
出演:草間彌生、ロッカクアヤコ、アントニー・ゴームリー、ニック・ウォーカー、李禹煥
配給:Stranger
あらすじ:
江戸時代に隆盛を極め、ゴッホら印象派にも影響を与えた浮世絵。その技術を現代まで継承するアダチ版画研究所が、草間彌生ら38名の世界的アーティストを絵師に迎え、“令和の浮世絵”を創造する一大プロジェクトに挑む。原画に込められた革新性に戸惑いながらも、職人たちは粘り強く美を掬い上げていく。カメラは、現代の浮世絵が誕生するその現場を静かに、そして力強く見つめる。
©写真:稲葉真