「ザ・ワールド・イズ・マイン」「宮本から君へ」を手掛けた新井英樹の同名コミックを、安田顕主演、吉田恵輔監督で実写映画化した『愛しのアイリーン』が、9月14日より公開中。このほど、9月27日に渋谷・シネクイントにて公開記念トークイベントが行われ、本作の吉田恵輔監督と、「GANTZ」や「いぬやしき」などを手掛けた漫画家の奥浩哉が登壇した。
かねてより吉田恵輔監督のファンであったという奥は、「『麦子さんと』と『ばしゃ馬さんとビッグマウス』から監督を知って、『ヒメアノ~ル』でガツッと掴まれ、この監督は日本の監督の中で一番好きだと思いました。好きすぎてDVDを全作買って、“吉田恵輔の棚”作ったくらい(笑)」と熱狂的なファンぶりをアピール。そんな“吉田信者”である奥は、本作『愛しのアイリーン』について「(コメントの寄稿をする上で)自宅で拝見させていただき、泣きましたね。2回目となる今日は初めてスクリーンで観ましたが、分かっていても泣きました。吉田監督の全作品見た中で、最高傑作!」とべた褒め。また、それを受けて吉田も、「自分が妄想していることがそのまま奥先生の漫画のシーンになっていることがあって。自分だけが危ない妄想してるわけじゃないんだとほっとします。先生が描く女性キャラは大きく分けて2パターンあると思いますが、どちらも自分のタイプ。大好きです」と、奥作品との共感を語った。
本作の主人公の岩男(安田顕)の母・ツルを演じた木野花について、奥が「演じた木野花さんには、日本アカデミー賞を狙えますよね。素晴らしい演技でした」と称えると、この日MCとして同席していた映画評論家の森直人からは「『スリー・ビルボード』のフランシス・マクドーマンドを連想させる存在感でしたよね」と今年のアカデミー賞主演女優賞を受賞したマクドーマンドに例え、これまでの優しい母・祖母のイメージを打ち砕き、真夏の猛暑や極寒の冬のロケなど命がけで演じた、“夜叉”のような木野を絶賛した。
漫画家と映画監督として作品を生み出す話になると、吉田は「制作過程で『客観的に見て何々だから、変えたほうがいい』と言われることがよくあるんですが、聞いてみるとその人の“主観”に過ぎないことがほとんど。誰かの“主観”に振り回されて失敗するより、自分の“主観”で作って、それで人がついて来ないほうが納得がいく。自分の仕事が無くなるだけなので」と作品作りにおける自ら曲げられない信念について語ると、奥も「僕も読者のため、とかではなくもう一人いる自分が面白がるものを、と思って描いています」と同調。映画の最後に流れるエンドクレジットの一番後に“監督”として自分の名が出ることに対し吉田は、「面白さの責任は監督が持たないといけないと思っています。ヒットするしないは他にも要因があるけど、面白さの“質”は自分が守らなきゃいけないという気持ちがあります。なので、(映画について)ボロカス言われるのはいいけど、自分で『失敗しちゃったんだよね(笑)』みたいに卑下してはいけないと思っています」と監督としてのプライドを語った。
最後に、MCから自分の漫画を吉田に実写化してもらえるなら何がいいかと聞かれた奥は、「どの作品でも、企画が立ち上がるなら是非やってほしい!」とコメントし、それを受けた吉田は「(奥の作品を実写化するには)CGのやり方覚えないといけないから、そこは自信がないけどやってみたい(笑)」と本作の実写映画化を成功させた吉田監督が奥作品の映画化に期待を含ませ、イベントを締めくくった。
『愛しのアイリーン』
9月14日(金) TOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー中
監督・脚本:吉田恵輔
原作:新井英樹「愛しのアイリーン」(太田出版刊)
音楽:ウォン・ウィンツァン
主題歌:奇妙礼太郎「水面の」(WARNER MUSIC JAPAN/HIP LAND MUSIC CORPORATION)
出演:安田顕 ナッツ・シトイ 河井青葉 ディオンヌ・モンサント 福士誠治 品川徹 田中要次 伊勢谷友介 木野花
配給:スターサンズ
【ストーリー】 寒村の地。久方ぶりに岩男(いわお)が帰省したその日は、死んだことすら知らなかった父親の葬儀中だった。しかも岩男はフィリピンで買って来た嫁、アイリーンを連れていた!42歳まで恋愛を知らずに生きてきた岩男に無邪気にまとわりつくアイリーン。騒つく参列者たちの背後から現れたのは、ライフルを構えた喪服姿の母親ツル。今、戦慄の来訪記が幕を開ける―。
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