幕末の風雲児と呼ばれた越後長岡藩家老・河井継之助を描いた、歴史小説の大家・司馬遼太郎の名作「峠」の初の映像化となる映画『峠 最後のサムライ』が製作されることが決定し、併せて、主演の役所広司らキャストが発表された。
原作は、1966年から68年まで毎日新聞にて連載、1968年に新潮社より上下巻で初版刊行され、累計発行部数は284万部を超える大ベストセラー。本作はこれまで一度も映画化、ドラマ化されたことがなく、今回が初の映像化となる。
監督・脚本には、黒澤明監督の助監督として数々の名作に携わった日本映画界の名匠・小泉堯史。初監督作品『雨あがる』では第24回日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか計8部門で最優秀賞を受賞。その後、『阿弥陀堂だより』『博士の愛した数式』『明日への遺言』『蜩ノ記』と、常に上質な日本映画を送り出してきた。『影武者』で助監督としてキャリアをスタートさせた小泉監督が、監督としては初めて本格的な合戦アクションに挑む。本作では、これまでの小泉作品と同様、フィルムで撮影を敢行する。
実力ゆえに一介の武士から越後長岡藩の筆頭家老に抜擢される、“知られざる偉人”河井継之助を演じるのは、日本映画を代表する俳優・役所広司。『蜩ノ記』に続き2本目の小泉監督作品となる。継之助をいかなる時も信じ、支え続けた妻・おすがを、『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞するなど、数々のテレビ・映画・舞台で活躍を続ける松たか子が演じる。
このほか、継之助の父・代右衛門に田中泯、母・お貞に香川京子、継之助の良き相談相手となる小山良運に佐々木蔵之介、良運の息子・正太郎に坂東龍汰、従者の松蔵に永山絢斗、なじみの娘・むつに芳根京子、継之助と生死を共にする川島億次郎に榎木孝明、側近の花輪求馬に渡辺大。さらに、幕府軍松平定敬に矢島健一、継之助に戦争の虚しさを思い知らせる老人に山本學、月泉和尚に井川比佐志、徳川家最後の将軍となった徳川慶喜に東出昌大、敵対する官軍の岩村精一郎には吉岡秀隆。そして、継之助を重用した前藩主・牧野忠恭(雪堂)には、日本映画界・演劇界における長年の功績により文化勲章など数々の賞を受賞した、日本が誇る名優・仲代達矢。『雨上がる』以来となる小泉組に参加する。
撮影は9月中旬から約3か月間、継之助の故郷・長岡市をはじめ新潟県を中心に茨城や京都で行われ、また、維新史上最も壮烈な北越戦争を描くに当たり、約5,000人規模のエキストラを募集し、迫力ある撮影を予定している。本作は2020年に公開される予定だ。
キャスト&スタッフ コメント
■小泉堯史(監督・脚本)
司馬遼太郎さんは「峠」のあと書きに記している。
「幕末期に完成した武士という人間像は、その結晶のみごとさにおいて人間の芸術品とまでいえるように思う」
私もこの映画において侍とはなにか、捉えてみたい。自然に、爽やかに、そして美しく。
■役所広司(河井継之助役)
美しい映画を求め続ける小泉監督作品に再度参加できることはこの上ない幸運です。世界中で知られている「サムライ」という美的人間の代表でもある河井継之助を背筋を伸ばし、気持ちを引きしめて撮影に臨みたいと思います。
■松たか子(おすが役)
出演させていただけること、大変光栄に思っています。継之助さんの夢の邪魔をせぬよう、役所さんの足を引っ張らぬよう、、、先輩方から学べることに感謝しながらつとめさせていただきます。
■仲代達矢(牧野忠恭(雪堂)役)
時代劇の中ではよく信長や信玄がもてはやされますが、私はタヌキオヤジと言われながら二百五十年余の日本の平和を築いた家康の方が本来の侍の様な気がしています。今回の作品でもそうした侍の在り方が問われるでしょう。
■関根真吾プロデューサー(松竹撮影所)
今年は、物語の舞台である長岡藩開府400年、戊辰戦争終結150年、主人公の河井継之助没後150年。そんな節目の年に本作の製作を発表できることに、深いご縁とこの企画の運命のようなものを感じています。司馬遼太郎先生の原作を得て、小泉堯史監督のもと最高のスタッフ・キャストと共に、ご当地長岡市から新潟県を中心に撮影に臨んでまいります。2020年は東京オリンピック。「サムライジャパン」と言われる日本人の魂が再び注目されます。そんな年に、この作品を通して「かつて日本人が生み出した、世界に類を見ない“侍”というもの」を再び見つめ直すきっかけになってもらえればと願っています。
『峠 最後のサムライ』
2020年、全国ロードショー
監督・脚本:小泉堯史
原作:司馬遼太郎「峠」(新潮文庫刊)
出演:役所広司 松たか子 田中泯 香川京子 佐々木蔵之介 坂東龍汰 永山絢斗 芳根京子 榎木孝明 渡辺大 矢島健一 山本學 井川比佐志 東出昌大 吉岡秀隆 仲代達矢
配給:松竹 アスミック・エース
【ストーリー】 徳川慶喜による大政奉還も奏上され、260年余りに及んだ江戸時代が終焉を迎えた幕末。そんな動乱の時代に、幕府にも官軍にも属さず、小藩・越後長岡藩の中立・独立を目指した男、河井継之介。彼の壮大な信念は、混沌を迎えた日本を変えることができるのか?