人気漫画家の押見修造による同名コミックを、南沙良と蒔田彩珠のダブル主演で映画化した『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』が7月14日より公開される。このほど、6月26日に新宿武蔵野館にて本作のプレミア上映と舞台挨拶が行われ、キャストの南沙良、蒔田彩珠、萩原利久、湯浅弘章監督が登壇した。
押見作品のファンだという南は、志乃役に抜擢されたことについて、「原作を読んだ時に、“絶対志乃をやりたい!”と思ってオーディションを受けたので、決まった時は嬉しかった」と明かしつつ、「原作の志乃の雰囲気を壊さないかなという不安はありました」と振り返った。メガホンを取った湯浅監督は、「原作者の押見さんも“吃音の人だけに届く映画にしたくない、普遍的な、誰にでも届く作品にしたい”とおっしゃっていて、映画もそうしたいと思っていた。群像劇ではないけど、志乃ちゃんだけではなく、いろいろな人たちを描きたかった。問題のない10代は世の中に存在しないと思うので」と本作への想いを語った。
また、原作を読んで初めて“吃音”(言葉が流暢に出てこないこと)について知ったという南は、「たくさん動画や映画を見たり、吃音の方にお話を伺ったりして、吃音とはどういうものなのかという理解から始めました」と役柄の理解からスタートしたという。撮影現場には原作者の押見も訪れたようで、菊地を演じた萩原は、「押見さんに『菊地が菊地だね!』って言ってもらえて(笑)。漫画から(役柄が)膨らんでいる部分があって、そこは自分の中で作り出すしかなかったので不安はあったんですけど、自分の菊地像が合っていたのかな」と嬉しそうに語った。
音楽も見どころの一つである本作。今回の撮影でギターに初挑戦したという蒔田は、「4、5か月練習をして。最初は指も痛いし、コードも覚えらえなかったんですけど、監督とプロデューサーといっしょに、かよのギターを選びに行ってから、もっと頑張ろうと思いました」とコメント。すると萩原が「僕のタンバリンはぶっつけです!」と明かすと、湯浅監督は「菊地がいい感じにムカつくんだよなぁ。芝居がうまいからなんですけど、そこが見どころです」と絶賛していた。
イベントの後半には、本作の登場人物たちが自分たちの想いをうまく伝えられないことにちなみ、撮影中にお互いに言えなかったことをフリップに書いて披露することに。萩原は、菊地というキャラクターが相当板についたようで、試写会で自分が座った席の両サイドに誰も座ろうとしなかったことを告白。菊地のキャラについて、湯浅監督から「場の空気がめちゃめちゃ良くなった!」とフォローされていた。続いて蒔田は、怖がりな南がかわいかったと伝え、ホテルで二人で心霊番組を観て盛り上がったというエピソードを披露。南は「本当に怖くて!」と言いながらも楽しそうに笑った。一方で湯浅監督は、撮影前はキャストの3人が仲良くなることはないと思っていたようで、「びっくりするぐらい仲良くなった!」と驚いた表情に。ここで、萩原が「初日に撮影の合間に待っていたら、いきなり彩珠ちゃんが『今日から私、“おはぎ”って呼ぶね!』って一発目に言われて(笑)」と明かし、客席から笑いが起こった。舞台挨拶は、キャストと監督の仲の良さが終始見られ、穏やかな雰囲気のまま終了した。
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
7月14日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:湯浅弘章
原作:押見修造「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(太田出版)
出演:南沙良 蒔田彩珠 萩原利久 小柳まいか 池田朱那 柿本朱里 中田美優 蒼波純 渡辺哲 山田キヌヲ 奥貫薫
配給:ビターズ・エンド
【ストーリー】 高校1年生の志乃は上手く言葉を話せないことで周囲と馴染めずにいた。そんな時、ひょんなことから同級生の加代と友達になる。音楽好きなのに音痴な加代は、思いがけず聴いた志乃の歌声に心を奪われバンドに誘う。文化祭へ向けて猛練習が始まった。そこに、志乃をからかった同級生の男子・菊地が参加することになり…。
©押見修造/太田出版 ©2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会