エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督が登壇!「フランス映画祭2018」オープニング作品『セラヴィ!』トークショー レポート

日本公開のフランス語映画で歴代興行収入第1位を記録した大ヒット作『最強のふたり』(2012)の監督とスタッフ陣により製作された最新作『セラヴィ!』が、7月6日より公開となる。このほど、6月21日に横浜みなとみらいホールにて「フランス映画祭2018」が開幕し、オープニングセレモニー&オープニング作品である本作の上映とトークショー&ティーチインが行われ、エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督が登壇した。

日仏交流160周年を迎えた今年、13年振りに横浜で盛大に開幕した「フランス映画祭2018」のオープニングセレモニー&オープニング作品として上映された本作。監督ふたりは1000人以上の観客とともに映画を鑑賞し、映画後半に訪れる本作の“爆笑ポイント”の日本の観客の反応をじかに体感。場内からはその場面だけでなく、大きな笑いや拍手が何度も起こった。

セレモニーの前に豪華登壇者により行われたレッドカーペットに、監督ふたりもタキシードで参加し、上映後のトークショーのモデレーターとして、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦と、元プレミア日本版編集者/元サッカー日本代表監督フィリップ・トルシエの通訳としても知られるフローラン・ダバディが登場。ダバディは、フランス映画祭との想い出として、「プレミア日本版に4年間関わって一番楽しかった想い出は、当時横浜で開催されていたフランス映画祭でした。4年間ずっと担当させてもらってきたんです。映画祭が横浜に帰ってきてくれてよかったと思います」と語った。

メガホンを取ったエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督は、大きな拍手に迎えられて舞台に登場。トレダノ監督は「温かく映画を受け入れてくださり、ありがとうございます。本当に興味深い。皆さんで笑ってくださり、いい反応をしてくださいました」と喜び、ナカシュ監督は「本当に幸せな気持ちです。ものすごくフランス的な映画だし、フランスだから気に入ってくれるのかもしれないと思っていましたが、この映画が色んな国で公開されて、僕たちはこうやって色んなところに行くことができます」と挨拶した。

ダバディは、「『最強のふたり』を初めて観たのは東京の映画館でした。20年間日本の劇場でずっとフランス映画を観てきたけれど、そこでは日本の皆さんと数人だけいたフランス人の観客が全く同じタイミングで笑っているのに触れて、本当に感動したんです」とコメント。また、客席で観客と一緒に本作を鑑賞したばかりのダバディは、「ふたりが作るユーモアは万国共通だと思います」と称賛した。トレダノ監督は「そう言ってもらえて嬉しいです。僕たちにとっての麻薬は、“お客さんの笑い”なんです。2時間の間、自分の人生からちょっと離れて、皆さんに違う体験を一緒になってしていただくのは本当に素晴らしいことだと思います。僕たちは、皆さんの笑い声が聞きたくて日本にやって来ました」と、今回の来日に込めた想いを熱く語った。

ダバディが、2015年のパリ同時多発テロがふたりが本作を作ることにしたきっかけだったというエピソードに触れると、ナカシュ監督は「僕たち自身もすごく心を痛めましたが、テロリスト達の狙いはまさに僕たちが意気消沈することで、文化や心を彩ってくれる生活の場所を狙ってくるんです。だから僕たちは絶対にしょんぼりすることなく、あれだけ泣いた分、皆で一緒に顔を上げて笑いたいと強く思いました。僕たちふたりは物事をポジティブに考えたいんです。社会的な問題は多いですが、色んな人を集めて一緒に何かをすることでそれを乗り越えたいと思いました。偏った考え方に対しても、僕たちは手を取り合えば乗り越えられるんだというメッセージを、映画を通じて伝えたいんです」と、映画制作への熱い想いを語った。

本作で主人公のベテランウェディングプランナー・マックスを演じているフランスの名優ジャン=ピエール・バクリについて、トレダノ監督は「この映画で一緒に仕事ができてラッキーでした。バクリは本当に素晴らしい俳優で、一緒にやりたいとずっと思っていました。彼は普段こういうコメディにあまり出ないけど、今回、心を開いてこのコミカルな役を受け入れてくれました」と説明。世界の映画に精通する上で、バクリを“不機嫌な中年男を演じさせたら世界一”と語る矢田部は、「そんな不機嫌な中年男にウェディングプランナーをやらせようと思うものすごい発想はどこから生まれたんでしょうか?」と質問を投げかけると、ナカシュ監督は「僕たちは駆け出しの頃、短編制作のためにイベントの裏方のアルバイトをしていました。そういう経験を通じて“仕事を一緒にやるチーム”についての映画を撮りたいとずっと思っていました。一方で、結婚式では表にいる参列者と、裏方で働く人たちとでは、社会的地位や結婚式に対する考え方もズレがあって、すごく映画に向いているんじゃないかと思ったんです」と本作のアイデアの出発点を説明した。

個性が強すぎてマックスとスタッフ達を困惑させるブルジョワ層の新郎ピエールを演じているバンジャマン・ラヴェルヌは、本作に出演している主だった俳優の中では唯一の“コメディ・フランセーゼ”出身。映画ではピエールがとんでもない目に遭う場面があるが、国立の劇団としてフランス演技界のエリート中のエリートといえるこの組織の俳優がそのような役を演じていることについて、「エリートである彼が、あんなイヤな奴の役をやってくれたのが嬉しい。ピエールという人間は“まさにキン○マ野郎”ですよ!(笑)」と、思わず本音を呟き、通訳がそのまま訳してしまったことから、ピエールの顛末を知る場内は大きな笑いに包まれた。

物語の舞台となるのは、17世紀に建てられ、ルイ13世が所有していたパリ近郊のクランス城。監督ふたりは撮影が行われた4か月もの間、その城に寝泊まりしていたといい、ダバディが、そういった文化的資源までもロケーションできるフランス映画制作をめぐる豊かな環境をうらやむ場面も。そのほか、まさに試合開始を数時間後に控えたサッカーワールドカップフランス戦についての話題や、トレダノ監督が今回の来日で気になって仕方がなかったという日本語“(発言の頭に付ける)あのー”にちなみ、ふたりの発案でコールアンドレスポンスも行われるなど、大きな盛り上がりを見せた。ふたりは、トークショー後もロビーに駆け付けた多くのファン達に対してサインや写真撮影にも時間を気にせず気軽に応じ、観客との交流を心から楽しんでいた様子だった。

『セラヴィ!』
7月6日(金)渋谷・シネクイント他全国公開
監督:エリック・トレダノ オリヴィエ・ナカシュ
出演:ジャン=ピエール・バクリ ジル・ルルーシュ ジャン=ポール・ルーヴ ヴァンサン・マケーニュ
配給:パルコ

【ストーリー】 ウェディングプランナーとして30年間、数え切れないほどの結婚式をプロデュースしてきたマックスは、そろそろ引退を考えていた。そんなある日、17世紀の城を舞台にした豪華絢爛な結婚式の依頼が舞い込んだ。いつも通り式を成功させようと、完璧な準備を整えたのだが、なんと集まったスタッフたちが全員ポンコツ!!バンドのボーカルは新郎の希望と真逆の歌を熱唱しワンマンショー気取り、カメラマンは写真撮影よりもつまみ食い、ウェイターは新婦にうつつを抜かし、おしゃべりに夢中…。マックスの努力も虚しく、次第に式は大惨事と化す…。前途多難すぎる結婚式は、果たして、チームメンバー一丸となって成功させることはできるのか。

© 2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE