『極北のナヌーク』で知られる、ドキュメンタリー映画の始祖ロバート・フラハティが南の島の暮らしを収めたドキュメンタリー『モアナ 南海の歓喜』が9月15日より公開される。このほど、予告編とポスタービジュアルがお披露目となった。
1926年に『The Love Life of a South Seas Siren!』(南海の美女の愛の生活)として公開された本作は、1923年に監督のフラハティが妻のフランシスと子どもたちとともに南太平洋にあるサモア独立国のサヴァイイ島を訪れ、サモアの人々のエキゾチックな生活を撮影し、近代化によって先進国では見られなくなった風習や儀礼の数々を収録。公開当時に書かれた本作への批評文(ジョン・グリアスン)のなかで、初めて「ドキュメンタリー」という言葉が使用されたことでも知られている。
この撮影から約半世紀の時を経た1975年、フラハティの娘であるモニカが、ダイレクト・シネマの名監督であり、フラハティの作品『ルイジアナ物語』(1948)でカメラマンを務めたリチャード・リーコックとともにサヴァイイ島に戻り、50年前のロケ地で聴こえた島のリアルな音や会話と民謡を録音。父が残した当時の映像に、現地で新たに録音したサウンドを合わせて1980年に『モアナ』(サウンド版)を完成させた。本作は、この『モアナ』を、フィルム・キュレーターであるブルース・ポズナーと、フラハティの曾孫である映画監督のサミ・ヴァン・インヘンが、フィルムアーカイブ団体やフィルム研究所の協力を得たデジタル復元作業を経て、当時の映像や音声をより美しく鮮明に蘇らせた作品となっている。
『モアナ 南海の歓喜』
9月15日(土)より岩波ホールにて公開
監督:ロバート・フラハティ
共同監督:フランシス・フラハティ モニカ・フラハティ
撮影:ロバート・フラハティ デヴィッド・フラハティ
録音:モニカ・フラハティ リチャード・リーコック
配給:グループ現代
【作品概要】 南太平洋サモア。生命を豊かに育む海と、ヤシや緑が生い茂る美しい島。人々は伝統を守りお互いに助け合い生きていた。楽園のようなこの島に暮らすー家の長男モアナには、ファアンガセという婚約者がいた。タロイモを採り、丸木舟で海に出て魚を採る、のどかな島の暮らし。ただお祝いの儀式だけは特別だ。今日はモアナの結婚式。ほら貝の音とともに太鼓が鳴り響き、村は子どもから大人まで祝祭に満ち溢れている。モアナは、成人男性のしるしであるタトゥーを施し、ファアンガセとともに歓喜の踊りを舞い、盛大な挙式が始まった。
©2014 Bruce Posner-Sami van Ingen. Moana © 1980 Monica Flaherty-Sami van Ingen. Moana © ℗1926 Famous Players-Laski Corp. Renewed 1953 Paramount Pictures Corp.