デジタルで撮影・制作された作品にフォーカスした、川口市が埼玉県と共催する国際コンペティション映画祭「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が、記念すべき15周年を迎え、7月13日(金)~22日(日)の10日間開催される。それに先がけ、6月4日、東京・都道府県会館にて記者発表を行い、オープニング作品、国際コンペティション&国内コンペティションのノミネート作品、15周年特別企画をはじめとする全上映ラインナップが発表された。
15年目を迎える節目の年を記念して、今年のオープニング作品は開催地・川口市が製作した新作映画『君がまた走り出すとき』。市内各所で撮影が行われ、約300人の市民がエキストラとして参加した、まさに“地域参加型映画”のワールド・プレミア上映で幕を開ける。監督を務めたのは、短編『母との旅』『エンドロールを撮りに』が評価された新鋭・中泉裕矢。日本人男性で初めて世界6大マラソンを走破した市民ランナー・古市武さん(川口市在住)の生き様に触発され、マラソンを通じて人生を見つめ直す人々の姿を描いた本作。若手注目株の寛一郎を主演に迎え、山下リオ、菜葉菜、辻本祐樹らフレッシュな面々と、長谷川初範、浅田美代子、松原智恵子らベテラン陣が脇を固めている。
▲『君がまた走り出すとき』©2018 川口市
■15周年特別企画① 「飛翔する監督たち from SAITAMA」
いま、日本映画界が期待を寄せる埼玉県出身の4人の監督、石井裕也監督、入江悠監督、沖田修一監督、?田恵輔監督にスポットを当てて特集。石井裕也監督は『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、入江悠監督は『22年目の告白―私が殺人犯ですー』、沖田修一監督は『横道世之介』、?田恵輔監督は『犬猿』を上映する。
■15周年特別企画② 「名匠たちの軌跡」
映画史に名を刻む巨匠、黒澤明、ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤン、ミヒャエル・ハネケの映画術に迫った貴重なドキュメンタリーを無料上映。フランスの映像作家クリス・マルケルが『乱』のメイキング・ドキュメンタリーとして制作した『A.K. ドキュメント黒澤明』、先日のカンヌ映画祭で日本人として21年ぶりのパルム・ドールに輝いた是枝裕和監督が、自身も敬愛してやまないと公言するホウ・シャオシェンとエドワード・ヤンを追った『映画が時代を写す時―侯孝賢とエドワード・ヤン』、イザベル・ユペールやジュリエット・ビノシュら、ハネケのミューズたちへのインタビューに加え、ハネケの映画理論や演出術を10年にわたり密着した『ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケ』という、日本ではほとんど劇場で上映されていない貴重なドキュメンタリー3本を無料上映する。
■15周年特別企画③ 「怪盗グルーシリーズ一挙上映」
世界的大ヒットアニメ『怪盗グルー』シリーズから、『怪盗グルーの月泥棒』『怪盗グルーのミニオン危機一発』『怪盗グルーのミニオン大脱走』が上映される。
本映画祭のメインとなる「コンペティション」は、15年目を機に、「若手映像クリエイターの登竜門」として新たな才能の発掘・育成を一層強化するため、規約・構成をリニューアルした。海外作品と日本作品を幅広く対象にした「国際コンペティション」と、日本作品を対象とした「国内コンペティション」(長編部門・短編部門)の、2部門3カテゴリーで構成する。「国際コンペティション」および「国内コンペティション 長編部門」は、長編制作本数3本以下の監督による60分以上の作品、「国内コンペティション 短編部門」は長編制作未経験の監督による15分以上60分未満の作品を公募。本年は過去最多となる98の国と地域から、「国際コンペティション」には合計656本、「国内コンペティション 長編部門」には67本、「国内コンペティション 短編部門」には176本の応募があった。厳選なる一次審査を経た、「国際コンペティション」10本、「国内コンペティション 長編部門」4 本、「国内コンペティション 短編部門」9本がノミネートされた。今年の「国際コンペティション」審査委員長は、俳優の渡辺真起子、「国内コンペティション」審査委員長には、数々の映画を手掛けるプロデューサー・桝井省志が務め、最終日7月22(日)のクロージング・セレモニーで最優秀作品賞(グランプリ)をはじめ各賞が発表される。
■国際コンペティション
過去最多の98の国・地域からエントリーがあり、応募数656本から厳選した、10作品がノミネートされた。ロシアから届いたオペラ・エンターテインメント『スポットライト』や、今年のサンダンス映画祭での脚本賞に輝き、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』やサム・ライミ監督による『呪怨』のリメイク版での主演が控えるアンドレア・ライズボロー主演の『ナンシー』、昨年の釜山国際映画祭コンペティション部門で国際批評家連盟賞を受賞した韓国映画『最後の息子』、フィリピン人監督によるセルフ・ドキュメンタリー『ブリス、マイ・スウィート・ホーム』、ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の老人がアルゼンチンから故郷ポーランドへと旅をする感動ドラマ『ザ・ラスト・スーツ(仮題)』(スペイン、アルゼンチン合作)、オランダで暮らすコソボ難民の葛藤を描き、米アカデミー賞外国語映画賞コソボ代表にも選ばれた『招かれざる者』(コソボ、オランダ合作)、些細なご近所トラブルが歯止めをなくしてエスカレートしていく様をブラックなホーム・ドラマとして描いたアイスランド発の『あの木が邪魔で』など、エンターテインメントから深淵なドラマ、ドキュメンタリーまで、世界各国から日本未公開作品が集結した。ノミネート作品全てがジャパン・プレミア以上の作品となる。
▲『スポットライト』
■国内コンペティション
日本映画の未来を担う才能の発掘を目的とする「国内コンペティション」では、長編部門には、若手人気俳優の芋生悠、中山優輝主演の青春映画『あの群青の向こうへ』、松浦祐也(『ローリング』)と和田光沙(『菊とギロチン』)が底辺で必死に生きる兄妹を体当たりで演じた『岬の兄妹』の2作品がワールド・プレミアとなる。さらに池内万作主演のハードボイルドな復讐劇『キュクロプス』、山田キヌヲ、韓英恵、川瀬陽太といった現在の日本のインディペンデント映画に欠かせない実力派俳優たちが勢揃いした『情操家族』の4本がノミネート。
▲『あの群青の向こうへ』
短編部門では、アニメーション作品『Birth-おどるいのち-』や、俳優の板垣雄亮が舞台脚本を映画化した初監督作品『はりこみ』、ジョン・ウー監督の『マンハント』にも出演したアクション女優・屋敷紘子が主演を務め、こじらせ女子の奮闘を描くコメディ『予定は未定』、ピンサロで働く女性と殴られ屋の男のひと時の邂逅を綴る『口と拳』、佐伯亮、大原櫻子(林田さくらこ名義での出演)主演の、落ち目タレントと新人マネージャーのドタバタ・エンターテインメント『ふっかつのじゅもん』など、エネルギー漲る若手監督たちによる、多種多様な作風の9作品がノミネートされた。
▲『予定は未定』 ©belly roll film/ RECIPRO
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭では、コンペティション、特集企画以外にも多彩なプログラムが盛りだくさん。毎年恒例のバリアフリー上映では、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』を、日本語字幕・音声ガイド(UDCast方式)で上映。そのほか、関連企画として、授乳施設も完備し、ベビーカーのまま入場可能な「ママ・シアター」では大ヒットロングランを記録したドキュメンタリー『人生フルーツ』を上映する。さらに昨年大好評だった「VR上映」では、大学の航空部を舞台にした青春漫画「ブルーサーマル-青凪大学体育会航空部-」をVRで実写化した『ブルーサーマル VR -はじまりの空-』と、ウルトラマンゼロのVR版『ウルトラマンゼロ VR 大都会の戦慄 エレキング対ゼロ』を上映する。ほかにも SKIPシティを中心に活動するクリエイターが制作した作品を上映する「メイド・インSKIPシティ」や、子どもたちが「カメラクレヨン~子どもたちが作った映画が、いま面白い!~」など多数の企画が開催される。
「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 2018(第15回)」 開催概要
■会期:2018年7月13日(金)~22日(日)<10日間>
■会場:SKIPシティ 映像ホール/多目的ホール、MOVIX川口(埼玉県川口市)ほか
■主催:埼玉県、川口市、SKIPシティ国際映画祭実行委員会、特定非営利活動法人さいたま映像ボランティアの会
■公式サイト:www.skipcity-dcf.jp