沖縄発のバンド「やちむん刺激茄子」のリーダー・奈須重樹が、バンド結成25周年記念で挑んだ「首里劇場ライブ」の模様を収めたライブ・ドキュメンタリー映画『一生売れない心の準備はできてるか』が、4月26日より公開されることが決定した。併せて、予告編が披露された。
奈須重樹は2021年で音楽活動30周年を迎えた。玄人筋には評判が良い作詞作曲能力だが、これまで小ヒットが一曲のみ。それでもめげずに活動を続け、今は流しを中心に日銭を稼ぎながら精力的に新曲を発表している。そんなイマイチ“売れない男”が脚光を浴びたのが、バンド結成25周年記念で挑んだ「首里劇場ライブ」である。満員の聴衆を前に天衣無縫なパフォーマンスを繰り広げ、沖縄最古の映画館、首里劇場を華やかな空気で包み込んだ。
監督の當間早志は、彼を長年撮影し続けてきた盟友。18人編成のビッグ・バンドで臨んだライブを迫力たっぷりに活写しつつ、インタビューや現在の流しで活動する姿を追撮し、奈須が紡ぐ楽曲の唯一無二の魅力や、彼の生き方そのものの素晴らしさを伝える。
また、長い年月を経た建物だけが醸し出せる強烈な首里劇場の佇まいも見どころ。3代目館長・金城政則館長が亡くなり、2023年10月に惜しまれながら解体となってしまった沖縄最古の劇場の在りし日の姿を観られるのも貴重だ。
本作の東京公開決定を受けて、コメントも到着。本作の主役・奈須重樹は「思い出深い吉祥寺での上映は、感慨ひとしおです」と明かし「沿線にたむろするミュージシャン、役者などの様々な表現者たちに、いや全ての社会人に、そして、まだ何者でもない悶々とする若者たちにぜひ観て欲しい。勇気も元気も100倍になることうけ合いです」と、新たな観客に期待を寄せた。監督の當間早志からも「建物も解体されて更地になった今、 【首里劇場】全体が湧き、華やいだ…あの夢のようなひとときを記録した貴重な映画となった」と、舞台となった劇場にも寂寥の想いを込めてコメント。
本作を一足早く観た、ホウ・シャオシェン監督『フラワーズ・オブ・シャンハイ』などで知られる音楽家で映画監督の半野喜弘は「音楽という名の”喜びと悲しみ”を抱えた奈須重樹のドキュメントだ」と絶賛。フォーク・ロックバンド「たま」で知られる石川浩司も、奈須について「売れている人たちも本当に欲しがってる『ミュージシャン冥利に尽きる』という、大きな大きな宝石を」既に持っていると賛辞を贈っている。他にも篠原章(音楽評論家)、田中美登里(ラジオ・パーソナリティ)、サエキけんぞう(パール兄弟)からもコメントが届いている。
▼キャスト、スタッフ、著名人 コメント
■奈須重樹(出演・「やちむん刺激茄子」リーダー)
自称”沖縄の中央線バンド”やちむんにとって、思い出深い吉祥寺での上映は、感慨ひとしおです。少し大げさですが、凱旋、あるいは故郷に錦を飾るぐらいの気分なのです。
’90年代後半から、東京ライブのときにはいつも、吉祥寺に住んでいたIさんの所に泊まっていろんな町に出かけました。井の頭公園でジャケット写真を撮ったこともあります。「小金井、三鷹、吉祥寺」という歌も作りました。一番観て欲しかったIさんは、もういないのですが、沿線にたむろするミュージシャン、役者などの様々な表現者たちに、いや全ての社会人に、そして、まだ何者でもない悶々とする若者たちにぜひ観て欲しい。勇気も元気も100倍になることうけ合いです。
■當間早志(監督)
2016年のGW初日、沖縄最古のボロい映画館【首里劇場】で、イマイチ売れないミュージシャン奈須重樹のライブをプロデュースしたら、想定を超えるほどの大盛況に。具体的な目的なしに、とりあえずの記録として動画を撮り、ハンディレコーダーでも録音していたことが幸いし、映画にできた。当初は、奈須の楽曲やパフォーマンスの魅力を伝えることはもちろん、【首里劇場】の活用例の紹介を意図したが、一度完成して間もなく館長が急逝し、さらに諸々の理由で再編集を繰り返して決定版を完成。その後、建物も解体されて更地になった今、【首里劇場】全体が湧き、華やいだ…あの夢のようなひとときを記録した貴重な映画となった。
■半野喜弘(音楽家 / 映画監督)
この映画はコンサート映画ではない。音楽という名の“喜びと悲しみ”を抱えた奈須重樹のドキュメントだ。そこには當間早志監督らしい、失われゆくものへの慕情、持たざる者への愛に溢れた眼差しがある。今はなき首里劇場の舞台で『一生売れない心の準備はできてるか』と叫ぶ奈須重樹と演奏者達は眩しいくらいに輝いている。
■石川浩司(ミュージシャン)
「一生売れない心の準備はできてるか」そんなこと歌ってますが、この映画が突然アルゼンチンあたりで「YACHI-MUN! YACHI-MUN!」と大バズりすることだってあり得ますよ〜。僕らもひょんなことでテレビに出たら、突然注目されてしまいアレヨアレヨということが昔ありましたから。ともあれ僕も自作曲をこんなに大勢の素晴らしいミュージシャンをバックに歌ってみたいものです。もしかしたら奈須さんは売れること以上の宝石をもう既に持っているのかもしれません。幾多の今は金銭的には売れている人たちも本当に欲しがってる「ミュージシャン冥利に尽きる」という、大きな大きな宝石を。みなさん、これが「男の生き様」です。
■篠原章(音楽評論家)
〈やちむん〉と付き合うきっかけは、拙著『ハイサイ沖縄読本』(1993年)に、〈やちむん〉の奈須重樹がカメラマンとして協力してくれたことに遡る。知り合ってまもなく、『チムがある』と題する自主製作カセットをもらった。そこには、粗削りながら、明るくも切ない、未知の沖縄がギュウギュウ詰めこまれていた。いつのまにか〈やちむん〉の世界にはまりこみ、長い歳月が流れた。この映画を観て、自分のカラダの4分の1以上が〈やちむん〉の世界でできていることに気づいた。それが証拠に、〈やちむん〉は売れる、といまも信じて疑わない自分がいる。「一生売れない」なんてとんでもない。〈やちむん〉は売れるにきまってる。
■田中美登里(ラジオ・パーソナリティ)
沖縄音階もカチャーシーもないけど、沖縄のおおらかな風が吹き抜けていく。“一生売れない心の準備”とは、自分に正直に生き続けること。それを寿ぐここは祝祭の宴。そんな心意気の沁み込んだ首里劇場に古酒で乾杯!奈須さんにも乾杯!!
■サエキけんぞう(パール兄弟)
「導入から会場まで、沖縄のフレーヴァーでいっぱい!やちむんの妖しい人生観にあなたも触れてみないか!新曲「ストリーキング」好きです!
『一生売れない心の準備はできてるか』
2024年4月26日よりアップリンク吉祥寺ほか全国公開
監督:當間早志
出演:やちむん刺激茄子(奈須重樹、育、長谷川淑生、さとうこうすけ、比嘉正一郎、ヤギフミトモ) 関島岳郎 島田篤 有田康信 和田充弘 ローリー 知念保 本村実篤 儀部“ベギー”高行 高宮城徹夫 金城千賀子 赤嶺志麻子 内間晶子 ジーナ 新良幸人
配給:シネマラボ突貫小僧
【作品概要】 沖縄発のバンド「やちむん刺激茄子」のリーダー奈須重樹(宮崎県出身)の味わい深い音楽人生を、ライブやインタビューで綴る音楽映画。玄人筋には評判が良い作詞作曲能力だが、これといったヒット曲がないまま30年…それでもめげずに活動を続ける彼の飄々とした生き様は、見る者に勇気と笑顔を与えてくれる。監督の當間早志(5月にリバイバル公開予定の『パイナップル・ツアーズ』第3話監督)は、奈須の長年の盟友。18人編成のビッグ・バンドで臨んだ満員大盛況の首里劇場ライブを迫力たっぷりに活写しつつ、奈須が紡ぎ出す楽曲の唯一無二な魅力に迫っていく。また会場となった沖縄現役最古の映画館「首里劇場」の強烈な佇まいにも注目である。