福島県にある復興公営住宅を舞台にした、ちょっと変わった被災地支援活動を追うドキュメンタリー『ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ』が、4月12日より公開される。このほど、予告編とポスタービジュアルが披露された。
いわき市にある福島県復興公営住宅・下神白(しもかじろ)団地には、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故によって、浪江・双葉・大熊・富岡町から避難してきた方々が暮らしている。
2016年から、まちの思い出と、当時の馴染み深い曲について話を伺い、それをラジオ番組風のCDとして届けてきたプロジェクト「ラジオ下神白」。2019年には、住民の思い出の曲を演奏する「伴奏型支援バンド」を結成。バンドの生演奏による歌声喫茶やミュージックビデオの制作など、音楽を通じた、ちょっと変わった被災地支援活動をカメラが追いかけた。
監督は、震災後の東北の風景と人の営みを記録し続けている映像作家の小森はるか(『息の跡』『二重のまち/交代地のうたを編む』)。本作は、文化活動家のアサダワタルを中心にした活動に、2018年から小森が記録として参加することによって生まれた。
カラオケとは違い、歌い手の歌う速度にあわせて演奏する「伴奏型支援バンド」。支援とは何か? 伴走(奏)するとはどういうことか? 「支援する/される」と言い切ることのできない、豊かなかかわりあいが丹念に映しとられている。
■プロジェクト「ラジオ下神白(しもかじろ)」とは?
「ラジオ下神白 あのときあのまちの音楽から いまここへ」とは、福島県いわき市にある県営復興団地・下神白(しもかじろ)団地を舞台に展開される、音楽と対話を手掛かりにしたコミュニティプロジェクト。住民が住んでいたかつてのまちの記憶を、馴染深い音楽とともに収録するラジオ番組を制作し、それらをラジオCDとして住民限定に配布・リリース。この行為を軸に、立場の異なる住民間、ふるさととの交通を試みている。「復興」というキーワードからすり抜ける一人ひとりの「わたし」との出会いを交わすために、継続している。
▼著名人 推薦コメント
■植本一子(写真家)
その人のペースに合わせて、隣を歩こうとするあたたかさ。誰かに寄り添ってもらった経験は、これから進む道の先を、明るく照らしてくれる。
■小松理虔(地域活動家)
あの震災を、こんなふうに描くことができるのか。そう驚かされた。かけがえのないふるさと、そして思い出。それをつなぐのが歌であった。本作は、人と記憶、歌とふるさとをめぐる物語である。福島の物語であり、「わたし」の物語でもあった。
■月永理絵(ライター/編集者)
人が話し、笑い、歌う姿は、それぞれこんなにも異なるのだ。そんな当たり前のことを、この映画を見て初めて知った。その事実がこれほど心を打つのだ、ということも。映画に出てくる一人一人の名前をたとえ忘れてしまっても、こうやって話していた人、あんなふうに歌っていた人、あの歌を好きだと笑っていた人、という記憶だけはいつまでも残るだろう。
■イリナ・グリゴレ(人類学者)
映画は「二人の恋は 清かった 神様だけが ご存知よ*」という歌声ではじまる。この声は人の心を裏返したような声で頭から離れない。ラジオを通して、電波に乗って明かされるもう一つの団地、もう一つの世界。想いの世界。歌の記憶と声の記憶は、永遠に流されることはない。
*柳水巴「天国へ結ぶ恋」(1932年)より
■細馬宏通(行動学者)
ききながら、かつて歌った歌を思い出す人。歌いながら、歌うことを思い出す人。わたしたちは、ただ歌をきくのではなく、いま歌を思い出しつつある人の声をきく。歌が思い出される時間を生々しくとらえた、かつてない映画。
『ラジオ下神白ーあのとき あのまちの音楽から いまここへ』
2024年4月12日(金) フォーラム福島にて先行上映
4月27日(土) ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー
監督・撮影・編集:小森はるか
出演:下神白団地の住民さん アサダワタル 榊裕美 鈴木詩織 江尻浩二郎 伴奏型支援バンド(池崎浩士・鶴田真菜・野崎真理子・小杉真実・岡野恵未子・上原久栄)
配給:ラジオ下神白
©︎KOMORI Haruka + Radio Shimo-Kajiro