『モロッコ、彼女たちの朝』のマリヤム・トゥザニ監督最新作で、旧市街の仕立て屋で紡がれる、夫婦の愛と決断の物語『THE BLUE CAFTAN(英題) 』が、邦題を『青いカフタンの仕立て屋』として6月16日より公開されることが決定した。
2021年、モロッコの劇映画として初めて日本公開され大ヒットを記録した『モロッコ、彼女たちの朝』。異国情緒あふれるパン屋を舞台に、心に孤独を抱えた2人の女性の連帯と希望を描いたマリヤム・トゥザニ監督が最新作で描いたのは、カフタンドレスの仕立て屋を営む夫婦の物語。カフタンドレスとは、結婚式や宗教行事などフォーマルな席に欠かせないモロッコの伝統衣装で、母から娘へと世代を超えて受け継がれる着物のようなもの。伝統を守る仕事を愛しながら自分自身は伝統からはじかれた存在と苦悩し真の自分を隠して生きるハリムとその妻のミナが本作の主人公だ。職人気質の夫を誰よりも理解し支えてきたミナは、病に侵され余命わずか。そこに若い職人のユーセフが現れ、3人は青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。そして刻一刻とミナの最期の時が迫るなか、夫婦は“ある決断”をする。彼らが導き出した答えとは…。その深い愛と選択に思わず涙があふれ出す、感動の物語が誕生した。
モロッコの日常をスケッチしたコーランが響く旧市街、新鮮なタンジェリンが並ぶ市場や大衆浴場(ハマム)、男たちがミントティーを楽しむカフェといった“素顔のモロッコ”も見逃せない本作。さらに伝統を守る仕立て職人の指先にレンズを向け、色とりどりの滑らかなシルク地に刺繍する繊細な手仕事をクローズアップ。一針、一針、想いを込めながらドレスを紡いでいく、モロッコの伝統工芸の美しさを私たちに教えてくれる。
モロッコのセンシティブな問題を国際社会に紹介した本作は、2022年カンヌ国際映画祭「ある視点部門」に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。さらに、2023年米アカデミー賞®モロッコ代表として国際長編映画賞のショートリスト(最終候補15本)にも選出されるなど、国際的に高い評価を受けている。
ミナを演じるのは『モロッコ、彼女たちの朝』(19)で、最愛の夫の死に沈むアブラを演じたルブナ・アザバル。死期迫るミナを体現するために過酷なダイエットを行い、最期の瞬間まで夫に愛と勇気を捧げる妻を熱演する。ミナとの別れを受けとめきれずに立ちすくむカフタン職人のハリムには、『迷子の警察楽隊』(07)のサーレフ・バクリ。内なる情熱と本心を隠す悲しみを、吸い込まれるような瞳で訴えかける。複雑な夫婦の愛にさざ波を起こす若い弟子のユーセフには、本作が映画初出演のアイユーブ・ミシウィが演じている。
マリヤム・トゥザニ監督は本作について「愛する人にありのままの自分を受け入れてもらう 。人生においてこれほど美しいことがあるだろうか」とコメントを寄せている。
場面写真は、モロッコの片隅にたたずむカフタンの仕立て屋の日常が切り取られたもの。夫婦とユーセフの3人が楽しげに食卓を囲む風景や職人のハリムが色とりどりのカフタンを丁寧に仕立てる様子、幾何学模様のタイルが美しいカフェでのワンシーンなどが映し出されている。
『青いカフタンの仕立て屋』
2023年6月16日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
監督・脚本:マリヤム・トゥザニ
出演:ルブナ・アザバル サーレフ・バクリ アイユーブ・ミシウィ
配給:ロングライド
【ストーリー】 モロッコ、海沿いの街、サレ。旧市街の路地裏で、ミナ(ルブナ・アザバル)とハリム(サーレフ・バクリ)の夫婦は母から娘へと世代を超えて受け継がれる、カフタンドレスの仕立て屋を営んでいる。伝統を守る仕事を愛しながら、自分自身は伝統からはじかれた存在と苦悩するハリム。そんな夫を誰よりも理解し支えてきたミナは、病に侵され余命わずである。そこにユーセフ(アイユーブ・ミシウィ)という若い職人が現れ、誰にも言えない孤独を抱えていた3人は、青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。そして刻一刻とミナの最期の時が迫るなか、夫婦は“ある決断”をする。彼らが導き出した答えとは。
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