チェコスロバキア最後の女性死刑囚として、若干23歳にして絞首刑に処された実在の人物を描いた映画『私、オルガ・ヘプナロヴァー』が2023年4月29日より公開される。このほど、日本版予告編、日本版チラシ、ポスタービジュアル、場面写真がお披露目となった。
群衆の間へトラックで突っ込み8人が死亡…。銀行員の父と歯科医の母を持つ経済的にも恵まれたオルガ・ヘプナロヴァーは、1973年7月10日、チェコの首都であるプラハの中心地で、路面電車を待つ群衆の間へトラックで突っ込む。この事故で8人が死亡、12人が負傷。犯行前、22歳のオルガは新聞社に犯行声明文を送った。自身の行為は、多くの人々から受けた虐待に対する復讐であり、社会に罰を与えたと示す。両親の無関心と虐待、社会からの疎外やいじめによって心に傷を負った少女は、自らを「性的障害者」と呼び、酒とタバコに溺れ、女たちと次々に肌を重ね、しかし苦悩と疎外感を抱えたままの精神状態はヤスリで削られていくかのように、一層、悪化していき…。複雑な形の「復讐」という名の「自殺」を決行したオルガは、逮捕後も全く反省の色を見せず、75年3月12日にチェコスロバキア最後の女性死刑囚として絞首刑に処された。
日本版チラシは、煙草を片手にトラックを運転するオルガのスチール写真に、「彼女の唯一の逃げ道は、自殺か復讐か――」という強烈なコピーの入っている。
日本版予告映像では家族との確執、いじめ、自殺未遂、そして一人の女性との出逢いなど彼女の人生の一部が映し出される。なにが彼女を凶行に駆り立てたのか…彼女自身の心情とシンクロするように、一切の同情を拒絶した本作は2010年に刊行された原作「Já, Olga Hepnarová」を元に、チェコ映画界の新鋭トマーシュ・ヴァインレプとペトル・カズダ両監督が映画化。「いつか嘲笑と私の涙を償わせる」との言葉の通り犯行に及んでしまった彼女だが、事件から50年を経て、わたしたちは今なにを思うだろうか…。7年もの歳月をかけて映像化された本作は、権威ある世界三大映画祭のスタートを切る作品として上映されるや、高い評価とともにその悲劇的な物語に会場を静寂が支配したという。2017年にはカルト映画のレジェントであるジョン・ウォーターズ監督が年間ベスト映画の一作品として本作をピックアップし、世界的な注目を浴びた。
『私、オルガ・ヘプナロヴァー』
2023年4月29日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督・脚本:トマス・ヴァインレプ&ペトル・カズダ
原作:ロマン・ツィーレク
撮影:アダム・スィコラ
出演:ミハリナ・オルシャニスカ マリカ・ソポスカー クラーラ・メリーシコヴァー マルチン・ペフラート マルタ・マズレク
配給:クレプスキュールフィルム