2011年3月に起った福島第一原発の事故によって全村避難を余儀なくされた飯舘村を舞台にした、古居みずえ監督によるドキュメンタリー『飯舘村 べこやの母ちゃん』が、3月11日より公開される。このほど予告編がお披露目となった。
家族との暮らし、愛しい牛(べこ)たち、住みなれた故郷。本作では、何かを守り、何かを手放し、揺れ惑いながら前を向いて生きてきた心の軌跡が描かれる。
予告編では、牛を泣く泣く手放し、故郷に戻れる日を待ちわびる中島信子さん(「第1章故郷への思い」)、牛とともに故郷を離れ、新天地で酪農を続ける決断をした原田公子さん(「第2章べことともに」)、牛だけでなく、子どもや孫たちとの暮らしを奪われながらも、先祖代々の土地を守るために飯舘村へ戻る決心をした長谷川花子さん(「第3章帰村」)という、3人の女性の姿を映し出す。
『飯舘村 べこやの母ちゃん ーそれぞれの選択』
2023年3月11日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開
監督・撮影:古居みずえ
出演:中島信子 原田公子 長谷川花子
配給協力・宣伝:リガード
【あらすじ】
「第1章 故郷への想い」
戦後、両親が開拓した土地で45年もの間、酪農と繁殖の仕事に携わってきた中島信子さん。手塩にかけた牛を泣く泣く手放し、隣市の仮設住宅に避難。週の半分、夫とともに飯舘村へ通いながら、故郷に戻れる日を待ち続けていた。年々募っていく故郷への思い、かつての暮らしへの郷愁。しかし、除染作業後も下がりきらない放射線量と、石まじりの砂が撒かれた畑を前に気持ちが揺らぎ始める…。
「第2章 べことともに」
酪農と繁殖農家としてたくさんの仔牛を育ててきた原田公子さん。仲間たちが廃業を選択する中で、自分の意思をつらぬき牛とともに新たな土地に移る。放射能の心配はなくなったが、新生活には別の不便や苦労も。時にぶつかりあいながら、夫と二人三脚で牛飼いの道を歩む公子さん。彼女が決して牛を手放さない背景には、事故当時に十分な世話ができず死なせてしまった牛たちへの後悔の念があった…。
「第3章 帰村」
酪農家として義両親と夫、息子家族の8人で暮らしてきた長谷川花子さん。息子家族と離れ、仮設住宅で義両親と4人暮らしに。飯舘村に帰りたい義母、花子さん夫妻に任せると言う義父、息子家族と一緒に暮らしたい夫。それぞれの思いが交錯する中、飯舘村への帰村を決意。先祖代々の土地と故郷を守るため、新たなチャレンジに取り組み始めた矢先、夫が病に倒れ…。
© Mizue Furui 2022