元極道、元ホームレス…傷ついた人々が演じるキリスト受難劇と彼らの人生を織り交ぜた『重力の光:祈りの記録篇』9月公開

困窮者支援をする北九州の教会に集う人々が演じるキリストの受難劇と、彼らの歩んできた苦難と現在の物語を交差させたドキュメンタリー『重力の光:祈りの記録篇』が、9月3日公開されることが決定した。併せて、予告編、ポスタービジュアルがお披露目となり、著名人から本作を推奨するコメントが寄せられた。

本作は、NPO法人抱樸(ほうぼく)の奥田知志が牧師を務める北九州市の東八幡キリスト教会に集う、元極道、元ホームレス、虐待被害者など様々なバックグラウンドを持つ人々が演じるキリストの受難劇と彼らの人生を織り交ぜたドキュメンタリー。30分のインスタレーション版が「第15回shiseido art egg」に選出、その後72分のドキュメンタリー映画として再編集された本作は、「第14回恵比寿映像祭」にて上映され、高い評価を受けた。

監督は、ロッテルダム国際映画祭招待作品『ガーデンアパート』や英BBCテレビ放映作品『狂気の管理人』など、アートと映像の領域を横断して様々なヴィデオ作品を手がける石原海。北九州に移住後、東八幡キリスト教会に通うようになった石原は、そこに集う人々と作品を制作。フランスの思想家シモーヌ・ヴェイユの「重力と恩寵」から影響を受け、「祈ることで一瞬だけ重力から解放されてふわりと浮かぶことができる、その瞬間を祝福するように」キリストの受難劇と彼らの人生を織り交ぜ、人間の「生」の姿に迫りながら、フィクションとドキュメンタリーの間でそっと光を指し示すような挑戦的な作品を完成させた。

▼著名人 推奨コメント

■永井玲衣(哲学研究者)
痛みと苦しみと苦痛に満ちた世界。なぜわたしたちは生まれてきてしまったのか。神はいるのか。愛とは何か。だがこの作品を受け取ったいま、祈らざるを得ない。わたしの苦しみをとりのぞいてしまうのではなく、弱く愚かなわたしのまま、同じように弱く愚かな他者と共に、どうかちゃんと苦しませてください、と。

■富田克也(映画監督・脚本家)
世界中で『神』と祀られるようになった人々は、キリストもムハンマドも釈迦も老子も孔子も、詰まるところ同じことしか言っていない。拙作『典座』でその存在を知り驚嘆した曹洞宗の⻘山俊董老子は、信仰とは苦しみ哀しみから逃れるためにあるのではなく、それらを知ることでようやく信仰への“アンテナ”が立つのだと言っていた。それまで絵空事にしか聞こえなかった言葉は輝きはじめ、重力によって今の姿を留めている私たちを照らす。私たちより先にアンテナが立ち、“道”への入り口に立った人々がここには映っている。

■小林エリカ(作家・マンガ家)
石原海さんは、人間がそれぞれ持つ苦しみや哀しみや弱さまでも、輝かしい光とともに軽やかにまっすぐ映すことができる人だと思います。その作品をとおして、私自身の中にあるものもまた照らされてゆき、やがて私も、私たちも、世界を少しずつでも変えていくことができるかもしれないと、信じられる気がします。

『重力の光:祈りの記録篇』
2022年9月3日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
監督:石原海
出演:菊川清志 ⻄原宣幸 村上かんな 下別部為治 奥田伴子 川内雅代 藤田信子 石橋福音 奥田知志
配給:「重力の光」制作運営委員会

【作品概要】 困窮者支援を行うNPO法人抱樸(ほうぼく)の奥田知志が牧師を務める福岡県北九州の東八幡キリスト教会には、様々なバックグラウンドの人々が集まっている。フィリピンで戦争を経験した人、5回の服役後極道から足を洗うも世間につまはじきにされた人、妻と子供が出ていき、自暴自棄になって多額の借金を背負った人、路上生活をしながらも食える程度の稼ぎを得ていたが、時代の流れの中でそれすらままならなくなった人、親や周りの大人たちに殺すぞと毎日言われ続けた人、生きるのが苦しく、「早くいなくなりたい」と願っていた人…。本作は、教会に集う傷ついた愛すべき罪人である9人が演じるイエス・キリストの十字架と復活を描いた受難劇と、彼らが歩んできた苦難と現在の物語、礼拝の模様や支援活動、それぞれの日常を交差させたドキュメンタリー映画である。

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