鈴木敏夫「この配役は、倍賞さんを置いて、他に考えられない」倍賞千恵子主演『PLAN 75』絶賛コメント

映画監督・是枝裕和が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一篇『PLAN75』を新たに構築し、キャストを一新した早川千絵監督の初長編映画で、倍賞千恵子が主演を務める『PLAN 75』が、6月17日より公開される。このほど、倍賞千恵子がなぜ本作に起用されたのか?監督が明かすキャスティング秘話と、スタジオジブリの鈴木敏夫からの絶賛コメントがお披露目となった。

本作は、75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を保障し支援する制度「プラン75」が施行され、その制度に翻弄される人々の姿を描く衝撃作。年齢で命が線引きされてしまうことの恐ろしさとそのようなシステムを生み出してしまう社会構造や人々の意識に対し、痛烈な批判を込めて、生きるとは何か?を問いかける。

本作の舞台は、75歳以上の高齢者に死を選ぶ権利を認め、支援する制度、通称<プラン75>が施行された近い将来の日本。主人公・角谷(かくたに)ミチを演じる倍賞千恵子は、脚本を読み、「最初は“酷い話”だと思ったのですが、物語の終盤でミチがある選択をする姿が描かれており、そこにものすごく心打たれ、惹かれて…それだけで出演を即決しました」と、ミチを演じる覚悟を決めたと振り返る。

倍賞は1961年に映画デビュー、俳優としてのキャリアは60年を超え、80歳を迎えた今年9年ぶりの主演作が公開されるなど、精力的に活動中。これまで数多くの作品でその存在感を遺憾なく発揮してきたが、印象深い役といえば、映画『男はつらいよ』シリーズの渥美清演じる主人公・車寅次郎の妹さくら役であろう。気立てがよく、困っている人を見かけると、すぐに手を差し伸べる優しさと愛情深さを備えたまさにハマり役。そんな市井の人を演じたら右に出る者なしの倍賞は今回、勤勉に慎ましく生きてきたが、失職をきっかけに社会での居場所さえも失いかけ、<プラン75>の申請を検討し始めるという役どころを繊細に表現。それでも尚、自分で立っていたいと自身を追い込んでいく姿は、公に助けを求めにくい現代社会を投影しているかのようだ。

早川千絵監督は、倍賞の起用理由を「観た人がかわいそうだと思うような主人公ではなく、観た人が自然と好きになり、感情移入してしまうような主人公にしたかった。そのためにも、凛とした美しさや人間としての魅力を備えた方に演じてもらいたかったんです。それで真っ先に倍賞さんを思い浮かべました」と語る。さらに、「お芝居は、手の先から足の先までで完璧でした。フランスの編集スタッフやサウンドエンジニアも、“なんてエレガントなんだ”と。まさに誰もがミチを好きになっていました。同時に人間的にも素晴らしい方です。倍賞さんはスタッフの名前を、アシスタントの名前まで全部覚えていらっしゃるんですよ。人間としても倍賞さんから多くを学ばせてもらいました」とリスペクトを込めて撮影を振り返っている。

■鈴木敏夫(スタジオジブリ)コメント
倍賞千恵子さん、ご無沙汰しています。お元気そうですね。映画を見てそう思いました。倍賞さんというと、「寅さん」の妹のさくらさん。でも、ジブリにとっては、「ハウルの動く城」のソフィーです。75歳を超えると、死を選択できる。この配役は、倍賞さんを置いて、他に考えられない。最後まで、倍賞さんの一挙手一投足を見守りました。この映画のヒットを願っています。

『PLAN 75』
2022年6月17日(金)より、新宿ピカデリーほか全国順次公開
監督・脚本:早川千絵
出演:倍賞千恵子 磯村勇斗 たかお鷹 河合優実 ステファニー・アリアン 大方斐紗子 串田和美
配給:ハピネットファントム・スタジオ

【ストーリー】 少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は「プラン75」の申請を検討し始める。一方、市役所の「プラン75」の申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子(河合優実)は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の「プラン75」関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に臨む日々を送る。果たして、「プラン75」に翻弄される人々が行く着く先で見出した答えとは…。

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