俳優・升毅が、岩手県陸前高田市に実在する、返事のこない手紙を受け取り続ける「漂流ポスト」を訪ね、自らの孤独と向き合い、「生きること」への答えを探す旅に出るドキュメンタリー『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3・11をたずねて』が、10月に公開されることが決定した。併せて、場面写真がお披露目となった。
漂流ポストは、岩手県陸前高田市の「森の小舎」に実在する郵便ポスト。ご主人の赤川勇治さんが、震災遺族の“心にしまわれたままの悲しみ”が「手紙を書く事で癒されれば…」と思い立ち受付を始めた。亡くなった大切な人への想いを綴り、漂流ポストに手紙を宛てる。やがて震災以外にも同じような気持ちを抱えた人たちに情報が広がり、全国各地から手紙が届くようになる。現在も大切な人を亡くした人々の心の拠り所となっている。
監督の野村展代は「漂流ポスト」の活動に感銘を受け、2016年から取材を続け、映画化を決意。山奥の「森の小舎」で、一人静かに手紙を受け取り続ける赤川勇治さん。そして被災地の人々の心は…?初めての劇映画プロデュースゆえ、資金繰りや内容の折り合いが上手くいかず、監督する予定であった佐々部清と話し合い一度企画をストップした。しかし、これまでの取材内容を生かしドキュメンタリー映画として再出発。佐々部のサポートも受け、野村プロデューサーが初監督として再び企画をスタートした矢先、佐々部が急逝。漂流ポストのテーマに寄り添い、その姿を追おうとしていた者が、一転「手紙を書く」立場の人間になった。悲しみに暮れ、悩み抜いた結果、自分たちの今の姿を正直に描こうと決め、そして佐々部監督の盟友である俳優・升毅が合流。気鋭の撮影監督・早坂伸が共同監督、佐々部組俳優部の伊嵜充則、三浦貴大 比嘉愛未、中村優一らも参加して、岩手、鹿児島、そして山口への旅路を瑞々しい映像美で映し出す。
場面写真には、漂流ポストに手を合わせたり、そこで手紙を閲覧、佐々部家にて佐々部監督の遺影と対峙する升毅の姿や、佐々部監督の遺作『大綱引の恋』の舞台挨拶で、彼の遺影を手にする三浦貴大と比嘉愛未の姿などが収められる。
■升毅 コメント
人は生まれ・育ち・出会い・ハグクミ・愛しあい…そして別れる。生まれきたものは多くの人や物、出来事と出会い、別れとも出会う。絶望や苦しみからの解放、病気・災害など不慮の事故、突然死…出会いに色々なカタチがあるように、別れのワケも様々。『歩きはじめる言葉たち』の撮影では、大きな災害や、様々なカタチで大切な人を失った思いを、こころの言葉、文字にした言葉、無言の言葉…たくさんの言葉の中で、別れの悲しみや苦しみ、絶望とどう向き合い、寄り添い、これからを生きていくのか…そんなことを目、耳、肌…五感を通して感じてきました。出会いは選ぶことが出来るが、別れは選ぶことが出来ない。様々な別れのコトバの旅を、映画館でご一緒しましょう。
■野村展代(監督) コメント
大切な人に想いを届けたい。そんな気持ち受け止める「漂流ポスト3.11」に出会い、今は書くことが少なくなった「手紙」というものに改めて魅力を感じました。作品を準備する中で自分自身が「大切な人との別れ」に遭遇し自らも漂流ポストに手紙を書く立場になりました。その真摯な思いを映像に残すべく、俳優の升毅さんと1年間旅をしてきました。師匠である、故・佐々部清監督に届けたい私なりの手紙とも言える映画です。
『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3・11をたずねて』
10月 ユーロスペースほか全国公開
監督・企画プロデュース:野村展代
共同監督・撮影:早坂伸
出演:升毅 伊嵜充則 三浦貴大 比嘉愛未 中村優一 佐々部清
配給:アークエンタテインメント
【作品概要】 東日本大震災から10年。岩手県陸前高田市にひっそりと佇む森の小舎(もりのこや)。大切な人を亡くし、悲しみを抱えた人々からの手紙を受け取り続ける「漂流ポスト3.11」。映画監督・佐々部清の遺影に手を合わせる一人の男性。2020年3月に急逝した佐々部に想いを馳せる俳優・升毅の姿。「監督のよーいスタートがないのにカメラが回っているのが不思議な気がする…」升は喪失感を抱えたまま、佐々部ゆかりの地や親しかった人々を訪ねる旅に出る。佐々部が生前に果たせなかった、東日本大震災の被災地での映画作りを思い、岩手県陸前高田市に足を運ぶ。そこで出会った「漂流ポスト3.11」と被災地の今の姿。さらに旅先でのインタビューを重ね「生きること」を改めて考え、感じていく升毅。佐々部の仲間たちから託された「手紙」を携え、再び漂流ポストを訪れた彼が、孤独と向き合い、ペンを手に取る。そこに今を生きることへの答えへはあるのか…。
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