本年度アカデミー賞で国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門にノミネートされた話題のルーマニア映画『Colectiv(原題)』が、邦題『コレクティブ 国家の嘘』として10月2日より公開されることが決定した。併せて、予告編がお披露目となり、映画評論家・町山智浩よりコメントが寄せられた。
東欧ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”で2015年10月30日に実際に起こった火災を発端に、明らかになっていく製薬会社や病院、そして政府や権力へと繋がっていく衝撃的な癒着の連鎖。本作は、命よりも利益や効率が優先された果てに起こった国家を揺るがす巨大医療汚職事件の闇と、それと対峙する市民やジャーナリスト達を追った、フィクションよりもスリリングな現実を捉えたドキュメンタリー映画。
監督は、世界各国の映画祭で上映され数多くの賞を受賞した『トトとふたりの姉』のアレクサンダー・ナナウ。地道な調査報道を続けるジャーナリストを追う前半から一転、映画の後半では熱い使命を胸に就任した新大臣を追い、異なる立場から大事件に立ち向かう人達を捉えていく。
“まるでリアル『スポットライト 世紀のスクープ』だ”とも評される本作は、命の危険を顧みず真実に迫ろうとするジャーナリストたちの奮闘に思わず手に汗握るだけでなく、日本を始め世界中のあらゆる国が今まさに直面する医療と政治、ジャーナリズムが抱える問題に真っ向から迫っており、ドキュメンタリーでありながら本年度アカデミー賞のルーマニア代表として選出され、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネート。そのほか、世界各国の映画祭で28の賞を獲得し、51ものノミネートを果たした。また、非英語映画でありながら、タイム誌が選ぶ2020年ベスト映画の第2位に選出されたほか、ローリングストーン誌では第1位に選出され「惨劇、隠蔽、暴露。今年最高のドキュメンタリーだ」と最高の賛辞を得た。さらに、映画レビューサイト、ロッテントマトでは6月28日時点で満足度99%をたたき出し、まさに2020年を代表する1作として圧倒的な評価を得ている。
予告編は、ライブ中に演出の花火が施設に引火し一瞬にして壁を覆いつくすショッキングな場面で幕を開け、被害者の親たちが投げかける悲痛な叫びや疑問、地道な取材を続けるジャーナリスト達と国の腐敗と対峙する厚生大臣が抱える葛藤などを映し出す。「我々は権力を妄信している」「メディアが権力に屈したら、権力は我々を虐げる」「医療は一部の人ではなく全国民のものだ」といった映画のカギを握る重要な言葉が飛び交い、同時に現代社会に生きる我々への大きな問いかけも感じさせる。
■町山智浩(映画評論家) コメント
間違った医療政策で人々が亡くなる。それは日本でも起こった。ただ『コレクティブ 国家の嘘』に感動するのは、新聞記者と大臣が事実を追及するからだ。それは日本では起こっていない。
『コレクティブ 国家の嘘』
10月2日(土)シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
監督・撮影:アレクサンダー・ナナウ
出演:カタリン・トロンタン カメリア・ロイウ テディ・ウルスレァヌ ブラッド・ボイクレスク
配給:トランスフォーマー
【ストーリー】 2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名まで膨れ上がってしまう。カメラは事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長を追い始めるが、彼は内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが…。
©Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019