第73回カンヌ国際映画祭やバンクーバーなど世界中の映画祭に正式出品され観客を感動で包んだ、ニル・ベルグマン監督最新作『Here We Are(英題)』が、邦題『旅立つ息子へ』として3月26日より公開されることが決定した。併せて、場面写真がお披露目となった。
本作は実話を基にした、自閉症スペクトラムを抱える息子を全力で守る父と、父の愛を受けとめて心優しい青年に成長した二十歳の息子の絆の物語。世界でいちばん愛する息子のために、キャリアも妻も捨てて、子育てに人生を捧げてきた元グラフィックデザイナーの父は、金はなくても愛があると田舎に引っ込み、二人だけの世界を楽しんできた。ところがある日、彼らに突然の試練が訪れる…。最愛のわが子の巣立ちという、親であれば誰にも訪れる別れのとき。息子に全人生を捧げた父が辿り着いた答えに、爽やかな感動に包まれる。
監督を務めるのは、イスラエルを代表する巨匠ニル・ベルグマン。母国イスラエルを舞台に、繊細に揺れ動く家族の姿を描き続けてきた。父親を失った家族の再生を描いた『ブロークン・ウィング』で長編デビューし、第15 回東京国際映画祭でグランプリを受賞。続く2作目『僕の心の奥の文法』では、大人になることを拒んだ少年の姿を通し、戦争が迫るイスラエル国家や大人への抵抗をユーモアを交えて描き、同映画祭でグランプリを受賞し、東京国際映画祭史上初にして唯一の二度のグランプリ受賞の快挙を果たした。本作では、国内で最も有名な映画評論家から、是枝裕和監督の作品と並べられ、イスラエル・アカデミー賞では監督賞はじめ4部門受賞するほど高い評価を得ている。
息子ウリ役を演じた気鋭の新人ノアム・インベルは、オーディションでこの役を勝ち取り、そのリアリティ溢れる天才的な演技は『ギルバート・グレイプ』のレオナルド・ディカプリオの再来を彷彿させると世界中で評判に。まるで役作りとは思えないほど、自然な姿でその複雑なキャラクターを体現した。実際に、彼の父親は自閉症スペクトラム施設の職員で、小さい頃から施設の友達と一緒に育った経験がキャラクターへの深い理解に繋がったという。父親役のシャイ・アヴィヴィは、『喪が明ける日に』への出演などイスラエルで活躍するベテラン俳優で、息子への想いを全身で表現する。
本作は脚本家ダナ・イディシスの父親と、自閉症スペクトラムの弟の特別な関係をモデルに作りあげられた。弟のお気に入りでもある、親子の絆を描いたチャールズ・チャップリンの『キッド』へのオマージュも劇中では描かれる。
場面写真には、息子・ウリ(ノアム・インベル)を愛おしそうに見つめる父親・アハロン(シャイ・アヴィヴィ)や、旅先の光景にきらきらと目を輝かせるウリの姿、二人が自転車から降りて仲良く足並みを揃えて歩くシーン、シャトルバスで移動中のカット、そしてアハロンの切なくも愛おしげな表情が収められる。
20年間24時間、ずっと一緒に過ごしてきた父と息子。旅を通して息子の成長に気づいたとき、切なくも優しい別れが、二人を温かく包み込む。
『旅立つ息子へ』
3月26日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
監督:ニル・ベルグマン
脚本:ダナ・イディシス
出演:シャイ・アヴィヴィ ノアム・インベル スマダル・ヴォルフマン
配給:ロングライド
【ストーリー】 売れっ子のグラフィックデザイナーを引退したアハロン(シャイ・アヴィヴィ)は、二十歳になるひとり息子のウリ(ノアム・インベル)と田舎町でのんびりと二人暮らししている。実はウリは自閉症スペクトラムを抱えていて、アハロンが24時間、世話してきたのだ。しかし、別居中の妻、タマラ(スマダル・ヴォルフマン)は将来を心配して、全寮制の特別支援施設への入所を決める。定収入のないアハロンは養育不適合と判断され、行政の決定に従うしかなかった。入所の日。ウリは大好きな父との別れにパニックを起こしてしまう。アハロンは決意した。「息子は自分が守る」こうして二人の逃避行が始まった。
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