「いま自分はマイナスにいるから、プラスにいくにはまずゼロに戻らないと」『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき』予告編&著名人絶賛コメント

NHKで放送されギャラクシー賞候補になるなど大きな反響を呼んだドキュメンタリーを、全長版として映画化する『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間』が、5月22日より公開される。このほど、予告編がお披露目となり、併せて、各界著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。

女性として生まれたが、自分の性に違和感を持ち続けていた小林空雅(たかまさ)さん。13歳のとき、心は男性/生物学的には女性である「性同一性障害」と診断され、17歳の時に出場した弁論大会では、700人もの観客を前に、男性として生きていくことを宣言。そして弱冠20歳で性別適合手術を受け、戸籍も男性に変えた。本作はそんな一人の若者の9年間の変化と成長を描いた“こころの居場所”についてのドキュメンタリー。

予告編冒頭、15歳当時、男性の制服を着て中学生活を送る空雅さんの姿が映し出される。その後、膨らみつつある胸に対しての気持ちを問われ、「シャワーを浴びる時とかに自分の体がみえて、なんか嫌だな、おかしいな」と体への違和感を吐露。そして「いま自分はマイナスにいるから、プラスにいくにはまずゼロに戻らないといけない」と自身の心情を率直に語る。この映像は、空雅さんが17歳の頃、胸の切除手術の前日に行われたインタビューを収めたものである。そして空雅さんは、78歳で性別適合手術を行い女性となった八代みゆきさん(95歳)、男と女に二分される性に違和を感じ、自ら「Xジェンダー(性別なし)」であることを明かして、性の多様性を伝える中島潤さん(26歳)らと出会っていく中で、改めて自身の性について見つめなおしていく。

▼著名人 絶賛コメント

■佐藤可士和(クリエイティブディレクター)
僕自身ちょうど中学生の息子がいることもあり、空雅さんの言葉、表情は本当に胸の奥が熱くなり心を揺さぶられました。9年間という凄みがにじみ出ている素晴らしいドキュメンタリー作品です。

■原田美枝子(俳優)
これはきっと特別な話じゃない。みんな自分自身を知ろうと、一生懸命に生きているのだから。私は、心と身体がバラバラになりそうだった10代の頃の自分を思い出した。

■鎌仲ひとみ(映像作家)
自分はいったい何ものなのか、どう生きていけばいいのか。その悩みは性同一性障害者だからこそというよりは誰しもが抱える普遍的なもの。本作は瑞々しい感性でその問いを突き詰めていこうとする生の軌跡を描いている。あくまでも自己を肯定し続け自分であり続けようとする主人公の突き抜けた明るさが素晴らしい!

■尾辻かな子(衆議院議員)
生き方や性別のあり方は、多様です。当事者の変化に対する家族の葛藤。10代から20代にかけて変わっていく当事者の姿や高齢になってからの性別移行の物語など、それぞれの選択の先が描かれています。典型的な物語でないこと、それこそが現実です。ぜひ多くの皆さんに見て頂ければと思います。アメリカの英語辞典は、2019年の「今年の単語」として、heでもsheでもない、ノンバイナリーな単数形の代名詞「they」を選びました。パスポートのおける性別欄の国際規格も、男、女、Xと3つの選択肢になっています。一方で、日本の法律は、現在を生きる人々にあっているのでしょうか。生きづらさを制度的に解決するために法律があります。映画に出演される方々の生き方や選択が排除されない社会を一緒に作っていきましょう。

■佐々木掌子(明治大学准教授/臨床心理学・性科学)
「性別」について知ること。感じること。考えること。めいっぱいが詰まった映画に出会えました。そもそも性別とはなんなのか?性別に根拠なんてあるのか?立ち止まると実は摩訶不思議な性別という現象。「これまで自分の性別を疑ったことのない人」こそ鑑賞する価値ある作品です。

■下山田志帆(スフィーダ世田谷FC)
表情が、変わっていく。「今の自分は好きですか?」の問いに、最初は暗い顔をしていた主人公の顔が、段々と輝いていく。女性らしさや男性らしさの壁に悩んだ主人公が「自分らしさ」を見つけるまでの長い年月を追いかけたこの映画。「世界で一番自分が好き」そんな風に少しでも多くの人が思えるように、スッと背中を押してくれる作品です。女らしさと男らしさに悩み、様々なセクシャリティの人たちに出会ってから男女の壁が主人公から消えていく様子が、過去の自分と重なりました。

■鈴木茂義(LGBT 教師の会/虫めがねの会)
私自身も教員として仕事をしていますが、子どもや人の「揺れ」「揺らぎ」「不安定さ」を大事にしています。曖昧なものと共存していく大切さを再確認しました。

■石本径代(俳優)
ほんとにね、うちらは77億のマイノリティ集団なのだよ。誰がどうあってもええじゃないか。そう観終わっていつもの生活に戻ると、瞬く間に溢れくるカテゴライズ。性別、年齢、出生地。体型、服装、肌の色。少しずつ、少しずつ、世の中が変わっているように、これからもっともっと変わってゆけばいい。変えてくのは、私たち。小さな言動の積み重ねが、これからの世界を変えていく。私たちにはきっと出来る。その背中をぐいっと押してくれる作品でした。後半の大展開に拍手!!

『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 空と木の実の9年間』
5月22日(金)より、アップリンク渋谷にてロードショー、以降全国順次公開
監督:常井美幸
出演:小林空雅 八代みゆき 中島潤
配給:Musubi Productions

【作品概要】 女性として生まれたが、自分の性に違和感を持ち続けていた小林空雅(たかまさ)さん。13歳のとき、心は男性/生物学的には女性である「性同一性障害」と診断され、17歳の時に出場した弁論大会では、700人もの観客を前に、男性として生きていくことを宣言。そして弱冠20歳で性別適合手術を受け、戸籍も男性に変えた。本作はそんな一人の若者の9年間の変化と成長を描いた“こころの居場所”についてのドキュメンタリー。

©2019 Miyuki Tokoi