岩手県関市骨寺村の伝統的な食文化“もち”にまつわる人々の出逢い、別れ、そして成長『もち』4月公開!

岩手県関市骨寺村に生きる一人の少女を主人公に、土地の伝統の食文化“もち”にまつわる人々の出逢い、別れ、そして成長を描く映画『もち』が、4月18日より公開されることが決定した。併せて、予告編、ポスタービジュアル、場面写真がお披露目となった。

山々に囲まれ、冬には雪深くなる岩手県関市本寺地区で、古くから根付いているのは、“もち”の文化。一つの臼(うす)でもちをついて、みんなで食べる。それは当たり前のように、ずっと続いて来た習慣。おばあちゃんの葬式で、臼と杵でつく昔ながらの方法でどうしても餅をつきたいと言い張るおじいちゃん。家族は、そんな面倒なことをしなくても、餅つき機で同じように美味しいものができると言ったが、頑なに餅をつくという。本寺地区に実際に住む14歳の少女・ユナはそんなおじいちゃんの心の機微を感じてそっと寄り添う。生徒の減少から中学校の閉校が決まり、最後の一年を終えると学校もなくなる。ユナの世界も刻々と変化をしていき、友人、憧れの人が離れていくことへの不安を覚えていく。そして彼女は「努力しないと忘れてしまうものなんて、なんだか本物じゃないみたい…。忘れないためにはどうしたらいい?」と我々に問う。

“もち”をモチーフにみずみずしい青春ストーリーを紡いだのは、500本以上の映像作品のほか、蒼井優主演の映画『たまたま』を監督するなど、幅広く活躍する映像ディレクター、小松真弓。一関を訪れた小松監督が、そこで出会った少女・ユナ(佐藤由奈)の中学生活最後の一年を追いながら一関の食文化や人々の想いを伝えるという、オリジナルのストーリーを構想。ユナとの出会いについて、小松監督は「神楽・鶏舞を復活させた本寺中学校が閉校してしまうと聞き、取材に行ったんです。その時校庭でひとり神楽を踊ってくれたのが由奈でした。その姿が本当に美しくカッコ良かった。彼女が放つ野性味に惹きつけられるものがありました」とコメントする。

さらにもう一つ、小松監督を映画製作へと突き動かしたのは、本寺中学校の周辺を散策していた際に偶然見かけた祭畤大橋(落橋)だった。2008年に起こった岩手・宮城内陸地震の際に真っ二つに折れた祭畤大橋を、災害の教訓を忘れないために折れたままの形で残したものだ。小松監督は祭畤大橋(落橋)を初めて見た当時の心境を、「山深いところに折れた橋がそのままで残っている。それは本当に恐ろしい光景でした。何も知らずに『危なくないですか?なんでそのままにしているの?』と聞いたら、敢えて教訓として残しているんだと。聞いた瞬間に、自分が気軽に発した問いをとても後悔したとともに恥ずかしく思いました。なくなっていくものは確かに多い。でも、残していかないといけないものもあるんだと。これまではなんとか残ってきたが、今にも消えていきそうな日本の伝統や文化にもその裏に先人によって込められた意味があり、それを知ることがとても大切なんだ」と振り返る。その想いから、この土地と人々によって生まれた言葉、伝統、そして感情をありのままに残すため、限りなくノンフィクションに近いフィクションという手法を選択。脚本は存在するものの、撮影時には脚本はないものとして、小松監督は演技経験のないキャストたちを導いていった。キャストの息遣いを大切に、その現場の空気や状況で内容も場所もその都度変化。キャスト自身の実感のこもった言葉を活かした、エチュードを積み重ねていくようなスタイルで、青春のドラマでありながらドキュメンタリーさながらにリアルな肌触りを備えた、唯一無二のハイブリッドな映画を完成させた。

予告編は、長い間変わらぬ美しい風景、通っていた学校の閉校、友達との別れを映し出しながら、悠久の時間の中育まれてきた伝統と、“今”を生きる少女の葛藤とを対比させている。

ポスタービジュアルは、祖母の亡き後、祖父とともにもちをつくユナの透明感溢れる表情を収める。食文化は人生の折々の思い出と共にある、その象徴的な一枚である。

『もち』
4月18日(土)より、渋谷・ユーロスペースにてロードショー
監督・脚本:小松真弓
出演:佐藤由奈 蓬田稔 佐藤詩萌 佐々木俊 畠山育王
配給:フィルムランド

©TABITOFILMS・マガジンハウス