2016年11月12日に劇場公開され、第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に、激化していく世の中で大切なものを失いながらも、日々を大切に前を向いていく女性・すずを描いた、片渕須直監督による珠玉のアニメーション作品『この世界の片隅に』。その“長尺版”となる劇場アニメーション映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が、12月20日より公開される。それに先立ち、公開を記念して12月18日に東京・ニッショーホールにてチャリティ試写会イベントが行われ、のんと片渕監督が登壇、そして天皇皇后両陛下、愛子内親王殿下が鑑賞した。
上映前に、のんと片渕監督は舞台挨拶に登壇。のんは「本日はご覧いただき、誠にありがとうございます。新たな形の新作として上映することができて、とても嬉しいです」と緊張した面持ちで挨拶した。
2016年11月に公開された『この世界の片隅に』に、38分もの新たなシーンを追加した本作。本編は先日完成したばかりだといい、片渕監督は「本当に長いこと、皆さんをお待たせしてしまった。明後日(12月20日)にはもう全国公開なんですが、我々もつながった状態の本編を大きなスクリーンで見るのは今日が初めて」と明かし、「たくさんの皆さんとご一緒する機会をいただき、本当にありがたいなと思います」と感謝を述べた。
続いて本作について、片渕監督は「いろんな意味で全体的に意味合いが変わっているんじゃないかと。新しい映画として、皆さんに提供したいと思います」、のんは「前作もすずさんの悩みや不安が描かれていましたが、今回は一筋縄ではいかない、いろんな感情が渦巻いている。前作と同じシーンでも、セリフの響きが全然違っていて、すごく刺激的。感情がダイレクトに伝わり、より生きる力強さをひしひし感じる映画になっています」とコメント。そして舞台挨拶を終えると、客席で天皇皇后両陛下、愛子内親王殿下とともに映画を鑑賞した。
2時間48分の上映が終わった後、片渕監督は天皇皇后両陛下との懇談について、「天皇陛下は『長さをまったく感じない。圧倒されました。丹念な仕事をされましたね』と言ってくださった。また皇后陛下は『とても感動しました。たくさんの方に観ていただきたいし、できれば海外にも広がっていって欲しい』とおっしゃっていただいた」と語り、天皇陛下からは「(舞台となる)広島の呉には何回くらい行かれたんですか?」「何人くらいで絵を描いているんですか?」といった質問を受け、両陛下が「すずさんの声は、のんさんがぴったり」と発言していたことも明かした。また、愛子内親王殿下は、のんが2013年に主演した連続テレビ小説「あまちゃん」のファンとのことで、「のんさんに会えて、とても嬉しそうなお顔だった」と口にした。さらに愛子内親王殿下は昨年、修学旅行で広島を訪れており、片渕監督は「愛子さまは『感動しました。昔の広島はああだったのですね』とおっしゃっていた」と語った。
なお、当日は日本赤十字社後援によるチャリティ試写として開催され、集まった寄付金は、日本赤十字社広島県支部に送られる。
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
12月20日(金) テアトル新宿、ユーロスペースほか全国公開
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
アニメーション制作:MAPPA
声の出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 牛山茂 新谷真弓 花澤香菜 澁谷天外
配給:東京テアトル
【ストーリー】 広島県・呉に嫁いだすず(声:のん)は、夫・周作(声:細谷佳正)とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリン(声:岩井七世)と出会う。境遇は異なるものの呉ではじめて出会った同世代の女性に心を通わせていくすず。しかし、ふとしたことをきっかけに、すずは周作とリンの過去に触れてしまう。すず、リン、そして周作。それぞれが内に秘めた想いを抱えながら、日々を懸命に生きていた。そして昭和20年の夏がやってくる…。
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