坂本龍一「好きな映画だ」、チバユウスケ「とても美しい。そして激しい」著名人絶賛!『象は静かに座っている』

ベルリン国際映画祭にて国際批評家連盟賞、最優秀新人監督賞スペシャルメンションを受賞、金馬奨にて作品賞、脚色賞、観客賞を受賞し、世界10か国以上の映画祭に出品された、29歳の俊傑フー・ボー監督の長編デビュー作にして遺作となった『象は静かに座っている』が、11月2日より公開される。このほど、各界著名人より本作を絶賛するコメントが寄せられた。

年齢、性別の違う4人のある一日を描く本作。デビューと同時に世界を魅了し、作家としての顔も持つ29歳の新人監督フー・ボーが、自身の著書「大裂」の中でも最も気に入っているという短編「象は静かに座っている」を映画化。本作の完成後、フー監督は自ら命を絶ち、生涯ただ一つの“命を懸けた”最初で最期の最高傑作となった。

▼著名人 絶賛コメント

■チバユウスケ(The Birthday)
とても美しい映画だった。映像の色味、時間の流れ方。とても美しい。そして激しい。

■TK(凛として時雨)
被写界深度は浅く、根は深い。バラバラになった枝が物語の中で灰色の地面に吸い寄せられていく。気付けば僕はフー・ボー監督が見せたい世界の中にいるのか、彼の視力の一部となっているのか、そんな画角が全編を漂う。タバコの煙が妙に白く見えるほどの密度の濃い灰色が続く234分を僕はどう消化すれば良いかがまだ分からない。物語は一つの幹になり、また地面の中で散りばめられた様に深く。公開前に命を絶った彼が遺した空白と余韻はあまりにも大きい。時として死は芸術の形を変えてしまう。それすらも作品の一部であるかの様に、僕のところへもやってきた。本当のエンドロールは僕らの届かない場所にある気がした。

■近田春夫(音楽家)
ジャンルを問わず、私は表現全般に求める第一のこととは、強さと新しさだと思っている。そうした意味でこの作品に出会えたのは幸せだった。

■イ・チャンドン(『バーニング 劇場版』)
業界騒然!!!!デビュー作の桁外れのクオリティに世界中の映画監督たちは拍手喝采!軒並み虜に!『象は静かに座っている』は、最後まで的から外れた矢を追いかける。忘れられないエンディング、そして決して終わることのない映画だ。

■アン・リー(『ブロークバック・マウンテン』)
私たちは身を燃やし、映画に全身全霊を注いでいる。それは世界を明るくするためではないかもしれないが、観客と心を、魂を、分かち合うのだ。この映画は、どう作り手が人生を映画に捧げるかの良い例だ。非常に感動した。

■ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(『午後8時の訪問者』)
全編を通して驚くべき緊張感を生み出している。助け合いや思いやりによって欲深さや利己心に抗おうとする現代の私たちの人間関係についての美しい映画だ。

■ホウ・シャオシェン(『悲情城市』)
正直に言って、私は感動し、恐れを抱いた。これは本物だ。彼は我々が若かった頃よりもより素晴らしい作品を作った。

■ガス・ヴァン・サント(『エレファント』)
類まれな映画だ!

■ワン・ビン(『三姉妹 雲南の子』)
暗い空を駆け抜け、熱と痛みの中に落下していく彗星のようだ。この映画は、新たな中央集権化制度への変化の中で苦しむ数多くの中国人たちの内なる不安と、人々がお互いを裏切り傷つけ合う現実を映している。たとえ夜が来ようとも、人々は互いを抱きしめ、愛で不安や恐怖に対抗しなくてはならない。

■ショーン・ベイカー(『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』)
おめでとう。素晴らしい映画だ。

■小野正嗣(作家)
文学界からも惜しみない絶賛の声!!象を求めて彷徨う4人をカメラは追いかける。そのときフー・ボーの眼差しは、彼らよりも先に、崇高な何かに、触れれば心が崩壊しかねない“美”に到達する。フー・ボーの悲劇と栄光はそこある。

■余華(作家)
才華溢れる作家を見つけた。彼の作品は素晴らしく、現在の我々のような作家よりも優れている。

■田中泰延(青年失業家/ライター)
時間54分の「音」を聴き続けて欲しい。どこへも行けない人間は、自分にだけ聴こえる地獄に包囲されている。フー・ボーは永遠の3時間54分を削らせないために命を絶ったが、鳴り響く天国の音とともに立ち上がり、歩き出す象となった。

■町山広美(放送作家)
何かしなければ堕ちるばかりだし、何かすれば悪い方に転げ堕ちる。今より悪くならない場所にただ座っていることさえ、難しい。そんな彼らの一日に234分立ち会って、まだもうすこしここに留まらせてと思うのは、どうしたことだ。すごい映画だ。このろくでもない世界に愛着をおぼえさせて、監督だけが去ってしまった。

■立田敦子(映画ジャーナリスト)
若者も老人も生きにくい、現代の閉塞感を、ゆったりとした、それで親密な時間の流れの中で描ききる傑作。4時間弱という尺があっという間に過ぎるほど、この新人監督の世界にハマってしまった。

■コトブキツカサ(映画パーソナリティ)
息苦しい日常に耐え忍びながら人生に期待するのは愚かなことなのか?フー・ボー監督が魂を紡いで世界に問いかけた唯一無二な傑作です。

■坂本龍一(音楽家)
この映画のペースが好きだ。4時間近くと長い映画だが、無駄なショットがあった記憶はない。昨今、目にすることの多い、金満でIT先進国で資本主義的な中国とは全く違った日常が映し出される。その暗いけれど、甘く懐かしいトーンが好きだ。それは音楽からも来ていると思う。歪んだギターを中心に、昔聴いたことのあるチープなシンセのシンプルな絡み。20歳台の若い監督が作ったのに、とてもノスタルジックだ。好きな映画だ。29歳で自殺した監督、胡波の映画を、たくさん観たかった。

■タル・ベーラ(映画監督)
私の“生徒”であり、私の友、私の家族である君がいないことを残念に思う。何百人もの中国人監督が私と働きたいと出願してきたが、彼に会い、すぐに心が決まった。一切の迷いもなく!彼は気品に溢れ、共に素晴らしい仕事をすることができた。彼の目には並々ならぬ、強い個性が表れていた。クソ!彼をちゃんと守れなかったことに、私は責任を感じている。残念でならない。彼は、両方の端から彼というろうそくを燃やしていたのだ。今ここにあるすべてを手に入れようとした。私たちは彼を失ったが、彼の映画は永遠に私たちと共にある。フー・ボーの映画を迎えてください。そして私と同じように彼を愛してください。

■市山尚三(東京フィルメックス・ディレクター)
『象は静かに座っている』は次々と新たな才能が登場しつつある近年の中国映画の中でも稀有な傑作である。まずは、この作品が日本で劇場公開されることを喜びたい。これほどの才能ある監督の新作をもはや見ることができないという事実は悲劇でしかないが、一つ一つのショットに刻み込まれた魂の記録とも言うべき本作に心揺さぶられないものはいないだろう。

『象は静かに座っている』
11月2日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかにて公開
監督・脚本・編集:フー・ボー
出演:チャン・ユー ポン・ユーチャン ワン・ユーウェン リー・ツォンシー
配給:ビターズ・エンド

【ストーリー】 炭鉱業が廃れた中国の小さな田舎町。少年ブーは友達をかばい、不良の同級生シュアイをあやまって階段から突き落としてしまう。シュアイの兄は町で幅を利かせているチェンだった。チェン達に追われ町を出ようとするブーは、友達のリン、近所の老人ジンをも巻き込んでいく。それぞれに事情を抱えながら、遠く2300km先の果て満州里にいる、一日中ただ座り続けているという奇妙な象の存在にわずかな希望を求めて4人は歩き出す。

© Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen