『万引き家族』の是枝裕和監督の長編14作目となる最新作にして初の国際共同製作映画『真実』が、10月11日より公開中。このほど、10月14日にTOHOシネマズ 日比谷にて公開記念舞台挨拶が行われ、日本語吹替版キャストの宮本信子、宮﨑あおい、佐々木みゆ、そして是枝裕和監督が登壇した。
はじめに、宮本は「カトリーヌ・ドヌーヴです(笑)。初めて吹替のお仕事をさせていただきました。足元の悪い中、沢山の方がお越しくださいまして、ありがとうございます」、宮﨑は「本日はお越しいただき、ありがとうございます。このような形で作品に参加させていただいて、舞台挨拶をするのは初めての経験なので新鮮な気持ちです」、佐々木は「佐々木みゆです!監督に初めて吹替版のお仕事をさせてもらったんですけど、すごく緊張して、でも監督がいるから落ち着きました!」、是枝監督は「みなさんこんばんは。台風で予定が変更になって、どうなることかと思いましたけど、映画は公開を迎えることができてホッとしています」とそれぞれ挨拶をした。
宮本は「初めてお話をいただいたときはびっくりしまして、頭をぐるぐると考えて4時間くらい悩みました。吹替の仕事はすることがないと思っていましたが、監督とはご縁がございまして、思い切って仕事を受けてみようと思いました」と、初めての洋画吹替、そして是枝監督作品に参加した想いを吐露。宮﨑は、当日まで心がけたことについて「吹替は初めてすぎて何が正解かも分からないスタートだったので、とにかく頂いた作品をお家で観て、ビノシュさんがどういう表情でセリフを言っているのかを頭に焼き付けました。当日は台本をきちんと読むと、ビノシュさんの口の動きと私の声がぴったりと合って、収録も楽しかったです。勝手にビノシュさんと同じ気持ちを共有できているような感覚でした」と明かした。佐々木は「魔女の声を真似するときに、ハハハッって笑うところが難しかったです!楽しかったところは、皆でパーティをするシーンを吹替えるのが楽しかったです!」と元気よく回答。是枝監督は「もし吹替版を作るなら、というお話になったときに名前を挙げたのがこの二人だったので、その通りのキャストが実現しました。宮本さんは背筋の伸びた凛とした声が役とぴったりですし、あおいちゃんは何度か声のお仕事もさせていただいているんですけど、セリフになっていない部分のニュアンスもすごくふくよかに表現できる方だと思っていたので、ビノシュさんとは少し年齢差があるんですけど迷わず選びました。みゆちゃんはすごく吹替をやってみたかったそうで、その気持ちが伝わったのでお願いしてみました」と、オファーのきっかけを明かした。そして実際に完成版を観ると、「普段は字幕で観るタイプなんですが、今回は最初に日本語で書いた脚本が、フランス語に直して撮影をしてから、また日本語字幕になっているので、脚本よりもだいぶ情報量が減っているんです。こればっかりはしょうがないな、と思っていたんですけど、吹替になると字幕で削らざるを得なかったニュアンスを戻せたんですね。オリジナルの脚本に近いものが少し取り戻せたなと、自分で観ていても面白かったです」と吹替版にも手ごたえを感じていた。
是枝監督の印象について、宮本は「人の意見をよく聞かれる監督で、優しいです。映画監督なのでもちろん厳しい一面も持っているんでしょうけど、ムーミンみたいにふわっとした印象です」、宮﨑は「宮本さんが仰る通り、すごく優しい方で、話していると全て見透かされているような気持ちになります」、佐々木は「『万引き家族』からすごく優しいです!」と答えた。
続いて、映画タイトルでもある“真実”にちなんで、最近知って驚いた“真実”について尋ねられると、佐々木は「ドヌーヴさんって、見た目は怖そうだったんですけど、この間の舞台挨拶ですごく優しい人なんだな、と真実が分かりました!」と、ドヌーヴの真実を口にした。逆に、是枝監督が司会者に最近知った“真実”について尋ねると、「先日、是枝監督にインタビューをさせていただき、初めは世界で注目されている方なので怖い方なのかなあと思っていたんですが、『ごめんね、三谷幸喜さんみたいに面白いこと言えなくて(笑)』と、とっても気さくで、とっても温かい方なんだなって思ったのが、真実です!」と明かし、監督は「三谷さんはずるいよね~監督が皆あんなに面白いことを言えると思われちゃうと、困っちゃうよ(笑)」と会場の笑いを誘った。
本作の中での好きなシーンについて、宮本は「この映画はイーサン・ホークさんが出演されてまして、本当にお芝居も佇まいも役にぴったりで、素晴らしいなと思いました。ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)がハンク(イーサン・ホーク)と絡む楽しいシーンがあるんですけど、そこを注目いただけると嬉しいです」、宮﨑は「ビノシュさんは娘でもあり、母でもあり、色々な顔をもっているんですが、素敵に表現されていて、一人の女性の色々な役割や顔を観ることができるのも、面白いポイントだと思います」、佐々木は「好きなシーンは、トトっていう犬がいて、勝手に歌を作るシーンがお気に入りです!」、是枝監督は「全部気に入っているシーンしか残してないんですけど、想像していなかったけどいいカットというものが一つあります。ファビエンヌが中華料理屋さんに来ているシーンなんですが、そのお店にいるワンカットだけ映るおばあちゃんが凄く良いので、是非注目していただけたらと思います」と、それぞれ思い思いにお気に入りのシーンを挙げた。
最後に、これから鑑賞する観客へ向けて、佐々木は「吹替版も字幕版も、どっちも観てみたら楽しいと思うので、是非観てください!」、宮﨑は「普段字幕で観る方も多いと思うんですけど、吹替だからこそ役者さんの表情をすごくよく観れたり、感情がもっとダイレクトに伝わる部分も多いと感じましたので、ぜひどちらも楽しんで観て頂けたら嬉しいです」、宮本は「この映画は母と娘の映画で、日本とフランスではこんなに文化が違うんだなと、色々なことを感じられるこの映画の凄さを、楽しんで観て頂けたら素敵だなと思います。劇場に沢山の人が足を運んでくださるよう、お願い申し上げます」、そして是枝監督は「ご覧になる前の方に読後感の話をするのはよくないと思うんですけど、自分が思っている以上に僕の映画は観終わると重く、よどむ感じがあるらしいんですが、今回の映画は予想外に明るかったと言われる方がとても多かったです。普段から暗い映画を作っているつもりはないんですけど、この映画は観終わった後に、いつもより遠回りをして帰りたくなるような、そういう気持ちになれる映画を作ってみたいと思って作り始めた映画だったので、そんな気持ちに辿り着けていれば嬉しいです。お楽しみください」とメッセージを送り、本イベントは幕を閉じた。
『真実』
10月11日(金)より全国公開中
監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影:エリック・ゴーティエ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジュリエット・ビノシュ イーサン・ホーク クレマンティーヌ・グルニエ リュディヴィーヌ・サニエ
日本語吹替版キャスト:宮本信子 宮﨑あおい 佐々木みゆ
配給:ギャガ
【ストーリー】 国民的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が自伝本「真実」を出版。アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)、テレビ俳優の娘婿ハンク(イーサン・ホーク)、ふたりの娘のシャルロット(クレマンティーヌ・グルニエ)、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、そして長年の秘書…お祝いと称して、集まった家族の気がかりはただ一つ。「一体彼女はなにを綴ったのか?」そしてこの自伝は、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く“真実”をも露わにしていき…。
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