前田敦子「ロカルノのホテル前の湖にカモが浮かんでいると思ったら、地元のおじいさんでした(笑)」

日本・ウズベキスタン国交樹立25周年、ナボイ劇場完成70周年記念の国際共同製作企画となる黒沢清監督作で、前田敦子が主演を務める『旅のおわり世界のはじまり』が6月14日より公開中。このほど、本作がロカルノ国際映画祭クロージング作品として上映されたことを記念し、テアトル新宿での凱旋ロードショーが決定し、8月23日に行われた舞台挨拶に、前田敦子、黒沢清監督が登壇した。

ロカルノ国際映画祭に初めて参加し、欧州最大の野外スクリーンを備える“ピアッツア・グランデ”の観客8000人の前での舞台挨拶を体験し、その観客と黒沢監督とともに作品を鑑賞した前田は、「(完成後の関係者試写に参加できなかったため)いままでスクリーンでこの作品を観ることができていなかったので、黒沢監督の隣で、はじめてスクリーンでみることができて楽しかったです。屋外で、鑑賞したせいか瞬きするのも忘れるほど映像に圧倒されました」と話した。三大映画祭と並ぶ歴史あるロカルノ国際映画祭について感想を聞かれると、「“世界の黒沢清”の凄さを実感しました。向こうで参加した様々なイベントや会見で、プレスや記者、監督やプロデューサーなど、皆が黒沢監督のファン。宿泊ホテルで朝食をとっていると、『黒沢監督は、ここに宿泊しているの?』と話している人も見かけました」。それを受けて、監督は「国際映画祭となると、何故か監督をちやほやしてくれるんですね。普段は監督なんて、端に立って、写真から切られる存在なのですが」と笑いを誘った。

スイス・ロカルノの印象を聞かれた前田は、「なんて素敵な場所だろうと。到着した瞬間、これはバカンスだと思いました。宿泊したホテルも湖に囲まれたところで、朝、湖にカモが浮かんでいるかと思ったら、地元のおじいさんでした(笑)。けっこう寒いのに元気だなと」。一方、ロカルノ国際映画祭は3度目の参加となるが、主演女優とともに参加したのは初めてだった黒沢監督は、「今回、主演女優の前田さんと一緒に参加できたので、華やかだし、映画を観終えたお客さんが、スクリーンに写っていたその人がそこに生でいるということが、観客のワクワクする経験になっていたように感じました。現地の取材でも、前田さんがどういう女優さんかという質問が多かった。映画がドキュメンタリーのように見えるからか、映画の主人公は、実際にTVリポーターをやっている人なのか?と勘違いしている記者がいました」と話した。

この日のイベントでは、前田と黒沢監督がロカルノから買ってきたお土産を、観客に抽選でプレゼントする企画も実施され、前田は“スイスTシャツを着た牛のボールペン”“樽を提げたセントバーナードのキーホルダー”、監督は“チーズフォンデュ”“スイス製の強力な虫除け”の2種を現地で購入してプレゼントした。虫除けは、ロカルノに蚊が多く、前田がスイスで、蚊にたくさん刺されたことなどあったそうだが、黒沢監督らしいお土産のセレクトに会場内も沸いていた。最後の挨拶では「自分の作品が、こんなに長い期間上映してもらえるのはじめて。時間をかけて細く長く上映されてほしい。そして観た方が、何年も何十年も心の片隅においてくれたらうれしいですね」と監督が語り、前田が「いろいろなところで上映してもらって、これからもこの映画に旅してほしいですね」と締めくくった。

『旅のおわり世界のはじまり』
6月14日(金)より公開中
監督・脚本:黒沢清
出演:前田敦子 染谷将太 柄本時生 アディズ・ラジャボフ 加瀬亮
配給:東京テアトル

【ストーリー】 テレビ番組のリポーターを務める葉子(前田敦子)は巨大な湖に棲む“幻の怪魚”を探すため、番組クルーと共に、かつてシルクロードの中心地として栄えたこの地を訪れた。夢は、歌うこと。その情熱を胸に秘め、目の前の仕事をこなしている。収録を重ねるが、約束どおりにはいかない異国でのロケで、いらだちを募らせるスタッフ。ある日の撮影が終わり、ひとり街に出た彼女は、聞こえてきた微かな歌声に誘われ美しい装飾の施された劇場に迷い込む。そして扉の先で、夢と現実が交差する不思議な経験をする──。彼女が、旅の果てで出会ったものとは…?

(C)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO